放射線科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

大腸がんスクリーニング、CT検査が便中DNA検査よりも有用か

 大腸がんのスクリーニングにおいては、マルチターゲット便中DNA検査(mt-sDNA検査)よりも大腸CT検査(CT Colonography;CTC)の方が、臨床的有効性と費用対効果の点で優れていることが、新たな研究で示された。米ウィスコンシン大学医学部・公衆衛生学部放射線医学・医学物理学分野のPerry Pickhardt氏らによるこの研究結果は、「Radiology」に6月10日掲載された。  大腸がんのスクリーニングでは、現在も大腸内視鏡検査が主流であるとPickhardt氏は説明する。大腸内視鏡検査は侵襲性が高いものの、検査中に前がん状態のポリープを切除できるため、依然として検診のゴールドスタンダードであるという。しかし、鎮静薬を使い、細くて柔軟なチューブを肛門から結腸に挿入するこの検査に不安を感じ、mt-sDNA検査かCTCを選択する患者は少なくない。mt-sDNA検査は、患者から採取した便サンプルに含まれるDNAを解析して腫瘍細胞に由来する変異遺伝子や異常なメチル化パターンなどを検出する。一方、CTCでは、肛門から炭酸ガスなどを注入して大腸を膨らませた状態でCT撮影を行い、ポリープなどの病変の有無を調べる。

心エコーの自動解析AIシステム「PanEcho」、精度は?/JAMA

 米国・テキサス大学オースティン校のGregory Holste氏らは、経胸壁心エコー(TTE)において39項目(診断分類タスク18項目、パラメーター推定タスク21項目)を自動解析する人工知能(AI)システム「PanEcho」を開発し、内部および外部検証の結果、地理的および時間的な違いにかかわらず高い精度が得られることを報告した。心エコー検査は心血管診療の基盤であるが、一連の動画の専門家による読影と手作業によるレポート作成に依存している。著者は、「マルチタスクディープラーニングを用いて心エコー読影を自動化したAIシステム(PanEcho)は、心エコー検査室における補助的な読影ツールとして、あるいはポイントオブケアにおけるAI対応スクリーニングツールとして活用できる可能性があり、各臨床ワークフローにおける前向き評価が望まれる」と述べている。JAMA誌オンライン版2025年6月23日号掲載の報告。

低リスク分化型甲状腺がん、全摘後のアブレーションは回避できるか/Lancet

 低リスクの分化型甲状腺がん患者の治療において、甲状腺全摘後に放射性ヨウ素治療(アブレーション)を行った場合と比較して、アブレーションを行わない場合でも5年無再発生存期間(RFS)は非劣性であり、有害事象の発現は両群で同程度であることから、この治療は安全に回避可能であることが、英国・Freeman HospitalのUjjal Mallick氏らが実施した「IoN試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年6月18日号で報告された。  IoN試験は、英国の33のがん治療施設で行われた第III相非盲検無作為化対照比較非劣性試験であり、2012年6月~2020年3月に参加者を登録した(Cancer Research UKの助成を受けた)。

AIは中間期乳がんの検出に有用?

 人工知能(AI)は、訓練を受けた放射線科医でも見逃してしまうような乳がんを検出できる可能性のあることが、新たな研究で示された。研究グループは、マンモグラフィー検査にAIを組み込むことで、年1回の定期検診の合間に発生する中間期がん(interval breast cancer;IBC)の発生率を下げられる可能性があるとしている。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デビッド・ゲフィン医学部放射線学分野のTiffany Yu氏らによるこの研究結果は、「Journal of the National Cancer Institute」に4月18日掲載された。  Yu氏はUCLAのニュースリリースで、「がんの早期発見は、患者にとって大きな違いを生む。がんを早期に見つけることができれば、より積極的な治療を必要としなくなり、より良好な転帰を得る可能性も高まる」と話す。

術前療法でリンパ節転移陰転の乳がん、照射は省略できるか/NEJM

 乳がん治療では、病理学的に腋窩リンパ節転移陽性の患者における領域リンパ節照射の有益性が確立しているが、術前補助化学療法後に病理学的にリンパ節転移なし(ypN0)の患者でも有益かは不明だという。米国・AdventHealth Cancer InstituteのEleftherios P. Mamounas氏らは、無作為化第III相試験「NSABP B-51-Radiation Therapy Oncology Group 1304試験」において、術前補助化学療法後に腋窩リンパ節転移陰性となった患者では、術後補助療法として領域リンパ節照射を追加しても、浸潤性乳がんの再発または乳がん死のリスクは低下しないことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年6月5日号で報告された。

高リスク頭頸部がん、CRT+ニボルマブの術後補助療法が20年振りの新たな標準治療に(NIVOPOSTOP)/ASCO2025

 高リスクの局所進行(LA)頭頸部扁平上皮がん(SCCHN)に対する術後の標準治療は、長らく補助療法としての化学放射線療法(CRT)であった。しかし、これらの治療にもかかわらず40%以上の患者で再発が認められ、より効果的な治療法が必要とされている。NIVOPOSTOP試験は、術後CRTにニボルマブを追加した群とCRT単独群を比較した試験である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションにおいて、Le Centre hospitalier universitaire vaudois(スイス)のJean Bourhis氏が本試験の結果を発表した。

高濃度乳房女性の検診、マンモグラフィに追加すべき検査は?/Lancet

 乳がんスクリーニングを受ける高濃度乳房の女性にとって、最も有益な補助的画像検査法は明らかになっていない。英国・ケンブリッジ大学のFiona J. Gilbert氏らは、マンモグラフィ陰性の高濃度乳房の女性における補助的画像検査として、簡易的(abbreviated)MRI(AB-MR)、全自動乳房超音波(Automated Breast Ultrasound System:ABUS)および造影マンモグラフィ(contrast-enhanced mammography:CEM)をデジタルマンモグラフィ(FFDM、標準画像検査法)と比較した無作為化試験「BRAID試験」を行った。中間解析の結果、AB-MRとCEMは、ABUSと比較して浸潤がんの検出率が3倍高く、半分のサイズのがんが検出可能であったことを報告した。著者は、「本検討では、高濃度乳房の女性において、補助的な画像検査はがんの早期発見に結び付く可能性が示されたが、過剰診断の程度は推定されていない」と述べている。Lancet誌2025年5月31日号掲載の報告。

COPDの新たな診断スキーマが有用/JAMA

 呼吸器症状、呼吸器QOL、スパイロメトリーおよびCT画像所見を統合した新たなCOPD診断スキーマによりCOPDと診断された患者は、COPDでないと診断された患者と比較して全死因死亡および呼吸器関連死亡、増悪、急速な肺機能低下のリスクが高いことが、米国・アラバマ大学バーミンガム校のSurya P. Bhatt氏らCOPDGene 2025 Diagnosis Working Group and CanCOLD Investigatorsの研究で明らかとなった。著者は、「この新たなCOPD診断スキーマは、多次元的な評価を統合することで、これまで見逃されてきた呼吸器疾患患者を特定し、呼吸器症状や構造的肺疾患所見のない気流閉塞のみを有する患者を除外できる」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年5月18日号掲載の報告。

乳がん家族歴のある女性の検診、3D vs.2D/JAMA Oncol

 乳がんの家族歴のある女性を対象とした大規模コホート研究において、デジタル乳房トモシンセシス(DBT)を用いた乳がん検診が、従来のデジタルマンモグラフィ(DM)と比べ再検査率が大幅に低下し、特異度が向上したことをオーストラリア・シドニー大学のTong Li氏らが報告した。とくに、第1度近親者に乳がん患者がいる女性や乳腺散在乳房の女性でその効果が顕著で、きわめて高濃度乳房の女性では進行がん率を低下させることが示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2025年5月22日号に掲載。

希少がん患者、新たな放射線治療で副作用なくがんを克服

 米ミシガン州レッドフォード在住のTiffiney Beardさん(46歳)は、2024年4月に唾液腺の希少がんと診断されて以来、困難な道のりが待ち受けていることを覚悟していた。Beardさんが罹患した腺様嚢胞がんは神経に浸潤する傾向があるため、治療の副作用として、倦怠感、顎の痛み、食事や嚥下の困難、味覚の喪失、頭痛、記憶障害などを伴うのが常だからだ。Beardさんの場合、がんが脳につながる神経にまで浸潤していたことが事態をさらに悪化させていた。  Beardさんの担当医は、頭頸部がんに使用するのは米国で初めてとなる高度な放射線治療(陽子線治療)を行った。その結果、治療中にBeardさんに副作用が出ることはなかったという。Beardさんは、「ガムボールほどの大きさの腫瘍の摘出後、合計33回の陽子線治療を受けたが、副作用は全くなく、仕事を休むこともなかった」とニュースリリースで述べている。米コアウェル・ヘルス・ウィリアム・ボーモント大学病院のRohan Deraniyagala氏らが報告したこの治療成功症例の詳細は、「International Journal of Particle Therapy」6月号に掲載された。