5月7日、日本動脈硬化学会のプレスセミナーが、日内会館(東京都文京区)にて行われた。日本動脈硬化学会は、4月16日に「栄養成分表示に関する見解ならびに要望」を消費者庁に提出していたが、本セミナーでは要望の詳細と意図が発表された。同学会は、食品栄養表示に、「脂質」に加え、「コレステロール」、「飽和脂肪酸」、「トランス脂肪酸」をただちに追加するよう要望している。
現在、食品の栄養表示は栄養表示基準(平成15年厚生労働省告示第176号)で義務付けられており、その一つに「脂質」がある。しかし、脂肪には多くの種類があり、それらをひとまとめにして、総体としての「脂肪」摂取を低減することを目的として「脂質」と表示することには問題があった。
実際、摂取脂質総量は、動脈硬化性心疾患のリスクを促進させないことが示されている。一方で、飽和脂肪酸を減らし、多価不飽和脂肪酸に置換した多くの試験で冠動脈疾患リスクの低下が認められている。つまり、すべての脂肪が健康障害につながるわけではない。現時点で過剰摂取が動脈硬化性疾患を増加させる脂質としては、コレステロール、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸が挙げられる。
そこで、学会としては、「コレステロール」、「飽和脂肪酸」、「トランス脂肪酸」の栄養表示をただちに行うよう要望した。同じ「栄養表示」においても、「コレステロール」、「飽和脂肪酸」は低減が目的であるのに対し、「トランス脂肪酸」はゼロにすることが目的である。「トランス脂肪酸」に対しては、表示のみではなく、さまざまな販売規制を設けることも併せて要望した。
なお、米国、カナダ、韓国、ウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイなどでは、すでに「脂質」の表示に加え、少なくとも「飽和脂肪酸」、「トランス脂肪酸」の表示が実行されている。
本要望書には、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本小児科学会、日本腎臓学会、日本糖尿病学会、日本肥満学会も同意している。
(ケアネット 鈴木渉)