救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:2

院内の騒音でせん妄リスク上昇か/大阪公立大

 病院内の騒音は、患者の睡眠を妨げるだけでなく、せん妄や不安、再入院などのリスクも上昇させる可能性が示された。園田 奈央氏(大阪公立大学大学院看護学研究科)らの研究グループは、病院内の騒音の影響に関するスコーピングレビューを実施し、その結果を報告した。本結果は、Worldviews on Evidence-Based Nursing誌2025年8月号に掲載された。  研究グループは、病院内の騒音が入院患者の健康アウトカムに与える影響を明らかにするため、スコーピングレビューを実施した。本レビューでは、2014年1月〜2023年12月にPubMed、CINAHL Plus、Cochrane Libraryに登録された文献を検索した。また、検索で抽出された文献の参考文献、Google Scholarについてハンドサーチを実施した。キーワード(noise、sound、alarm、hospital、care unit、ward)検索およびハンドサーチで抽出された5,851件の文献から、重複などを除いた4,426件を対象にスクリーニングを実施し、最終的に研究目的に合致した28件の論文を抽出した。

2型糖尿病患者は敗血症リスクが2倍

 2型糖尿病患者は、生命を脅かすこともある敗血症のリスクが2倍に上るとする研究結果が、欧州糖尿病学会年次総会(EASD2025、9月15~19日、オーストリア・ウィーン)で発表された。西オーストラリア大学のWendy Davis氏らの研究によるもので、特に60歳未満の患者はよりリスクが高いという。  研究者らが研究背景として示したデータによると、敗血症に罹患した患者の10%以上は死に至るという。また、2型糖尿病患者は、敗血症による死亡または重篤な状態へ進行するリスクが、糖尿病でない人に比べて2~6倍高いことがこれまでにも報告されている。ただし、最新のデータは限られていた。

次期診療報酬改定では2年目も考慮した改定を強く要望する/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、10月1日に定例の記者会見を開催した。会見では、令和8(2026)年度の診療報酬改定へ向けての医師会からの要望事項などが説明された。また、副会長の茂松 茂人氏(茂松整形外科 院長)が、令和7(2025)年防災功労者内閣総理大臣表彰を日本医師会が受賞したことを報告した。これは令和6(2024)年に発生した能登半島地震に際し、医師会が災害派遣などを通じて人命救助に尽力したことなどが高く評価されたもので、本表彰は、平成8(1996)年の阪神・淡路大震災、平成24(2012)年の東日本大震災に続いて3回目となる。 次期報酬改定では2年目の対応も重要 松本氏は、「医療機関の窮状を踏まえた次期診療報酬改定に向けて」をテーマに、医師会からの要望・提案事項を4点を説明した。 (1)医療の窮状について  診療科別の利益率は、すべての診療科で利益率が悪化している。地域別の利益率も、医業利益率、経常利益ともに地域に関係なくいずれの地域でも低下している。とくに決算期が間近に迫ると利益率が低くなり、経営環境の悪化が鮮明に進んでいることが判明している。さらに近いうちに廃業を考える診療所は約14%にも及んでおり、診療所だけでなく病院についても厳しい経営環境にある。 (2)令和7年の対応不足について  令和7年度分の対応不足は、令和6年度改定で2年目は推計値で対応しなければならないため、今般のように物価・賃金などが急激に高騰している中では、結果として不十分な対応となった。繰り返し医師会から要望している令和8年度診療報酬改定の前に、期中改定を求められているような深刻な状況であり、補助金と診療報酬の両面からの早急な対応が必要。 (3)次期診療報酬改定について  次期診療報酬改定について、今後も物価・賃金などが上昇し続けていくことが予想される中、次期改定では改定2年目についても大胆な対応が求められる。とくに昨今の急激なインフレ下では、議論の進め方や柔軟な改定をする必要が出てきている。財務省は、インフレ下であっても先行きが不明であることから、その対応は極めて抑えた改定にしようとする。そのため改定2年目での乖離が大きくなり、今年実際に生じている大きな問題となっている。物価賃金が大きく上昇した場合については、それに合わせて適切に対応する新たな仕組みの導入の検討を明確化しておく必要があり、方向性としては、大きく2つの方法が考えられる。  1つ目には、改定から2年目は調査から3年間ずれることから、物価・賃金が大きく上昇した場合には、それに応じて適切に対応する新たな仕組みの導入の検討を明確化すること。つまり次の改定までの2年間をしっかりと見据えた推計値を含めた改定水準とすること。  2つ目には、2年目の分は物価・賃金それぞれ基本診療料を中心に機動的に上乗せする新たな仕組みを導入し、明確化すること。つまり2年目の分を2年目に確実に上乗せをするということ。 (4)令和7年度補正予算での対応  令和7年度補正予算での対応、令和8年度診療報酬改定のいずれも真水によって対応が行われなければならない。これまで十数年間にわたり、財源の適正化という名目のもとで医療費は削られ続けてきた。この約10年間で改定率は積み上げていくと約2%しか上昇していない。医療機関の経営はギリギリであり、適正化などの名目により医療費のどこかを削って、財源を捻出するという方法では、もはや経営は成り立たなくなり、このままでは医療は崩壊する。税収は物価が上がれば増え、保険料は人件費が上がれば料率はそのままであっても全体の収入は増える。経済成長の果実を活用し、あくまで財源を純粋に増やす、いわゆる真水による思い切った緊急的な対策を強く提言する。

座席位置で変わる生存率、運転席は重症外傷リスクが最大に

 自動車の座席位置によって生存率、外傷リスクはどう変わるのか?日本の地域中核病院で20年にわたり収集された交通事故患者のデータを解析した研究により、座席位置が死亡率や外傷の重症度と関連することが示された。特に運転席の乗員は後部座席の乗員に比べて院内死亡や重症外傷のリスクが高かったという。研究は神戸大学大学院医学研究科外科系講座災害・救急医学分野の鵜澤佑氏、大野雄康氏らによるもので、詳細は「BMC Emergency Medicine」に7月30日掲載された。  交通事故は社会に大きな経済的負担を及ぼす公衆衛生上の課題である。世界保健機構(WHO)によると、2023年には約119万人が交通事故で死亡したと報告されている。自動車事故に巻き込まれた負傷者の生存率や転帰を改善するためには、死亡率や解剖学的重症度に影響を与える因子を明らかにすることが極めて重要である。中でも、運転席、助手席、後部座席に分類される座席位置は交通事故による死亡の重要な要因と考えられている。しかしながら、この座席位置と死亡率の関連を検証した先行研究では矛盾する結果も報告されており、依然としてその関係は明確ではない。そのような背景から、著者らは後部座席の位置が死亡率および解剖学的重症度の低下と関連しているという仮説を立て、国内の地域中核病院のデータベースを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。

入浴関連死、最もリスクの高い都道府県は?

 日本人は頻繁に入浴する習慣があるため、とくに高齢者では世界で最も溺死率が高い。入浴関連死の予防は公衆衛生上の喫緊の課題となっている。奈良県立医科大学の田井 義彬氏らは、1995年~2020年の日本全国の入浴関連溺死約11万例について調査した。その結果、屋外の低気温が入浴関連死のリスクを高めるだけでなく、そのリスクが温暖な鹿児島県でとくに顕著であることが示された。本研究は、Environmental Health and Preventive Medicine誌2025年号に掲載された。

鎮静下の低酸素血症予防、側臥位vs.仰臥位/BMJ

 低酸素血症は、鎮静中の患者の重篤かつ生命を脅かす可能性のある合併症で、救急診療部や内視鏡検査、入院・外来処置中などさまざまな場面で発生し、緩和医療でも問題となるため、より負担の少ない呼吸法とともに、予防戦略の最適化が不可欠とされる。中国・浙江大学のHui Ye氏らの研究チームは、鎮静中の低酸素血症を回避するための体位として、側臥位と仰臥位の効果を比較する目的で、同国の14施設で多施設共同無作為化対照比較試験を行い、鎮静下の成人患者の体位を側臥位とすることで、安全性を損なわずに低酸素血症の発生率と重症度が有意に軽減し、気道確保介入の必要性も低下したことを明らかにした。BMJ誌2025年8月19日号掲載の報告。

米国の小児におけるインフルエンザ関連急性壊死性脳症(IA-ANE)(解説:寺田教彦氏)

本報告は、米国2023~24年および2024~25年シーズンにおける小児インフルエンザ関連急性壊死性脳症(IA-ANE)の症例シリーズである。IA-ANEは、インフルエンザ脳症(IAE)の重症型で、米国2024~25年シーズンのサーベイランスにおいて小児症例の増加が指摘されていた(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2025 Feb 27)。同レポートでは、小児インフルエンザ関連死亡例の9%がIAEによる死亡と報告され、早期の抗ウイルス薬使用と、必要に応じた集中治療管理、インフルエンザワクチン接種が推奨されていた。

カリフォルニア州では気候変動で救急外来受診数が増加

 気候変動による日々の気温上昇を受けて米カリフォルニア州の救急外来(ED)では、かつてないほどの混雑が予想されることが、新たな研究で示唆された。この研究では、同州では気候変動により主に寒冷関連の死者数が減少するという明るい側面も確認されたものの、暑熱関連の気候変動は怪我や慢性的な健康問題の悪化を招くため、EDを受診する患者が増え、医療システムへの負担が増加することが予想されたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)公衆衛生学分野のCarlos Gould氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に7月30日掲載された。  Gould氏は、「暑さは死に至るほどではないにしても健康に害を及ぼす可能性がある。気温の上昇は、一貫してED受診の増加と関連しているため、死亡率のみを考慮した研究や政策では大きな負担を見落とすことになる」と話している。

小児心停止における人工呼吸の重要性、パンデミックで浮き彫りに

 「子どもを助けたい」。その一心で行うはずの心肺蘇生だが、コロナ流行期では人工呼吸を避ける傾向が広がった。日本の最新研究が、この“ひと呼吸”の差が小児の救命に大きな影響を与えていたことを明らかにした。コロナ流行期では、胸骨圧迫のみの心肺蘇生が増加し、その結果、死亡リスクが高まり、年間で約10人の救えるはずだった命が失われていた可能性が示唆されたという。研究は岡山大学学術研究院医歯薬学域地域救急・災害医療学講座の小原隆史氏、同学域救命救急・災害医学の内藤宏道氏らによるもので、詳細は「Resuscitation」に7月4日掲載された。

終末期介護施設入居者の救急搬送や入院、多くは回避可能

 入院や救急外来(ED)受診は、介護施設入居者、特に重度の障害を抱えているか終末期にある人にとっては大きな負担となり費用もかさむ。しかし、介護施設入居者が病院へ搬送されることは少なくない。このほど新たな研究で、このような脆弱な状態にある介護施設入居者によるED受診の70〜80%、また入院の約3分の1は回避可能であった可能性のあることが示された。米フロリダ・アトランティック大学シュミット医科大学老年医学教授のJoseph Ouslander氏らによるこの研究結果は、「The Journal of the American Medical Directors Association(JAMDA)」7月7日号に掲載された。  Ouslander氏らは、終末期の介護施設入居者が入院に至った原因として多かったのは、肺炎、尿路感染症、敗血症であったが、介護施設での医療と管理の質がもっと良ければ、それらの入院は必要なかったはずだと主張している。同氏は、「これらの健康問題は、施設でのケアを改善するために実行可能な手段があることを明示している。既存のガイドライン、ケアパス、予防戦略を用いれば、これらの問題は適切に管理できる。適切なツールと人員を整えることでED受診や入院の多くは回避可能であり、入居者の苦痛と不必要な医療費の両方を減らすことができる」と述べている。