CLEAR!ジャーナル四天王|page:53

小児期・思春期の過体重は成人までに解消すると2型糖尿病の発症を抑止できる(解説:吉岡成人 氏)-844

ヒトの脂肪細胞数は小児期に増加し、20歳以降は肥満者でも非肥満者でも脂肪細胞の数はほとんど変化しない。そのため、小児期の過体重は、成人期以降に過食や運動不足により脂肪細胞のサイズが増大した場合に、アディポネクチンなどの「善玉」アディポサイトカイン(アディポカイン)の低下をきたし、糖尿病を発症しやすくなる。日本における小児肥満の割合は2006年頃から減少傾向にあり、2015年度の学校保健統計調査によれば11歳時において肥満傾向にあるものは男児で9.87%、女児で7.92%である。一方、欧米諸国では小児の23%が過体重ないしは肥満と報告されており、小児期の過体重が成人後の糖尿病リスクとして重要視されている。

治療抵抗性高血圧に、薬剤師による個別カウンセリングが有効である(解説:石上友章氏)-843

世界の高血圧診療には、神話のような定説がある。その1つとして、『米国の黒人の高血圧は、食塩感受性で治療抵抗性である』という説がある。日本で診療している以上、この説を検証する機会は皆無だろうし、日常的にどうしても解決しなくてはならないClinical Questionとして取り上げられることもないだろう。したがって、日本人の研究者が、このCQを仮説化して臨床研究を行うこともない。しかしながら本論文のように、一流誌といわれる医学ジャーナルに、この仮説を事実として、何らかの介入によって検証する目的の、臨床研究が掲載されることは、決してまれではない。

ニューキノロンの使用は、動脈瘤や動脈解離のリスクを高める(解説:佐田政隆氏)-839

スウェーデンでは、nationwideの国民の医療に関するビッグデータが登録されており、薬の副作用など各種のコホート研究を行うことができる。本研究では、2006年7月から2013年12月に、ニューキノロンを服用した36万88人と、傾向スコアでマッチングしたアモキシシリンを服用した36万88人で、服用60日以内の大動脈瘤、大動脈解離の発症を比較検討した。結果として、ニューキノロン群がアモキシシリン群に比較して、大動脈瘤、大動脈解離の発症が、ハザード比1.66と多かったという。

「二次性進行型」多発性硬化症患者における身体機能障害の進行抑制に朗報(解説:森本悟氏)-837

多発性硬化症(MS)全患者の約85%が再発寛解型であり、その約25%が10年以内に、約75%以上が30年後には二次性進行型MS(secondary progressive multiple sclerosis、以下SPMS)に移行する。また、早期からの軸索障害を反映してか、比較的障害度の低い早期(EDSSスコア3程度)から障害の慢性的な進行は始まっているとされる。SPMSにおいては、古典的かつ優れた治療薬であるインターフェロンβ(IFNβ)製剤について、再発の重畳やガドリニウム造影病巣を伴ったりする場合でのみ有効性が期待されているが、身体機能障害の進行抑制に対して確実に有効といえる薬剤が乏しいのが現状である。

HeartMate 3、MOMENTUM 3 臨床試験の2年の治療成績(解説:許 俊鋭 氏)-836

MOMENTUM 3の初期の分析でHeartMate 3(磁気浮上遠心ポンプ)はHeartMate II(機械的軸受軸流ポンプ)に比較して、進行した心不全患者に対する6ヵ月間の補助の比較で臨床転帰を改善することがすでに報告されている。今回、進行した心不全の患者におけるHeartMate 3(遠心ポンプ)とHeartMate II(軸流ポンプ)の無作為非劣性および優位性の比較試験でMOMENTUM 3の2年の治療成績が報告された。

一時的に吸入ステロイドを4倍量にすると喘息増悪リスクが2割減少する(解説:小林 英夫 氏)-835

吸入ステロイド薬が気管支喘息管理の基本であることは言うまでもない。吸入ステロイドですべての喘息増悪は抑制できないものの、吸入量増加によりさらなる症状改善を図るという発想から、本研究は必然的なテーマであろう。2004年のLancetとThoraxに、吸入量を2倍にしてもあまり効果が得られなかったことが報告されているため、今回の研究は4倍量吸入により30%の増悪抑制効果が得られるかどうかを証明するというデザインが採用された。得られた結果は19%の増悪抑制効果で、当初の設定目標には届かなかった。

異時性胃がんの予防に対するピロリ除菌治療(解説:上村直実氏)-834

ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染と胃がんとの関連については、胃がん患者の99%が感染陽性ないしは感染の既往者であり、未感染者に胃がんが発症することは非常にまれであることが確認されている。一方、H. pylori感染者に対する除菌による胃がん予防効果は完全ではなく、最近の診療現場では頻繁に除菌後胃がんに遭遇するようになっている。

降圧治療における家庭血圧測定の有効性(解説:石川讓治氏)-833

家庭血圧が外来血圧よりも優れた高血圧性臓器障害や心血管イベントの予測因子であることが多くの疫学研究において報告されているが、家庭血圧を指標とした降圧治療が、外来血圧を指標とした血圧治療よりも優れていることを示した報告はない。Staessenらは1)、同じ血圧レベルと目標値として降圧治療を行った場合、外来血圧を指標とした降圧治療の方が家庭血圧を指標とした降圧治療よりも、24時間自由行動下血圧レベルが低値であったことを報告しており、必ずしも家庭血圧を指標とした降圧治療が厳格な血圧コントロールとはならないと考えられてきた。しかし、過去の疫学研究において、外来血圧は家庭血圧よりやや高めになる傾向があることが報告されており、多くの高血圧治療ガイドラインにおいては外来血圧140/90mmHgに相当するのが家庭血圧135/85mmHgであると考えられている。そのため、Staessenら1)の研究結果を実際の臨床に当てはめるには困難があった。

1型糖尿病患者の低血糖回避にリアルタイムCGM(Dexcom G5)は有用である(解説:住谷哲氏)-832

インスリン治療を必須とする1型糖尿病患者において低血糖は避けては通れない。健常人の場合、低血糖は動悸や異常な空腹感などの交感神経刺激症状の出現によって自覚されるが、多くの1型糖尿病患者はこの自覚が障害された状態(impaired awareness of hypoglycemia[IAH]:適切な訳語がないのでこのままで使用する)を合併している。低血糖無自覚症(hypoglycemia unawareness)とこれまで呼ばれてきたが、無自覚の程度まで至る患者は少なく、軽度の障害の場合が多いので最近はIAHが用いられることが多い。前向きコホート研究の結果、IAHを合併した患者は合併しない患者に比較して、重症低血糖の頻度が約6倍に増加することが明らかにされている。

APROCCHSS試験-敗血症性ショックに対するステロイド2剤併用(解説:小金丸博氏)-831

敗血症性ショック患者に対するステロイドの有効性を検討した研究(APROCCHSS)がNEJMで発表された。過去に発表された研究では、「死亡率を改善する」と結論付けた研究(Ger-Inf-05)もあれば、「死亡率を改善しない」と結論付けた研究(CORTICUS、HYPRESS、ADRENAL)もあり、有効性に関して一致した見解は得られていなかった。

低脂肪食でも低炭水化物食でも減量効果は変わらない(解説:吉岡成人 氏)-830

体重を減らすために有効なのは、低脂肪食なのか、低炭水化物食なのか…、多くの臨床研究が行われ、いまだ意見の一致が得られていない。今回紹介する臨床研究では、肥満者における遺伝子多型と減量の関連に注目し、  今回紹介する臨床研究では、肥満者における遺伝子多型と減量の関連に注目し…………

議論が続く多枝疾患患者への冠血行再建法、CABGかPCIか?(中川義久 氏)-829

これまでも、多枝冠動脈疾患患者における長期成績は、CABGのほうがPCIよりも良好であることが複数の無作為化比較試験および患者登録研究の結果から示されてきた。しかし、その優位性は真のエンドポイントである死亡の差としてではなく、新規心筋梗塞発生リスクや、再血行再建リスクなども含めて解析した場合にCABGのほうが勝るという結論にとどまっていた。死亡に差がないのであれば、侵襲度の違いを念頭に置けばPCIの立ち位置を高く考慮してもよいという意見もあった。

超加工食品摂取割合の増加はがんリスクを高める可能性が大!(解説:島田俊夫氏)-828

私達人類は、歴史的には食物を糧にして生命維持に必要なエネルギーを元来、狩猟民として肉食または雑食により生きてきたが、農耕の定着により安定して食物を得ることが可能になったため、炭水化物(糖質+食物線維)からより多くのエネルギーを取り入れる現代の生活様式を確立した。主に糖質による摂取エネルギーの過剰および交通手段の発達に伴う運動量の減少影響も加わり、肥満を招き生活習慣病の増加に拍車がかかっている。さらに、先進国においては夫婦共働きの家庭が増加する社会の中で、加工食品からのエネルギーの摂取増加が、その利便性のために増え続けている。その一方で、保存期間の延長、見ためをよくするなどの目的で、食品添加物、安定剤、発色剤、防腐剤、砂糖、油脂、塩などが添加されている。このような食品加工技術の進歩の裏で、食の安全性が損なわれていることを決して忘れてはならない。2018年2月14日にBMJ誌に掲載されたFiolet T氏らの論文は、超加工食品とがんの関係にスポットライトを当てたインパクトの大きい論文であり、私見をコメントする。

肺血栓塞栓症における診断基準導入の意義(解説:今井靖氏)-827

肺血栓塞栓症が疑わしい場合、d-dimerなどの血液検査に加え、本邦ではCT検査で肺血管から下肢静脈までをスキャンする肺静脈血栓症・深部静脈血栓症スクリーニングが普及しているが、一方で、本来不要な検査の実施が少なからず行われている実情がある。そのような状況において本論文については一読の価値があると思われる。今回取り上げる論文においては、低リスクの救急部門受診患者における肺血栓塞栓症の除外基準を導入することで血栓塞栓症イベントが抑制されるか否かについて検討した、PROPER研究の報告である。

複雑性尿路感染症に対するメロペネム/vaborbactamの効果(解説:吉田 敦 氏)-826

多剤耐性グラム陰性桿菌、とくにカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)の増加と蔓延は、抗菌薬療法の限界を示唆する耐性菌、いわゆる「悪魔の耐性菌」として今や人類の脅威となっている。現在使用できる抗菌薬が限られている中で、セリン型のクラスAおよびクラスC βラクタマーゼを阻害するボロン酸であるvaborbactamとカルバペネム(メロペネム)を配合したメロペネム/vaborbactam(以下MEPM/VBT)が登場し、体内動態に関する第I相試験が行われていたが、今回第III相試験の結果が発表された。

パンジェノタイプのDAA療法の登場と今後に残された課題(解説:中村郁夫氏)-825

本論文は、遺伝子型1型および3型のHCVを有するC型慢性肝炎症例に対する、グレカプレビル・ピブレンタスビル併用療法の治療効果および安全性に関するランダム化・オープンラベル・多施設で行われた第III相試験の結果の報告である。合計1,208症例に対し、8週間および12週間投与が行われ、SVR12(治療終了後12週におけるHCV陰性化)の割合は、遺伝子型1型(ENDURANCE-1試験):8週投与群99.1%、12週投与群99.7%。遺伝子型3型:8週投与群/12週投与群とも95%と高率であった。