血小板機能検査はやるだけ無駄:VeryfyNowは不要

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2012/12/17

 

 ケアネットでは、11月3~7日に開催されたAHA(米国心臓協会)学術集会での注目演題を速報した。その一つとして、ex vivoの血小板活性簡易測定キット(VerifyNow)が抗血小板療法の用量調整に対する有用性について報じたが、この発表に対する後藤 信哉氏(東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授)のコメントを得たため合わせて掲載する。

後藤 信哉氏(東海大学医学部内科学系循環器内科学 教授)のコメント
 心筋梗塞などの血栓イベントの発症には血小板が一定の役割を果たしていると想定される。血小板凝集機能検査は出血性疾患のスクリーニング法として1960年代より施行されており、VerifyNowは血 小板凝集機能検査の原理を、より現代的な方法にて簡便に計測可能とした方法である。

 血栓イベントの発症における血小板の役割の詳細は十分に理解されていない。かつて、血小板凝集を完全に阻害するGPIIb/IIIa受容体阻害薬が開発されたときに、血小板凝集阻害は必ずしも血栓イベントの低減に直結しないことは確認されていた。

 血小板は極めて敏感な細胞である。注射針を用いて血液を採取すれば容易に活性化される。血液を体外に取り出して血小板の機能検査を行なっても、体内の血小板活性化動態を把握できるとは思えない。また、血栓イベントの発症における血小板の役割としては凝集以上に血小板内に蓄積された生理活性物質の局所放出、活性化血小板膜上の凝固系活性化の役割が大きいかも知れない。

 世界の多くの国にて、クロピドグレルが特許を喪失して安価になると、血小板機能検査を行なっても新薬の必要な特殊な症例群というものはみつからない可能性が高い。特殊な検査を行なわず、従来のエビデンスに基づいた標準治療を安価なジェネリッククロピドグレルを用いて行なうことに問題がないことを示した本試験は、急性冠症候群患者には朗報であろう。