循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:112

FIDELIO-DKD試験-非ステロイド系選択的鉱質コルチコイド受容体拮抗薬finerenoneに、心腎保護効果あり!(解説:石上友章氏)-1340

慢性腎臓病(CKD)診療の究極のゴールは、腎保護と心血管保護の、両立にある。腎機能低下・透析を回避して、長生きできる治療法が、待ち望まれている。高血圧、糖尿病は、CKDのリスクであり、降圧薬、血糖降下薬には、高血圧・糖尿病を修正・軽快することで、間接的にCKDないしDKDの進展抑制が可能である。しかし、降圧薬であるACE阻害薬・ARBの確たる『降圧を超えた臓器保護作用』については、議論の余地があった。レニン・アンジオテンシン(RA)系は、重要な創薬標的であり、これまでさまざまな薬剤が上市されてきた。RA系の最終産物であるアンジオテンシンIIは、腎内作用と、腎外作用があり、副腎を刺激してアルドステロンの分泌を促進することは、主要な腎外作用である。アルドステロンは、11βHSD2存在下でコルチゾールが不活化することで、核内にある鉱質コルチコイド受容体(MR)と結合し、アルドステロン誘導性タンパク質(AIP:aldosterone inducible protein)の遺伝子発現を通して、アルドステロン作用を発揮する。

院外心肺停止・治療抵抗性心室細動へECMOを適応することで救命率・社会復帰率が顕著に改善される(解説:今井靖氏)-1339

今回はLancet誌に報告された興味深い論文を紹介するとともに、この領域の現状と課題について論じたい。院外心肺停止・心室細動の患者において、半数以上の患者は初期ACLS(advanced cardiac life support)に不応性である。今回米国で、院外心肺停止・治療抵抗性心室細動に対してextracorporeal membrane oxygenation(ECMO)を用いた心肺蘇生と標準的ACLSとをランダム化比較する研究が実施された。ミネソタメディカルセンターにおいて、第II相単施設オープン試験として18~75歳の心肺停止・心室細動を対象としている。3回のAEDによる電気的除細動が無効、Lund University Cardiac Arrest System(LUCAS)という機械的心肺蘇生装置を使用、30分以内の移送時間という状況において、患者を、スクラッチカードを用いてランダムに上述の2群に割り付けている。主要エンドポイントは生存退院、副次的エンドポイントは安全、生存、退院後3および6ヵ月目での機能的評価とした。すべての解析はITT解析となっている。2019年8月8日~2020年6月14日の間、36例(平均59歳[36~73歳]、83%男性)の患者が登録された。6例を除外し、30例を半数ずつACLS群とECMO群とに割り付けた(1例は途中で脱落)。結果であるが、生存退院はACLS群では15例中1例(7%、95%信頼区間:1.6~30.2)、ECMO群では14例中6例(43%、95%信頼区間:21.3~67.7)であった。本研究は米国国立心肺血液研究所(National Heart, Lung, and Blood Institute)によって、予定されていた初回中間解析で明らかな有意差がついたと判断され中止となった。30例の登録の段階ですでにECMO群の優位性が示されたためであるが、6ヵ月後についてもECMO群で優れていた。

永続性AFのレートコントロール、ジゴキシンvs.ビソプロロール/JAMA

 永続性心房細動および心不全症状を有する患者において、低用量ジゴキシンまたはビソプロロールによる治療は、6ヵ月時のQOLについて統計学的有意差を示さなかった。英国・バーミンガム大学のDipak Kotecha氏らが、無作為化非盲検臨床試験「Rate Control Therapy Evaluation in Permanent Atrial Fibrillation trial:RATE-AF試験」の結果を報告した。永続性心房細動患者、とくに心不全を合併している患者において、心拍数調節療法の選択を支持するエビデンスはほとんど示されていないが、今回の結果について著者は、「所見は、他のエンドポイントが治療決定のベースとなりうる可能性を支持するものである」と述べている。JAMA誌2020年12月22・29日号掲載の報告。

発作性心房細動に対しては、抗不整脈薬よりもカテーテルアブレーションである(解説:高月誠司氏)-1338

NEJM誌の2020年11月号には心房細動に対するクライオバルーンアブレーションの2本の論文、STOP AF First TrialとEARLY-AF Trialが掲載された。ここでは両試験を比較しながら読んでみよう。両試験とも未治療の発作性心房細動をクライオバルーンによるアブレーション群と抗不整脈薬群に無作為に割り付け、心房細動の再発を比較した。STOP AF First Trial は203例、EARLY-AF Trialは303例を対象とした。STOP AF First Trialは1、3、6、12ヵ月後の12誘導心電図、3~12ヵ月まで週1回そして有症状時に送信する伝送心電図、そして6、12ヵ月後のホルター心電図でフォローしたのに対して、EARLY-AF Trialは全例植込み型心電計を植え込んでフォローした点が異なる。結果的に1年後までの心房細動非発生率は、STOP AF First Trialではクライオバルーン群で74.6%、抗不整脈薬群で45.0%、EARLY-AF Trialではクライオバルーン群で57.1%、抗不整脈薬群で32.2%と、それぞれクライオバルーン群のほうが抗不整脈薬群に比して洞調律維持率は有意に高かった。

ICD/CRT-Dデバイス、謝礼金額の「影響」とは(解説:高月誠司氏)-1337

本研究は植込み型除細動器(ICD)、同心臓再同期療法付き(CRTD)の心臓植込みデバイスの植込み件数とデバイスメーカーが植込み医師に支払った報酬(研究費除く)との関係を調べたものである。米国において4,435人の植込み医師が3年間で計14万5,900人の患者にデバイス植込みを行った。植込み医師の中の4,152人(94%)がデバイスメーカー4社から何らかの報酬(中央値で1,211ドル)を得ていた。そして各医師は最も報酬が多かったメーカーのデバイスを選択する傾向があったという。この報酬自体は違法性のあるものではなく、また結果的に臨床上影響があったかは検証されていない。

循環器科医のためのCOVID-19解説サイト/ライフサイエンス出版

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界の日常を一変させ、12月現在、わが国でも感染者数・重症者数ともに増加し、深刻な状況となっている。  そのような状況のなか、ライフサイエンス出版は、特設サイト「循環器科医のためのCOVID-19超解説」を開設した。  COVID-19と循環器疾患との関連は非常に注目されるトピックである。本サイトでは、わが国を代表する循環器領域の専門家が、「川崎病」「血栓症」「心不全」「高血圧」をテーマに解説している。また、COVID-19は、ウイルス感染に起因する炎症反応が重要なキーワードとなっているため、免疫領域の専門家による解説も予定している。

有害事象にも目をやり、もう一歩進めたPCI適応に関する考察(解説:野間重孝氏)-1332

評者自身がそうであったのだが、察するに多くの方々が果たしてこの論文のどこが新しくてJAMA誌に掲載されるに至ったのだろうかと、当初いぶかしく思われたのではないだろうか。FFRによって患者を選別することにより、虚血が証明された虚血例と虚血が証明されない非虚血例では血管インターベンション(PCI)の成績が異なり、虚血例では予後改善効果が期待できるのに対して、非虚血例ではそのような結果が期待できない。だから医学的側面からも、対費用効果の側面からもFFRを用いた患者の選別は有効であるということは、すでに結論の出た問題として扱われるべきだと考えられているからだ。この論文の新しい点は、こういう観点から一歩進んで、非虚血例に対してPCIを行うことは効果がないばかりではなく、有害であることを示唆したことにある。

機械学習による疾病予測モデルはあまり当たらない(解説:折笠秀樹氏)-1333

フラミンガムスタディデータを使って、心臓病の10年予測モデルが出たのが1998年のことです。私も脳梗塞の再発予測モデルの開発に携わったことがありますが、2012年のことでした。今や予測モデルの研究は枚挙にいとまがないほどです。TRIPOD声明というガイドラインまで出ています。モデル開発にはCoxモデルを用いるのが一般的でしたが、最近では機械学習モデルを使うことも多くなりました。ニューラルネットワークやランダムフォレストなどという手法です。

高用量インフルワクチン、高リスクCVDの死亡改善せず/JAMA

 高リスク心血管疾患患者では、高用量3価不活化インフルエンザワクチンは標準用量4価不活化インフルエンザワクチンと比較して、全死因死亡率や心肺疾患による入院率を低下させないことが、米国・ミネソタ大学のOrly Vardeny氏らが行ったINVESTED試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2020年12月4日号で報告された。インフルエンザは、ワクチン接種への免疫応答が強くない心血管疾患患者の心肺合併症や死亡の割合を一時的に高めるという。高用量のインフルエンザワクチンは、インフルエンザによる疾患のリスクを低減する可能性が示唆されている。

COVID-19による静脈血栓塞栓症のアンケート結果/肺塞栓症研究会

 肺塞栓症研究会と日本静脈学会は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による静脈血栓塞栓症の発症有無に関する緊急アンケートを合同で実施し、総計77施設(1,243例)より回答を得た。その結果、肺塞栓症は5例(0.4%)、静脈血栓塞栓症は7 例(0.6%)に発症していたことが明らかになった。今回のアンケート調査では、COVID-19 症例の中で肺塞栓症を含む静脈血栓塞栓症と診断された症例は欧米に比してかなり少数だった。これを踏まえ、横浜南共済病院の孟 真氏率いる調査事務局の研究者らは、「“発症自体が本当に日本人で少ない”のか、“診断されていないだけ”なのかを判断する事は困難である。