「仕事-家庭葛藤(Work-home interference: WHI)」すなわち仕事と家庭の両立における葛藤の程度には男女差がみられ、WHIが高度な女性は大うつ病になりやすいことなどが、スウェーデン・ストックホルム大学のMagnusson Hanson LL氏らによる長期研究の結果、示された。WHIとうつ病性障害が関連するか否かに関する長期研究は、これまでほとんど行われていないという。Scandinavian Journal of Work, Environment and Health誌オンライン版2013年8月21日号の掲載報告。
研究グループは、国民を代表する集団を対象に、WHIと大うつ病指標の関連についてプロスペクティブな評価を行った。具体的には、Swedish Longitudinal Occupational Survey of Health(SLOSH)に参加した大うつ病歴および抗うつ薬使用歴のない就労者、男性1,576例、女性1,678例を対象とし、多重ロジスティックおよびCox回帰モデルを用いて、自己報告によるWHIと大うつ病疑い[(Hopkins)Symptom Checklistに基づく簡易自己報告スケールが高スコア]ならびに抗うつ薬による新規治療(処方薬レジスターに基づく)との関連を調べた。観察期間は2年間であった。
主な結果は以下のとおり。
・WHIが高度(かなりしばしば/常時)の例が7%、中程度(時々)の例が32%にみられた。
・解析結果から、とくに高度WHIと大うつ病や抗うつ薬治療(両方またはどちらか)とがプロスペクティブに関連することが示唆された。同関連は、仕事の時間要因や裁量度(demands、control、support、overtime)などの就労状況で調整した場合も同様であった。
・「大うつ病疑い」が惹起される状況に、性別による相違がみられた。別の解析により、WHIが高度な女性においてのみ、大うつ病が有意に惹起されやすいことが示唆された。
・また、とりわけ男性で抗うつ薬治療率が高く、これは仕事の内容と一部関連していること、大うつ病は高度のWHIと関連していることなども示唆された。
・以上のように、2年間の観察において、高度のWHIは大うつ病と抗うつ薬治療(両方またはどちらか)と関連しており、その影響は性別により若干異なることが明らかになった。
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