9.11テロ事件から5~6年、救急隊員や付近住人に喘息やPTSDの新たな発症が

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2009/08/18

 



2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件では、ニューヨーク世界貿易センター(WTC)が崩壊したことが、救急隊員として活動した人や、WTC付近住人や同付近で働いている人などに、事件から5~6年後に、喘息や心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder;PTSD)が新たに発症していることが明らかになった。2006~2007年の調査では、被験者の約1割が、新たに喘息の症状を訴えたという。またPTSDを訴える人の割合も、被験者の2割近くに上り、事件発生直後の2003~2004年より増加していた。報告は、米国疾病対策予防センター(CDC)のRobert M. Brackbill氏らが、約7万人を対象に行った調査の結果明らかにしたもので、JAMA誌2009年8月5日号で発表した。

2回目調査で10.2%が新たに喘息、事件時の集中的灰や煙に曝されたのがリスク因子に




同研究グループは、事件の際の救急隊員と、WTC近くのロウアー・マンハッタンの住人や同地域のオフィスで働く人、事件当時の通行人、合わせて7万1,437人について、2003~2004年に第1回の調査を行った。被験者の68%にあたる4万6,322人が、2006~2007年の2回目の調査を受けた。

2回目の調査で、新たに喘息の診断を受けた人の割合は、10.2%(95%信頼区間:9.9~10.5)だった。事件発生時の集中的な灰や煙に被爆した人は、しなかった人に比べ、喘息を発症するリスクは約1.5倍(補正後オッズ比:1.5)に増大した。喘息リスクはまた、事件当日に崩壊したWTCで救急隊員として働いた人で最も高率で、喘息発症率は20.5%だった。

9.5%が第2回調査時に新たにPTSDを報告




事件発生以前にPTSD歴のない人のうち、第1回、第2回調査のいずれかでPTSDを訴えた人の割合は、23.8%に上った。1回目調査時に症状を訴えたのは14.3%、2回目調査では19.1%だった。両調査時点でPTSDを訴えていたのは約10%で、1回目のみ訴えたのは4.7%、2回目のみは9.5%だった。なかでも、2回目調査でPTSDの割合が最も多かったのは通行人で、その割合は23.2%に上った。

また、事件に関連して伴侶や仕事を失ったことが、2回目調査時点でのPTSDに関連していた。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)