救急科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:2

マダニによる肉アレルギー関連抗体保有者は想定以上か

 マダニに咬まれることで発症する肉アレルギーとして知られるα-Gal(アルファガル)症候群に関連する抗体を持つ米国人は、これまで考えられていたよりもはるかに多い可能性が、新たな研究で示された。米ノースカロライナ大学チャペルヒル校感染症分野のEleanor Saunders氏らが7月2日付で「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」に報告した研究によると、α-gal IgE抗体陽性率が高い5州では、成人の約4人に1人がこの抗体を保有していることが判明したという。研究グループは、「これらの結果は、α-galに対する抗体を保有していても、必ずしもα-Gal症候群を発症するわけではないことを示している」との見解を示している。

苛立った患者への対応で救急医が疲弊

 救急外来といえば、人気ドラマ『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室(原題:The Pitt)』が思い出されるが、現実の米国の救急外来では、日々のさまざまな出来事によって医師が疲弊し、その結果、医療の質の低下につながる可能性が、新たな研究で示唆された。医師のストレスの大きな要因の一つが、苛立った患者への対応であることが示されたという。米マサチューセッツ大学アマースト校社会心理学教授のLinda Isbell氏らによるこの研究の詳細は、7月12日付で「BMJ Quality & Safety」に掲載された。

SNAP試験:MSSA菌血症に対するセファゾリンの位置付けを変えるエビデンス(解説:小金丸博氏)

MSSA(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus)菌血症に対する治療では、長年、欧米を中心にflucloxacillin、クロキサシリン、nafcillinなどの抗ブドウ球菌用ペニシリン(antistaphylococcal penicillin:ASP)が標準治療として位置付けられてきた。一方、セファゾリンは広く使用されているものの、とくに重症感染症における有効性については、ASPと比較した質の高いエビデンスが十分ではなかった。この長年の臨床的疑問に対して、大規模ランダム化比較試験で答えを示したのがNEJM誌2026年6月18日号に報告された「SNAP試験」である。 本試験はMSSA菌血症患者を対象とした国際共同ランダム化比較試験であり、セファゾリン群671例とflucloxacillinまたはクロキサシリン群670例を比較した。

断水時の熱中症や災害関連死を防ぐポイント/3学会合同記者会見

 2026年8月3日、日本救急医学会、日本災害医学会、日本生気象学会の3学会合同による緊急オンライン記者会見『避難生活における熱中症予防の留意点』が開催された。本会見は、令和8年熊本地震の被災地において、猛暑とライフライン障害(断水・停電)が重なる中、避難所や復旧作業現場での「熱中症」および「災害関連疾病」の予防・対策・処置について、各専門家が最新の知見と緊急提言を発信するために実施された。  被災地での災害関連死を防ぐためには、避難所環境の改善から二次災害(エコノミークラス症候群[深部静脈血栓症]、感染症、誤嚥性肺炎などの発生)予防、そして熱中症対策が今回の災害では重要になる。

働き方改革で研修医のバーンアウトは減ったのか~2万5千人を調査

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時、世界中で医師、とくに臨床研修医においてバーンアウトが大幅に増加した。一方、わが国では、医師の過重労働を減らし健康状態を改善するため、2023年に医師の働き方改革の準備を開始し、2024年4月に施行した。今回、千葉大学/英国・グラスゴー大学の小野 亮平氏らは、COVID-19流行時および国の働き方改革の準備期・施行期における、研修医のバーンアウトと労働環境の経時的変化について、多施設共同反復横断研究で調査した。その結果、臨床研修医のバーンアウトは2020年度に最も高く、その後、仕事への満足度、勤務時間、診療負担の改善に伴い減少したことが示された。BMJ Open誌2026年7月21日号に掲載。

重症外傷患者へのビタミンC投与は死亡や敗血症リスクの低下と関連

 重症外傷患者に高用量のビタミンCを静脈内(IV)投与することで、死亡リスクや敗血症リスクが低下する可能性がある――新たなエビデンスレビューでこのような結果が示された。さらに、ビタミンCのIV投与によって集中治療室(ICU)在室日数や入院日数が短縮する可能性も示唆されたという。英NHS Academic Department of Military Trauma & OrthopedicsのNandesh Patel氏らによるこの研究結果は、6月30日付で「BMJ Military Health」に掲載された。研究グループは、「今回のレビューは、外傷患者の治療においてビタミンCのIV投与が果たす潜在的な役割を支持する、限定的ではあるが肯定的なエビデンスを示している」と記している。

敗血症性ショック早期蘇生における輸液量と昇圧薬のタイミング(解説:寺田教彦氏)

2001年にRiversらがearly goal-directed therapy(EGDT)による死亡率低下を報告して以降、早期輸液を含むプロトコール化された蘇生が広く普及した。一方、その後の観察研究では、正の水分出納と死亡との関連が指摘され、輸液過剰への懸念が高まった。2023年のCLOVERS試験では、1~3Lの輸液を受けた敗血症性低血圧患者において、輸液を制限して昇圧薬を優先する方針と、輸液を優先する方針との間で主要転帰に有意差を認めなかった。また、本研究が公表される前の2026年3月に発表されたSurviving Sepsis Campaign(SSC)2026は、敗血症による低灌流または敗血症性ショックに対して、最初の3時間に少なくとも30mL/kgの晶質液を投与することを条件付きで推奨しているが、エビデンスの確実性は低いとしている。

PSSA菌血症治療の常識は変わるか?(解説:栗原宏氏)

現在のPSSA(Penicillin-Susceptible Staphylococcus aureus)を取り巻く環境は10年前とはかなり変化している。欧米を中心に、かつては稀とされていたPSSAの割合が再増加傾向であることが本研究の背景となっている。PSSAであれば、治療としてペニシリンGは、最も狭域で抗菌活性が高く、内服アモキシシリンへの移行が容易、腎障害・肝障害・静脈炎が少ない可能性があるなど利点が多い。その一方で、低レベルペニシリナーゼ産生菌がPSSAと誤判定されていた場合の治療失敗リスクを踏まえて、抗ブドウ球菌ペニシリン系薬が第一選択とされていた。本研究はPSSAに対して「念のために抗ブドウ球菌ペニシリンを使う」という従来の治療戦略に再考を促す結果となった点で意義が大きい。

夏の理想的な水分補給は「4つのS」で/アボット

 糖尿病管理のための持続グルコース測定器「リブレ」や循環器疾患領域などの医療機器を全世界で開発・販売しているアボットは、夏の熱中症対策と高血糖リスクの関連について、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、「ペットボトル症候群」への警鐘と夏期の糖尿病患者への対応などが解説された。  「『理想的な水分補給』と血糖管理~夏の熱中症対策が“高血糖のリスク”になる?~」をテーマに、川名部 新氏(おばな内科クリニック 院長)が、夏期の脱水予防と血糖管理の重要性について講演した。

熱中症による入院患者、多い服用薬は?/MDV

 高温環境により体温調節機能が破綻して発症する熱中症。今年もこの対策が必要な季節が到来した。昨年までの天気予報では「猛暑日」(35℃以上)の表現が多用されていたが、2026年4月17日に気象庁が最高気温40℃以上の名称を「酷暑日」と正式決定し、これまで以上に熱中症対策の重要性が高まっている。  熱中症の重症例では中枢神経障害や循環不全、急性腎障害(AKI)などの多臓器障害を引き起こし、とくにAKIでは脱水や循環血液量減少、横紋筋融解症などを要因とし、集中治療や腎代替療法を要する場合もある。発症予防はもちろんのこと、重症化予防を行うためには患者背景や併存疾患、服用薬剤から重症化リスクをあらかじめ把握しておくことが鍵になるだろう。