高齢者の脳白質、変化が重度なほど障害・死亡の割合が高い

提供元:ケアネット

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公開日:2009/08/14

 



脳画像診断の際、多くの高齢者に大脳白質の経年変化が見られる。この変化は認知症、うつ、運動障害、尿失禁等をもたらすなど、高齢者の障害に関与していると言われる。イタリア・フローレンス大学のDomenico Inzitari氏らの研究グループは、重度な脳白質の経年変化が、高齢者の日常生活動作の障害に及ぼす程度をLADIS試験(leukoaraiosis and disability)コホートを対象に評価を行った。BMJ誌2009年8月1日号(オンライン版2009年7月6日号)より。

「障害なし」から「障害あり」、死亡への移行を3年間追跡




Inzitari氏らは、ヨーロッパ11施設で、疾病発症後、障害が残らなかった高齢者で、脳MRI検査を受けた集団を対象とし、3年間にわたる観察によるデータ収集と追跡調査を行った。

脳MRI検査を受けた高齢患者639例[平均年齢74.1歳(SD:5.0)、男性45.1%]には、白質内に加齢にともなう軽度、中等度、重度(Fazekasスケールによる分類)の病変がみられた。この評価には脳梗塞および脳萎縮症患者も対象に含められた。

主要評価項目は、追跡期間3年間での、「障害なし」(手段的日常生活動作判定でスコア0または1)と判定された状態から「障害あり」(スコア≧2)への移行、または死亡とした。2次評価項目は、認知症、脳卒中のインシデントとした。

重度白質病変患者の障害・死亡率は、軽度病変患者の約2倍




平均追跡期間2.42年(SD:0.97、中央値2.94年)にわたって、主要評価項目の情報が得られたのは633例だった。

障害ありに移行した患者と死亡した患者の年率は、経年白質病変の程度が軽度、中等度、重度な場合で、それぞれ10.5%、15.1%、29.5%だった(カプランマイヤー・ログランク検定によるP<0.001)。

機能低下の臨床因子補正後Coxモデルでの、重度病変と軽度病変との比較では、障害ありまたは死亡への移行リスクは、重度病変の患者のほうが2倍高かった(ハザード比:2.36、95%信頼区間:1.65~3.81)。他の予測因子としては、年齢階層、心房細動の既往歴、歩行障害だった。

重度病変の影響は、脳萎縮症の程度、脳梗塞の多発とは独立して有意なままだった。脳卒中と認知症のインシデントはわずかだが影響が修正されていた。

これらから研究グループは、LADIS研究3年の成果として、高齢者の重度白質病変は強く急速な全身機能の低下をもたらすと結論した。