放射線科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

MRIで膵臓がんの前駆病変を検出可能か

 膵臓がんは、膵臓自体が体の奥深くに位置しているため、生命を脅かすようになる前の早期段階で検出することは難しいことから、サイレントキラーと呼ばれている。しかし、拡散テンソル画像法(DTI)と呼ばれるMRI画像技術の一種が、膵臓がんのより早期の発見に役立つ可能性のあることが新たな研究で明らかになった。シャンパリモー臨床センター(ポルトガル)の放射線科医であるCarlos Bilreiro氏らによるこの研究結果は、「Investigative Radiology」に12月13日掲載された。研究グループは、これらの結果は膵臓がんリスクがある人の早期診断につながる可能性があると述べている。

「小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療GL」第2版が発刊

 日本癌治療学会編『小児・AYA世代がん患者等の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2024年12月改訂 第2版』が12月20日に発刊された。本書は、「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン 2017年版」をMinds診療ガイドライン作成マニュアル2020に準拠して、7年ぶりに全面改訂された。  2024年版は、女性生殖器、乳腺、泌尿器、小児、造血器、骨軟部、消化器、脳の8つの領域に、新たに肺、耳鼻咽喉・頭頸部、膠原病が加わり11領域をカバーしている。また、従来の性腺毒性分類は、2003年のASCOの分類表以降の国際的な報告を元に最新のJSCO分類として生まれ変わっている。

低リスクDCIS、積極的モニタリングvs.標準治療/JAMA

 低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)に対する積極的モニタリング(6ヵ月ごとに乳房画像検査と身体検査を実施)は、ガイドラインに準拠した治療(手術±放射線治療)と比較して、追跡2年時点の同側乳房浸潤がんの発生率を上昇せず、積極的モニタリングの標準治療に対する非劣性が示された。米国・デューク大学のE. Shelley Hwang氏らCOMET Study Investigatorsが前向き無作為化非劣性試験「COMET試験」の結果を報告した。JAMA誌オンライン版2024年12月12日号掲載の報告。  研究グループは、2017~23年にUS Alliance Cancer Cooperative Groupのクリニック試験地100ヵ所で、ホルモン受容体陽性(HR+)グレード1/2のDCISと新規診断された40歳以上の女性995例を登録して試験を行った。

転移を有する去勢抵抗性前立腺がん、放射線療法の追加は有効か/Lancet

 低腫瘍量のde novo転移を有する去勢感受性前立腺がん(mCSPC)患者の治療において、標準治療+アビラテロンと比較して標準治療+アビラテロンに放射線療法を併用すると、画像上の無増悪生存期間(PFS)と去勢抵抗性前立腺がんのない生存期間(無去勢抵抗性生存期間)が有意に延長するが、全生存期間(OS)の改善は得られないことが、フランス・Institut Gustave RoussyのAlberto Bossi氏らが実施した「PEACE-1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年11月23日号で報告された。

シスプラチン不耐の頭頸部がん患者に最善の治療選択肢は?

 シスプラチンは頭頸部がん患者にとって頼りになる化学療法であるが、ほぼ3分の1の患者はその副作用に耐えられず、治療を中止してしまう。こうした患者に対する最善のセカンドライン治療薬に関して、新たな臨床試験で驚くべき結果が示された。それは、頭頸部がんの治療において、モノクローナル抗体のセツキシマブ(商品名アービタックス)が、より新しい薬である免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブ(商品名イミフィンジ)よりも有効性が高いというものだ。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)クリニカル・トランスレーショナルリサーチ分野のLoren Mell氏らが実施したこの臨床試験の結果は、「The Lancet Oncology」に11月14日掲載された。

心臓MRIによるLGEはLVEFより拡張型心筋症のリスクをより良く予測する(解説:佐田政隆氏)

非虚血性の拡張型心筋症(DCM)患者は心不全や心臓突然死のリスクが高く、植込み型除細動器(ICD)の植え込みで生命予後の改善が期待される。そのため、高リスク症例を正確に同定することは非常に重要であるが、DCM患者のリスク評価は、左室駆出率(LVEF)が基準とされている。しかし、最近はLVEFが保たれた心不全(HFpEF)が増加しており、LVEFが低下した心不全(HFrEF)と同等もしくは予後が悪いという報告もあり、LVEFが本当に心筋症患者のリスク評価に適切なのか疑問視されてもいた。そこで、スイスのUniversity Hospital BaselのEichhorn先生らは、心臓MRI指標と心血管アウトカムとの関連を検討した、総計2万9,687例のDCM患者を含む103件の報告のシステマティックレビュー・メタアナリシスを実施した。遅延造影(LGE)の存在とその程度は、全死亡、心血管死、不整脈イベント、心不全イベントと関連した。一方、LVEFは全死亡、心血管死、不整脈イベントと関連しなかった。非造影T1緩和時間(native T1)の延長は、不整脈イベントや主要心血管イベントと関連したが、心筋の長軸方向の収縮機能の指標であるGLSは心不全イベント、主要心血管イベントとは関連しなかった。

限局型小細胞肺がんへのデュルバルマブ地固め、日本人でも有効(ADRIATIC)/日本肺癌学会

 限局型小細胞肺がん(LD-SCLC)患者を対象とした国際共同第III相無作為化比較試験「ADRIATIC試験」の第1回中間解析において、同時化学放射線療法(cCRT)後のデュルバルマブ地固め療法が全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが報告されている1)。本試験の日本人サブグループ解析の結果について、善家 義貴氏(国立がん研究センター東病院)が第65回日本肺癌学会学術集会で発表した。 ・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験 ・対象:I~III期(I/II期は外科手術不能の患者)でPS0/1のLD-SCLC患者のうち、cCRT後に病勢進行が認められなかった患者730例(PCIの有無は問わない) ・試験群1(デュルバルマブ群):デュルバルマブ(1,500mg、cCRT後1~42日目に開始して4週ごと)を最長24ヵ月 264例(日本人19例)

低~中リスク限局性前立腺がん、体幹部定位放射線治療は有効か/NEJM

 低~中リスクの限局性前立腺がん患者の放射線治療において、従来の分割照射法または中程度の寡分割照射法と比較して、5分割の体幹部定位放射線治療(SBRT)は、生化学的再発または臨床的再発に関して非劣性であり、有効な治療選択肢となる可能性があることが、英国・Royal Marsden HospitalのNicholas van As氏らが実施した「PACE-B試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年10月17日号に掲載された。  PACE-B試験は、限局性前立腺がん患者において、生化学的再発または臨床的再発に関して、従来の分割照射法または中程度の寡分割照射法に対するSBRTの非劣性の検証を目的とする第III相非盲検無作為化対照比較非劣性試験であり、2012年8月~2018年1月に3ヵ国(英国、アイルランド、カナダ)の38施設で患者を登録した(Accurayの助成を受けた)。

切除可能な胃がんに対する術前化学放射線療法の有用性は?(解説:上村直実氏)

日本における胃がん治療は、遠隔臓器やリンパ節への転移がなく、がんの深達度が粘膜層までの場合は内視鏡治療が適応であり、がんが粘膜下層以深に達しているときは通常、外科治療が選択され、手術後の病理組織学的検査の結果で必要に応じて薬物療法が追加されるのが一般的である。なお、術前検査で遠隔臓器への転移がある場合などの切除不能がんには化学療法などの治療法が検討される(日本胃癌学会編『胃癌治療ガイドライン 2021年7月改訂 第6版』)。一方、欧米諸国における胃がん診療は、わが国と大きく異なっている。医療保険制度の違いから内視鏡検査の適応がまったく異なることから内視鏡的切除が可能な早期胃がんの発見は稀であり、胃がんといえば進行がんが大半を占めている。

非虚血性拡張型心筋症、後期ガドリニウム増強が死亡と関連/JAMA

 非虚血性拡張型心筋症(NIDCM)患者では、心臓磁気共鳴(CMR)画像におけるガドリニウム遅延造影(LGE)が全死因死亡、心血管死、不整脈イベント、心不全イベント、主要有害心イベント(MACE)の発生と有意な関連を示すが、左室駆出率(LVEF)は全死因死亡や不整脈イベントとは有意な関連がないことが、スイス・バーゼル大学病院のChristian Eichhorn氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年9月19日号で報告された。