医療一般|page:1

胃がんT-DXd、日本における販売後調査の最終解析/日本胃癌学会

 抗HER2抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は「がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃癌」に対し2020年9月に承認された。現在では胃がん3次治療以降に広く使用されているが、間質性肺疾患(ILD)の発現が重要なリスクとして認識されており、ILDリスクを評価する観察期間12ヵ月の製造販売後調査(PMS)が実施された。2025年3月12~14日に行われた第97回日本胃癌学会総会では、愛知県がんセンターの室 圭氏が本調査の最終解析結果を発表した。  主な結果は以下のとおり。

閉塞性肥大型心筋症へのmavacamten、長期有効性・安全性の中間解析(HORIZON-HCM)/日本循環器学会

 閉塞性肥大型心筋症(HCM)治療薬の選択的心筋ミオシン阻害薬mavacamten は、3月27日にブリストル マイヤーズ スクイブが製造販売承認を取得し、年内の国内販売が見込まれる。今回、泉 知里氏(国立循環器病研究センター 心不全・移植部門 部門長)が、mavacamtenの54週での有効性・安全性・忍容性について、3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials1で報告した。  日本人における症状を有する閉塞性HCM患者の治療効果検証のため、第III相非盲検単群試験HORIZON-HCMが実施されており、昨年の同学会において北岡 裕章氏(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)が30週の短期有効性・安全性を報告している。今回の報告では、108週の長期試験の中間解析として54週時点の効果が示された。

腸管GVHDの発症・重症化および予防・治療における腸内細菌叢の役割/日本造血・免疫細胞療法学会

 腸管移植片対宿主病(GVHD)は同種造血幹細胞移植における特徴的な合併症で、予後を左右するだけでなく、移植後の生活の質も低下させる。近年、腸管GVHDと腸内細菌叢との関連に注目した研究は増えているが、まだ不明な点も多い。  2025年2月27日~3月1日に開催された第47回日本造血・免疫細胞療法学会総会では、「腸内細菌叢とGVHD:治療への新たな道を切り開く」と題したシンポジウムが行われ、腸内細菌叢とGVHDとの関連についての研究が4名から報告された。

OTC薬の乱用と精神症状発症リスクとの関係

 市販(OTC)薬の入手しやすさは、現代の医療システムにおいて重要な役割を果たしており、個人が軽度の健康課題を自身で管理できるようになっている。しかし、覚醒剤、下剤、鎮痛薬、麻薬の含有製剤など、一部のOTC薬には、誤用や乱用につながりやすい薬理学的特性がある。不適切な用量、期間、適応症に伴う誤用、精神活性作用やその他の違法な目的のための非治療的な使用に伴う乱用は、依存症や中毒につながるリスクがある。イタリア・G. D'Annunzio UniversityのAlessio Mosca氏らは、既存のエビデンスを統合し、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、充血除去薬の誤用と精神症状の発症との関係を包括的に検討した。Current Neuropharmacology誌オンライン版2025年2月18日号の報告。

「血痰は喀血」、繰り返す喀血は軽症でも精査を~喀血診療指針

 本邦初となる喀血診療に関する指針「喀血診療指針」が、2024年11月に日本呼吸器内視鏡学会の学会誌「気管支学」に全文掲載された。そこで、喀血ガイドライン作成ワーキンググループ座長の丹羽 崇氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター 呼吸器内科 医長 兼 喀血・肺循環・気管支鏡治療センター長)に、本指針の作成の背景やポイントなどを聞いた。  「喀血診療の現場では、長年にわたって公式な診療指針が存在せず、個々の医師が経験と知識を基に対応していたことに、大きなジレンマを感じていた」と丹羽氏は述べる。自身でカテーテル治療や内視鏡治療を行うなかで、より体系的な診療指針の必要性を実感していたところ、日本呼吸器内視鏡学会の大崎 能伸理事長(当時)より「ガイドラインを作ってみないか」と声をかけられたことから、喀血ガイドライン作成ワーキンググループが立ち上がり、作成が始まったとのことである。

各連携機関から見た造血幹細胞移植の現状と展望/日本造血・免疫細胞療法学会

 近年、移植医療を取り巻く環境は大きく変化している。高齢化が進む社会において、若年ドナーの確保や移植後の長期フォローアップを担う後方支援体制の構築が求められている。また、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法などの新たな治療の登場により、患者ごとに最適な治療法の組み合わせを明らかにするため、次世代レジストリの構築が必要とされている。  2025年2月27日~3月1日に開催された第47回日本造血・免疫細胞療法学会総会の造血幹細胞移植推進事業フォーラムでは、これらの課題を中心に、移植医療の現状やその発展に向けた取り組みが共有された。

EGFR陽性NSCLC、アミバンタマブ+ラゼルチニブがOS改善(MARIPOSA)/ELCC2025

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体アミバンタマブと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬ラゼルチニブの併用療法は、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことがすでに報告されている。また、世界肺がん学会(WCLC2024)で報告されたアップデート解析では、アミバンタマブ+ラゼルチニブが全生存期間(OS)を改善する傾向(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.61~0.96、名目上のp値=0.019)にあったことが示され、OSの最終解析結果の報告が待たれていた。

治療抵抗性うつ病に対する新たな治療薬、今後の展望は

 うつ病の初期治療に対する治療反応不良は、患者に深刻な悪影響を及ぼす臨床的課題の1つである。しかし、治療抵抗性うつ病に対して承認された治療法は、ほとんどない。米国・エモリー大学のMichael J. Lucido氏らは、治療抵抗性うつ病に対して実施されている臨床試験を特定し、レビューを行った。Brain Sciences誌2025年2月6日号の報告。  米国および欧州の臨床試験レジストリをシステマティックに検索し、2020年1月以降に最終更新された治療抵抗性うつ病に対する治療薬を評価した第II〜IV相試験を特定した。検索キーワードには、「治療抵抗性うつ病」および関連する下位レベルの用語(レジストリ検索プロトコールに基づく)を用いた。米国のレジストリでは、「うつ病性障害」および「不十分」のワードを用いて2次検索も実施し、治療抵抗性うつ病としてタグ付けされていない研究も収集した。さらに、治験薬のトランス診断ターゲットとして「自殺」および「アンヘドニア」のワードを用いて、さらに2回の検索を実施した。治験薬の主な作用機序に基づき分類を行った。

BMIを改善すると心房細動リスクが低減か

 肥満や過体重が、脳心血管疾患のリスクとなることは知られている。では、体重が減るとこのリスクも減らすことができるのであろうか。この課題に上海交通大学医学院および上海第9人民病院内分泌代謝研究部門のJiang Li氏らの研究グループは、中年期における長期的な体重変化と代謝状態の推移が心房細動(AF)のリスクに与える影響を研究した。その結果、AFの1次予防には、体重管理と代謝の健康維持が勧められることが示唆された。この結果は、Heart Rhythm誌2025年3月13日オンライン版に掲載された。

中強度〜高強度の身体活動は脳の健康に有益

 体を動かすことは、脳に良い影響を与えるようだ。新たな研究で、中強度から高強度の身体活動でエネルギーを消費する人では、エネルギーの消費量が少ない人に比べて認知症、脳卒中、不安症(不安障害)、うつ病、睡眠障害を発症するリスクの低いことが明らかになった。復旦大学(中国)のJia-Yi Wu氏とJin-Tai Yu氏によるこの研究結果は、米国神経学会年次総会(AAN 2025、4月5〜9日、米サンディエゴ)で発表予定。  この研究でWu氏らは、7万3,411人の参加者(平均年齢56.08±7.82歳、女性55.72%)を対象に、活動量計で測定した7日間分の身体活動量および座位行動と精神神経疾患との関連を検討した。身体活動量は代謝当量(METs)として定量化し、3METs以上を中強度〜高強度の身体活動と見なした。例えば、ウォーキングや掃除などの中強度の身体活動は約3METsの消費、サイクリングなどのより激しい身体活動は、速度にもよるが、約6METsの消費に相当する。

自己免疫疾患に対する心身症の誤診は患者に長期的な悪影響を及ぼす

 複数の自己免疫疾患を持つある患者は、医師の言葉にひどく傷つけられたときのことを鮮明に覚えている。「ある医師が、私は自分で自分に痛みを感じさせていると言った。その言葉は私をひどく不安にさせ、落ち込ませたし、今でも忘れられない」と患者は振り返る。  全身性エリテマトーデス(SLE)や血管炎などの自己免疫疾患では、一見すると疾患とは無関係に見える非特異的な心身の症状が複数現れ、診断が困難なことがある。そのような場合、医師は患者に、心身症、つまり症状が精神的なものである可能性を示唆することが多い。その結果、医師と患者の間に「誤解と意思疎通の食い違いに起因する隔たり」が生まれ、それが医療に対する患者の根深く永続的な不信感につながっていることを示した研究結果が、「Rheumatology」に3月3日掲載された。

レム睡眠潜時の増長がアルツハイマー病のマーカーとなる可能性

 レム睡眠潜時の増長は、アルツハイマー病およびアルツハイマー病関連認知症(AD/ADRD)のマーカーとなり得るという研究結果が、「Alzheimer's & Dementia」に1月27日掲載された。  中日友好病院(中国)のJiangli Jin氏らは、睡眠構造とAD/ADRDとの関係を調査するため、成人128人(アルツハイマー病64人、軽度認知障害41人、正常認知機能23人)を登録した。対象者は睡眠ポリグラフ検査、アミロイドβ(Aβ)PET検査、血漿バイオマーカー分析(p-tau181、ニューロフィラメント軽鎖、脳由来神経栄養因子〔BDNF〕を含む)を受けた。

ベンゾジアゼピンによる治療はアルツハイマー病の重大なリスク因子なのか

 アルツハイマー病は、最も頻度の高い認知症である。ベンゾジアゼピン(BZD)は、不眠症やその他の睡眠障害の治療に最も多く使用されている治療薬であるが、BZDの長期的な使用は、認知機能低下と関連していることがいくつかの報告で示唆されている。ポルトガル・University of Beira InteriorのFilipa Sofia Trigo氏らは、BZDによる治療とアルツハイマー病発症との関連性を評価するため、システマティックレビューを実施した。NeuroSci誌2025年2月1日号の報告。  対象研究は、MEDLINE、Embaseのデータベースよりシステマティックに検索し、結果のナラティブ統合は、PRISMA-P 2020方法論に基づき実施した。

限局型小細胞肺がん、CRT後のデュルバルマブ承認/AZ

 アストラゼネカは2025年3月27日、デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)について「限局型小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法」の適応で、厚生労働省より承認を取得したことを発表した。根治的化学放射線療法(CRT)後に病勢進行が認められない限局型小細胞肺がん(LD-SCLC)を対象とした免疫療法では、本邦初の承認となる。  本承認は、LD-SCLC患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「ADRIATIC試験」の結果に基づくものである。

ベネトクラクス、再発・難治マントル細胞リンパ腫に追加承認/アッヴィ

 アッヴィは、2025年3月27日、BCL-2阻害薬ベネトクラクス(商品名:ベネクレクスタ)について、国内における再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫(MCL)に対する治療薬として適応追加承認を取得した。  今回の承認は、再発又は難治性のMCL患者さんを対象としたベネトクラクスおよびイブルチニブの併用療法に関する海外第III相SYMPATICO試験および国内第II相M20-075試験の結果に基づいている。

「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」改訂のポイント/日本胃癌学会

 2024年10月に「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」(日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会 編)が8年ぶりに改訂された。2000年の初版から4回の改訂を重ね、2024年版は第5版となる。2009年の改訂版ではH. pylori感染症の疾患概念が提起され、慢性胃炎患者に対する除菌が保険適用される契機となった。今回の2024年版は初めてMindsのガイドライン作成マニュアルに準拠して作成され、「1)総論、2)診断、3)治療、4)胃がん予防―成人、5)胃がん予防―未成年」という章立てで、CQ(クリニカル・クエスチョン)、BQ(バックグラウンド・クエスチョン)、FRQ(フューチャー・リサーチ・クエスチョン)から構成されている。

極端な暑さは高齢者の生物学的な老化を早める

 極端な暑さは高齢者の生物学的な老化を加速させる可能性があるようだ。暑い日が多い地域に住む高齢者では、涼しい地域に住む高齢者に比べて、生物学的年齢が高いことが明らかになった。米南カリフォルニア大学(USC)老年医学分野のEunyoung Choi氏とJennifer Ailshire氏によるこの研究の詳細は、「Science Advances」に2月26日掲載された。  Choi氏は、「アリゾナ州フェニックスのような、厳重警戒レベルを超える暑さの日(90℉〔32℃〕以上)が年間の半分を占める地域に住む試験参加者は、暑い日が年に10日未満の地域に住む試験参加者と比較して、生物学的年齢が最大14カ月も進んでいた」とUSCのニュースリリースの中で述べている。

一人暮らしの認知症者は疎外されやすい?

 認知症者に対する社会的距離は、認知症の行動および心理的症状(BPSD)を有する一人暮らしの患者でより大きくなることが示唆された。この研究は東京都健康長寿医療センター研究所の井藤佳恵氏らによるもので、研究結果の詳細は「PLOS One」に1月22日掲載された。  認知症者とその介護者は、疾患へのスティグマ(「先入観に基づいてレッテルをはり、偏見をもち、差別する」という、一連の心と行動)による社会的排除に直面している。スティグマは、病気そのものが引き起こす苦痛よりもさらに大きな苦痛をもたらすことがあり、深刻な人権侵害であると言われている。

CKDの貧血治療、ダプロデュスタットvs.ダルベポエチン アルファ~メタ解析

 貧血を伴う慢性腎臓病(CKD)患者を対象として、ダプロデュスタットとダルベポエチン アルファの有効性と安全性を比較したメタ解析の結果、ヘモグロビン(Hb)値、トランスフェリン飽和度、血清鉄の変化、有害事象の発現率は両群間で有意差を認めなかったものの、ダプロデュスタットはダルベポエチン アルファよりもフェリチン値の変化が小さく、総鉄結合能を改善したことを、中国・長春中医薬大学のShuyue Pang氏らが明らかにした。Journal of Pharmacological Sciences誌2025年5月号掲載の報告。  貧血はCKDの一般的な合併症であり、心血管イベントおよびCKD進行の危険因子である。近年は腎性貧血治療薬も増えているが、貧血を伴うCKD患者に対する治療戦略と有効性の最適化は早急に取り組むべき重要な課題として残されたままである。そこで研究グループは、ダプロデュスタットとダルベポエチン アルファの有効性と安全性を比較することを目的として、系統的レビューとメタ解析を行った。

化学療法誘発性末梢神経障害の克服に向けた包括的マネジメントの最前線/日本臨床腫瘍学会

 2025年3月6~8日に第22回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催され、8日の緩和ケアに関するシンポジウムでは、「化学療法誘発性末梢神経障害のマネジメント」をテーマに5つの講演が行われた。化学療法誘発性末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy:CIPN)は、抗がん剤投与中から投与終了後、長期にわたって患者のQOLに影響を及ぼすものの、いまだ有効な治療の確立に至っていない。そこで、司会の柳原 一広氏(関西電力病院 腫瘍内科)と乾 友浩氏(徳島大学病院 がん診療連携センター)の進行の下、患者のサバイバーシップ支援につなげることを目的としたトピックスが紹介された。