2011年7月、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬「インダカテロールマレイン酸塩」(商品名:オンブレス®、以下「インダカテロール」)の製造販売が承認された。
COPDの現状と課題
COPDは「肺の生活習慣病」とも呼ばれ、たばこの煙などの有害物質を長期間にわたり吸入することで発症する、肺の炎症性疾患である。COPDは呼吸機能が加速的に低下する疾患で、主な症状は、咳、痰や体動時の呼吸困難などで、進行すると死に至ることもある。
わが国のCOPD患者数は500万人を超えるといわれているが、国内の医療機関でCOPDと診断された患者は約17万にとどまることが報告されている。喫煙率が高く、喫煙開始年齢が若年化しているわが国では、今後さらに患者数が増えることが予想されている。
即効性と持続性を兼ね備えたCOPD治療薬
COPDを根治する薬物はいまだ登場しておらず、現在の薬物治療は気管支拡張薬が中心となる。長期間作用性β
2刺激薬のカテゴリーに属するインダカテロールは、専用の吸入器「ブリーズヘラー
®」を用いて吸入する吸入型の気管支拡張薬である。1日1回の吸入で、呼吸機能改善効果は24時間持続し
1),2)、さらに、その気管支拡張効果は吸入5分後に発現する
3),4)。このように、インダカテロールは1日1回という吸入回数や持続時間の長さなどの利便性、持続性に加え、従来の吸入型長時間作用性気管支拡張薬にはみられない即効性を兼ね備えた、新しいタイプのCOPD治療薬である。
インダカテロールの効果と安全性
インダカテロールは国際共同第Ⅲ相試験において、1日1回の吸入により、プラセボ群と比べて呼吸機能、呼吸困難の症状、QOLの有意な改善が認められた
5)。また、有害事象の発現率も低く、その安全性も確認されている
5)。
さらに、1日1回投与の長時間作用性抗コリン薬であるチオトロピウムと比較した海外臨床試験(無作為化、非盲検)では、呼吸機能の改善(トラフFEV
1)については同等以上の効果を、QOLについては有意な改善を示した
1)。また、同じ長時間作用性吸入β
2刺激薬で、1日2回投与のサルメテロールとの比較においても、呼吸機能の有意な改善、息切れやQOLの改善などの優れた有効性が認められた
2)。
まとめ
インダカテロールは新しいタイプの長時間作用性吸入β
2刺激薬であり、既存のCOPD治療薬に比べても、呼吸機能改善効果は同等以上であることが認められている。また、利便性、持続性、即効性という特徴は、患者のQOL改善にも大きく寄与すると思われ、今後、COPD治療の新しい選択肢となることが期待される。
(ケアネット 呉晨)