CLEAR!ジャーナル四天王|page:34

脳内大血管閉塞に対する血栓回収療法に血栓溶解療法の併用は不要か?(解説:内山真一郎氏)-1226

脳内大血管閉塞による急性虚血性脳卒中に血栓回収療法前のアルテプラーゼ静注療法が有用であるかどうかは確かではなく、大血管閉塞例に関してはアルテプラーゼ静注の併用なしに直接血栓回収療法を行ってもいいのではないかとの意見が以前から存在した。中国で行われた本試験では、血栓回収療法のみでもアルテプラーゼ後の血栓回収療法と比べて90日後の転帰が劣っていなかったという結果が示された。本年ロサンゼルスで開催されたInternational Stroke Conferenceにおいて日本医大脳神経内科からの同様なデザインで行われたSKIP研究の結果が発表されたが、血栓回収単独療法のアルテプラーゼ併用療法に対する非劣性は本試験より症例数が少なかったためか証明されなかったものの、出血リスクは血栓回収療法単独のほうが有意に少なかった。

急性上部消化管出血に対する緊急内視鏡の適切な施行時期は(解説:上村直実氏)-1225

吐血や下血を主訴とする急性上部消化管出血の死亡率および外科的手術を減少するために、発症から24時間以内の緊急内視鏡検査が推奨されている。日本の臨床現場でも緊急内視鏡の施行が早ければ早いほど救命率が増加すると考えられているものの、緊急内視鏡検査をいつでも施行できる診療体制を有する施設は限られていることも事実である。 最近、重篤な急性上部消化管出血症例を対象として緊急内視鏡検査の適正な時期を検証する目的で、消化器科へ紹介された後6時間以内に検査する緊急施行群と6時間から24時間以内の早期施行群に分けたRCTが行われた結果、検査施行時期が生命予後や再出血率に影響しないことがNEJM誌に発表された。

衝撃のISCHEMIA:安定冠動脈疾患に対する血行再建は「不要不急」なのか?(解説:中野明彦氏)-1224

安定型狭心症に対する治療戦略は1970年代頃からいろいろな構図で比較されてきた。最初はCABG vs.薬物療法、1990年代はPCI(BMS) vs.CABG、そして2000年代後半からPCI(+OMT)vs.OMT(最適な薬物療法)の議論が展開された。PCI vs.OMTの代表格がCOURAGE試験(n=2,287)1)やBARI-2D(n=2,368)、FAME2試験(n=888)である。とりわけ米国・カナダで行われ、総死亡+非致死性心筋梗塞に有意差なしの結果を伝えたCOURAGE試験のインパクトは大きく、米国ではその後の適性基準見直し(AUC:appropriate use criteria)や待機的PCI数減少につながった。一方COURAGEはBMS時代のデータであり、症例選択基準やPCI精度にバイアスが多いなど議論が沸騰、結局「虚血領域が広ければPCIが勝る」とのサブ解析2)が出て何となく収束した。しかしこの仮説は後に否定され3)、本試験15年後のfollow-up4)も結論に変化はなかった。

VICTORIA試験を読み解く(解説:安斉俊久氏)-1223

第69回米国心臓病学会年次学術集会は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け開催は見送られたが、心不全増悪の既往を有する心不全患者5,050例を対象として、可溶型グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬の効果をプラセボ群と比較したVICTORIA試験の結果は2020年3月28日にWEB上で公開され、同日、New Engl J Med誌に掲載となった。結論として、左室駆出率(LVEF)が45%未満の症候性慢性心不全において、ガイドラインに準じた治療にsGC刺激薬であるvericiguat(1日1回、10mgまで増量)を追加投与することで、心血管死ならびに心不全入院からなる複合エンドポイントを10%有意に減少させることが明らかになった(35.5% vs.38.5%、ハザード比[HR]0.90、95%信頼区間[CI]0.82~0.98、p=0.02)。ただし、心血管死単独、心不全入院単独では2群間に有意差を認めなかった。全死亡と心不全入院を合わせた複合エンドポイントは、1次エンドポイントと同様にvericiguat群でプラセボ群に比較し、有意に低率であった(HR:0.90、95%CI:0.83~0.98、p=0.02)。また、同薬剤の治療効果は、併用する心不全治療薬に関係なく、一貫して認められ、治験開始時のN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)値が比較的低値の患者集団においてより有効であった。症候性低血圧や失神などの有害事象に有意差は認めず、従来の治療を行いつつも入院加療あるいは心不全増悪を来した症例に対して、良好な予後改善効果をもたらす新規治療薬として着目されるに至った。また、1件の主要アウトカムイベントを予防するために1年間の治療が必要な症例数(NNT:number needed to treat)は約24例であった。

HPVワクチン+検診で子宮頸がん撲滅可能−日本はまず積極的勧奨中止以前の接種率回復を(解説:前田裕斗氏)-1222

子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって生じることがわかっている、いわば「感染症」の1つである。2018年のデータによれば全世界で約57万件の新規発生と約31万人の死亡が報告されており、女性において4番目に頻度の多いがんである。この子宮頸がんを予防するうえで最も効果的なのがHPVワクチンだ。当初はがんを起こしやすいHPV16、18を対象とした2価ワクチンのみであったが、現在では9価のワクチンが開発され、海外では主に使用されている。ワクチンの効果は高く、接種率の高い国ではワクチンの対応する型のHPVを73~85%、がんに進展しうる子宮頸部の異形成(中等度以上)を41~57%減少させたと報告されている。

COVID-19の救世主現る?(解説:岡慎一氏)-1221

たった53例のCOVID-19患者の、しかもCompassionate useのremdesivirの結果が、NEJM誌のOriginal Articleに掲載された。やや驚きである。いかに世界中がCOVID-19の治療薬を欲しているかがよくわかる。もともとは、エボラ出血熱の治療薬として開発されたものである。急にこの世に現れ、致死率が高いにもかかわらず感染力が強く、あっという間にPandemicになってしまったCOVID-19である。当然、COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2に対する特異的な治療薬などまだないため、抗HIV薬のロピナビルや抗マラリア薬のクロロキンなど、いろいろな薬剤が治療薬の候補として浮かび上がっていた。

SARS-CoV-2との戦いーACE2は、味方か敵か?(解説:石上友章氏)-1218

COVID-19は、新興感染症であり、科学的な解明が不十分である。これまでの報告から、致死的な重症例から、軽症例・無症候例まで、幅広い臨床像を呈することがわかっており、重症化に関わる条件に注目が集まっている。中国からの報告により、疾病を有する高齢者、なかでも高血圧を有する高齢者が多く重篤化する可能性が指摘された。SARS-CoV-2の類縁であるSARS-CoVは、SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)の原因ウイルスである。標的である肺胞上皮細胞に感染する際に、細胞表面にあるACE2(アンジオテンシン変換酵素2)を受容体として、ウイルス表面のスパイク蛋白と結合する。ACE2と結合したスパイク蛋白は、細胞表面の膜貫通型セリン・プロテアーゼであるTMPRSS2などにより切断され、標的細胞の細胞膜と融合することで細胞内に侵入することが知られている(『感染の成立』)。SARS-CoV-2の感染症であるCOVID-19でも、同様の機序が想定されている。

新型コロナウイルス感染症患者に対するremdesivir人道的使用(解説:浦島充佳氏)-1220

現在、COVID-19に対する有効な治療薬はない。そこでSpO2 94%以下の低酸素症を伴うCOVID-19患者61例にremdesivirを使用した。しかし、結果の不明な7例と薬物使用量の不適切だった1例を除外し53例で解析が成された。投与開始中央値18日(IQR:12~23日)において53例中36例(68%)で酸素投与法の改善をみた。一方、有害事象として60%に肝臓酵素の上昇、下痢、発疹、腎機能障害、低血圧を認めた。23%に多臓器不全、敗血症性ショック、急性腎障害、低血圧を、人工換気をしている患者に認めた。

今、私たちは冠動脈疾患治療の分岐点にいる(解説:野間重孝氏)-1219

至適内科治療(optimal medical therapy:OMT)という言葉がある。虚血性心疾患は典型的な複合因子的疾患であり、単に血圧を下げるとか禁煙してもらうというだけでは発症予防(1次予防)もその進展の予防(2次予防)もできない。主立った因子をすべてコントロール、それもエビデンスのある薬剤・方法を用いて複合的にコントロールすることによって虚血性心疾患の1次・2次予防をしようという考え方である。90年代の半ば過ぎに確立され、その後種々の改良・改変を加えられたが、その大体の考え方は変わっていない。そこに至るには危険因子の徹底的な洗い出し、それに対する対処とそのエビデンスの蓄積があったことは言うまでもない。世紀をまたぐころにはOMTは虚血性心疾患治療の基礎として確立されたばかりでなく、血行再建術の代替えにもなりうるとも考えられるまでになった。心筋梗塞、不安定狭心症などのいわゆる急性冠症候群(ACS)では血行再建術が絶対適応となっているが、安定狭心症に対しては血行再建術と同程度の治療効果が得られることが期待されるまでになった。この方面での治験のエンドポイントは死亡+非致死的心筋梗塞の発生に置かれることが多いが、いろいろな比較試験でコントロールにされたOMT群の発症率はいずれにおいても20%を切る結果(18%~19%程度)が示されている。

エピジェネティック制御薬は心血管疾患の残余リスクを低下させない(解説:佐田政隆氏)-1217

冠動脈疾患に対する薬物療法の進歩には目を見張るものがあり、患者の長期予後を大きく改善させた。その中でも高用量のストロングスタチンは心血管イベントを3割から4割低下させるという数々のエビデンスが積み重ねられて、現在、標準的治療となっている。しかし、逆にいうと6割から7割の人が至適な薬物療法を行っても心血管イベントを起こしてしまうことになる。これが残余リスクとして非常に問題になっている。

血栓回収療法前の再灌流に対するtenecteplase増量の効果(解説:中川原譲二氏)-1214

EXTEND-IA TNK試験において、tenecteplase 0.25mg/kgによる血栓溶解療法は、アルテプラーゼと比較し、脳梗塞患者に対する血栓除去術施行前の再灌流を改善することが示された。これを受けて、EXTEND-IA TNK Part 2試験は、tenecteplase 0.40mg/kgが、0.25mg/kgと比較して、血栓除去術施行前の脳再灌流を改善するかどうか確定することを目的に行われた。本試験は、オーストラリアとニュージーランドの27施設で、2017年12月~2019年7月の期間に登録された患者に対し非盲検下で治療を行い、画像診断および臨床転帰の評価は盲検下で実施した無作為化臨床試験である。対象は、標準的な静脈血栓溶解療法の適格基準である発症後4.5時間未満で内頸動脈/中大脳動脈/脳底動脈の閉塞を有する脳梗塞成人患者300例とした。tenecteplase 0.40mg/kg(最大40mg)群(150例)または0.25mg/kg(最大25mg)群(150例)に無作為化し、それぞれ血管内血栓除去術の前に投与した。

上部尿路がんに対する術後抗がん化学療法の有効性:POUT trial第III相試験(解説:宮嶋哲氏)-1216

上部尿路がんは予後不良であるものの、術後補助化学療法の有効性は確認されていない。本研究では腎盂尿管がんで腎尿管全摘除術を施行された患者(261例)を対象に、経過観察群とシスプラチン主体の抗がん化学療法投与群(ゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチン)の2群にランダム化してその有効性を前向きに比較検討したものである。2012年から2017年までに登録された261症例のうち、132例が化学療法群、129例が経過観察群に割り付けられ、観察期間中央値は30.3ヵ月であった。術後化学療法はDFS(HR:0.45、p=0.0001)ならびにMFS(HR:0.48、p=0.0007)を有意に改善した。3年無事象生存率(event-free survival)は化学療法群で71%、経過観察群で46%であった。一方、Grade3以上の有害事象は、化学療法群で44%、経過観察群で4%に認めたが、治療関連死は認めなかった。

コレステロール降下薬のCutting Edge(解説:平山篤志氏)-1215

1994年にシンバスタチンの投与により心血管死亡が減少するという4S試験の報告以来スタチンによるコレステロール低下は動脈硬化性疾患の発症抑制、とくに冠動脈疾患の発症リスクを低下させてきた。しかし、最大量の強力なスタチンを用いてもコレステロール低下効果には限界があり、残余リスクの一因であった。コレステロール吸収阻害薬エゼチミブ、そしてPCSK9阻害薬の登場により、スタチンの限界を超えてコレステロールを低下することが可能となり、それに伴い心血管イベントの減少がもたらされた。しかし、薬剤の服用中止により、心血管イベントが増加することから、継続的な治療が必要であり、アドヒアランスをいかに維持するかが重要である。

根治療法前の高リスク前立腺がん患者を対象としたPSMA PET-CTの有用性:多施設前向きランダム化試験(解説:宮嶋哲氏)-1213

本研究は、2017年から2018年にオーストラリアの10施設において、高リスク前立腺がんに対して手術または放射線治療の根治療法を予定していた302症例を対象とし、従来の画像検査(CTと骨シンチグラフィ)とPSMA PET-CTの有用性を比較したprospective randomized studyである。cT3以上高リスク前立腺がんと診断された302症例をランダム化して、半数が従来の画像検査(CTと骨シンチグラフィ)を、残りの半数がPET-CTを施行された。その2週間後に、同じ両患者群を対象に画像検査をクロスオーバーさせてセカンドラインとして画像検査を行い比較検討している。

急性期脳梗塞に対する神経保護薬nerinetideの有効性と安全性/Lancet(解説:中川原譲二氏)-1212

nerinetideは、シナプス後肥厚部タンパク質95(PSD-95)を阻害するエイコサペプチドで、虚血再灌流の前臨床脳梗塞モデルで有効性が確認されている神経保護薬である。この試験では、急性期脳梗塞患者での迅速血管内血栓回収療法(EVT)に随伴する虚血再灌流におけるnerinetideの有効性と安全性を評価する目的で、多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(ESCAPE-NA1)が行われた。対象は、年齢18歳以上、脳主幹動脈閉塞後12時間以内の急性期脳梗塞で、無作為割り付け時に機能障害を伴う脳梗塞がみられ、発症前は地域で自立して活動しており、脳卒中早期CTスコア(ASPECTS)が>4点、多相CT血管造影で中等度~良好な側副路充満が示されている患者であった。

セレブの自殺が報道されると(解説:岡村毅氏)-1210

ハイデガーは「人は時間的存在である」と言ったが、人だけが過去を振り返り、未来を恐れ、そして自分の死を意識しうる存在なのかもしれない。したがって自殺という現象は、とても人間的な現象といえよう。自殺は社会学や精神医学において重要なテーマであり続ける。さて、著名人の自殺のニュースは、その後の自殺数を増やし、また自殺の方法が報じられた時には同じ方法による自殺を増やす、という報告である。これまでも「ウェルテル効果」(ゲーテの著作『若きウェルテルの悩み』に影響されて自殺が増えたという故事による)、著名人の自殺により自殺が増える現象が知られていた。一方で、自殺一般の報道は自殺を増やすことはないようである。本論文は、この現象に関するメタアナリシスであり、現時点での決定版ともいえよう。

早期トリプルネガティブ乳がんに対するペムブロリズマブ+術前化学療法:pCR率が13.6%増加(解説:下村昭彦氏)-1209

本試験は、臨床病期IIからIIIの早期トリプルネガティブ乳がん(triple negative breast cancer:TNBC)に対して術前化学療法にペムブロリズマブを追加する効果を病理学的完全奏効(pathological complete response:pCR)率と無イベント生存期間を用いて評価した第III相試験であり、ペムブロリズマブ群でpCR率64.3%(95%CI:59.9~69.5)、プラセボ群で51.2%(95%CI:44.1~58.4)と、ペムブロリズマブ群で有意に良好であった。メラノーマで最初に有効性が示された免疫チェックポイント阻害薬も、あっという間にさまざまながん種で有効性が示され、他がん種ではすでに日常臨床で多く使われるようになった。乳がんにおいてもその有効性が期待されていたが、昨年の欧州臨床腫瘍学会で発表されたKEYNOTE-119が示すように、免疫原性が高いとされるTNBCであっても単剤での有効性は示せていない。転移TNBCにおいてはすでに抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブとアルブミン結合パクリタキセルの有効性が示され、国内でも承認されている。また、転移TNBCに対するペムブロリズマブと化学療法併用の有効性もプレスリリースされており、転移TNBCにおいては免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用は重要な選択肢の1つとなっている。

HIV治療のゲームチェンジャー現る(解説:岡慎一氏)-1208

HIV治療は、多くの治療薬の開発のおかげで急速な進歩を遂げてきた。1996年当初3剤併用療法が可能となった当時、治療効果はそれまでと比べものにならないくらい改善したが、1日5回、トータル20錠もの薬剤を、副作用軽減のため水分1.5Lと共に服用しなければいけなかった。もちろん、このような治療が長続きするはずもなく、飲み忘れが増えるなどして薬剤耐性ウイルスの出現を招いていた。その後、治療薬の改良は進み、10年後には1日1回の治療が可能になり、その10年後には1日1回1錠での治療が可能になった。1日1回1錠で治療が済むのであれば、もうこれ以上の改良はないであろうと思っていたら、今回の新しい治療法の登場である。今回の新しい治療法は、今までの治療でウイルスを抑えた後、維持療法として2種類の薬剤を月に1回注射するというものである。毎日忘れずに薬を飲むという今までの治療の常識からすると、まさにゲームチェンジャーである。有効性に関しては、現在最も強力といわれるDTG/ABC/3TCによる1日1回1錠の経口薬3剤治療と比較し、月1回の2剤治療で非劣性が証明されている。副作用としては、筋注のため、局所の痛みは少しあるようである。興味深いのは、患者満足度で、ほぼすべての人が月1回治療を希望しており、その理由が、「月に1回だけ注射すれば残りの日はHIVのことを忘れることができる」、というものであった。1日1回の服用であっても、毎日薬を飲むことに対するプレッシャーは大きいのであろう。もうひとつ、非常に興味深い結果がほんの数行書かれている。283例中3例に治療失敗がみられ、薬剤耐性ウイルスが出ているのである。経口であれば、服薬が完全でなかったという言い訳ができるが、この治験では確実に注射しているので、adherence不良のためというのは失敗の原因にはならない。全員がsubtype A1であったというが、この点に関しては、より詳しい検討が待たれる。

MRSA菌血症におけるβラクタム薬の併用効果(解説:吉田敦氏)-1207

MRSA菌血症では、限られた抗菌薬の選択肢を適切に使用しても、血液培養陰性化が達成できなかったり、いったん陰性化しても再発したり、あるいは播種性病変を来してしまう割合は高い。in vitroや動物実験の結果を背景とし、抗MRSA薬にβラクタム薬を追加すれば臨床的な効果が上乗せできるのではないかと長らく期待されてきたが、実際は培養結果判明までなど短期間併用されている例は相当数存在するものの、併用のメリット・デメリットが大規模試験で前向きに評価されたことはほとんどなかった。

B群髄膜炎菌ワクチンの用途と限界(解説:吉田敦氏)-1206

髄膜炎菌感染症は、保菌者の咽頭から感染し、進行の速い重篤な菌血症・髄膜炎・臓器不全を来す疾患であり、公衆衛生上も重大な脅威である。12種類の血清群が知られているが、血清群A、B、C、W、Yが原因となることが多く、本邦における統計ではY、B、C、Wの順であった。ただし血清群の内訳は地域によって異なることが特徴で、海外で導入されていたACWYの4価ワクチンが本邦で使用可能になったのは2015年である。しかしながらB群の莢膜多糖体はヒトのneural cell adhesion moleculeなどと類似しているため免疫原性が低く、自己免疫の発症も懸念され、結合型ワクチンでなくリコンビナントワクチンが開発された。