循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:136

デキサメタゾンは小児心臓手術時の重度合併症を抑制せず/JAMA

 人工心肺装置(CPB)を使用する心臓手術を受けた生後12ヵ月以下の乳児において、術中のデキサメタゾン投与はプラセボと比較して、30日以内の重度合併症や死亡のリスクを低減しないことが、ロシア・E. N. Meshalkin国立医療研究センターのVladimir Lomivorotov氏らが実施した「DECISION試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2020年6月23日号に掲載された。米国のデータでは、1998年以降、CPBを伴う心臓手術を受けた先天性心疾患小児の死亡率は約3%まで低下しているが、重度合併症の発生率は30~40%と、高率のままとされる。CPBによって引き起こされる全身性の炎症反応が臓器機能を低下させ、長期の集中治療室(ICU)入室や、入院の長期化をもたらすことが知られている。この全身性炎症反応や合併症の低減を目的に、コルチコステロイドが広く用いられているが、その臨床的有効性は確実ではないという。

トラネキサム酸、消化管出血による死亡を抑制せず/Lancet

 急性期消化管出血の治療において、トラネキサム酸はプラセボに比べ死亡を抑制せず、静脈血栓塞栓症イベント(深部静脈血栓症または肺塞栓症)の発生率が有意に高いことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のIan Roberts氏らが実施した「HALT-IT試験」で示された。研究の詳細は、Lancet誌2020年6月20日号に掲載された。トラネキサム酸は、外科手術による出血を低減し、外傷患者の出血による死亡を抑制することが知られている。また、本試験開始前のCochraneの系統的レビューとメタ解析(7試験、1,654例)では、消化管出血による死亡を低下させる可能性が示唆されていた(統合リスク比[RR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.42~0.89、p=0.01)。一方、メタ解析に含まれた試験はいずれも小規模でバイアスのリスクがあるため、大規模臨床試験による確証が求められていた。

メニューへのカロリー表示が健康や経済にメリット、AHAニュース

 飲食店のメニューにカロリー表示を求める現行の連邦法は、健康的な食事の選択を促し、心血管疾患や糖尿病の患者数の減少に寄与する可能性があるとする研究結果が報告された。このモデリング研究では、人々が飲食店の栄養表示を考慮して注文することによって、2018年から2023年までに心血管疾患を1万4,698件(このうち心血管疾患による死亡は1,575件)、2型糖尿病を2万1,522件回避できると推定された。結果の詳細は米国心臓協会(AHA)が発行する「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」6月4日オンライン版に発表された。

サクビトリルバルサルタンが製造販売承認を取得/ノバルティス ファーマ

 ノバルティスファーマは、6月29日にアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト)について、「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」を効能・効果として製造販売承認を取得した。  今回承認されたサクビトリルバルサルタンは、心不全の病態を悪化させる神経体液性因子の1つであるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰な活性化を抑制するとともに、RAASと代償的に作用する内因性のナトリウム利尿ペプチド系を増強し、神経体液性因子のバランス破綻を是正することを一剤で可能にした、新しいアプローチの薬剤。

DES留置のACS、短期DAPT後にチカグレロル単剤で予後改善/JAMA

 薬剤溶出ステント(DES)留置術を受けた急性冠症候群(ACS)患者では、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を3ヵ月間施行後にチカグレロル単剤療法に切り替えるアプローチは、12ヵ月間のチカグレロルベースのDAPTと比較して、1年後の大出血と心血管イベントの複合アウトカムの発生をわずかに低減し、統計学的に有意な改善が得られることが、韓国・延世大学校医科大学のByeong-Keuk Kim氏ら「TICO試験」の研究グループによって示された。研究の成果は、JAMA誌2020年6月16日号に掲載された。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)としてDES留置術を受けたACS患者では、アスピリン+P2Y12阻害薬による短期DAPT施行後にアスピリンを中止することで、出血リスクが軽減するとされる。一方、新世代DES留置術を受けたACS患者において、アスピリン中止後のチカグレロル単剤療法に関する検討は、これまで行われていなかったという。

著者ら自身が不満なのではないのか?(解説:野間重孝氏)-1251

患者アドヒアランスは単純に何かの実施率(この場合リハビリテーション実施率、服薬率)で評価できるものなのだろうか。まず少し理屈っぽくなってしまうが、コンプライアンス(compliance)とアドヒアランス(adherence)の違いを考えてみたいと思う。コンプライアンスもアドヒアランスもいずれも規則や指示に従うことを意味するが、コンプライアンスが言われたことを守るという受け身の意味合いが強いのに対して、アドヒアランスは興味を持って積極的に参加しようという意味合いが強い言葉である。近年は医師・薬剤師に言われたことを守るだけでなく、患者自身が積極的に治療に参加することが重要視されるようになり、数年前までは服薬についていえば「服薬コンプライアンス」といわれていたものが、昨今は「服薬アドヒアランス」と呼ばれるように変わってきた。

フレイルの健診に有用なテキスト公開/国立長寿医療研究センター

 2020年6月、健康長寿教室テキスト第2版が国立長寿医療研究センターの老年学・社会科学研究センターのホームページ上に公開された。これは同施設のフレイル予防医学研究室(室長:佐竹 昭介氏)が手がけたもので、2014年に初版が発刊、6年ぶりの改訂となる。  健康長寿教室テキストは介護予防に役立てるためのパンフレットで、フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドローム(通称:ロコモ)に関する基本的概念に加え、実践編として「お口の体操」「運動」「フレイルや低栄養を予防するための食事の工夫やレシピ」などが掲載されている。このほかにも、最新の話題として、新型コロナなどによる外出制限時の対策にも応用できる内容が紹介されている。なお、健康長寿教室テキストは無料でダウンロードして使えるため、後期高齢者健康診査(いわゆるフレイルの健診)、スタッフ研修、敬老会の資料としても有用である。

生活習慣病患者の2割が通院せず自粛/血糖トレンド委員会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、生活習慣病患者の多くが外出を自粛したことに伴い、医療機関への通院を控えた事例が散見される。では、実際どの程度の通院などの自粛がされていたのだろう。  血糖コントロールの重要性、および「血糖トレンド」の概念とその活用方法について、医学的、学術的および患者視点でわかりやすく正確な情報発信を行うこと目的とした委員会である「血糖トレンド委員会」(代表世話人: 西村 理明氏[東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科 主任教授])は、生活習慣病患者にCOVID-19がどのような影響を与えたのかを分析するため調査を実施し、今回その結果を発表した。

新型コロナで低カリウム血症、その原因は?

 中国・温州医科大学のDong Chen氏らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者における治療転帰との関連性を見いだすため、低カリウム血症の有病率、原因、および臨床的影響を調査する目的で研究を行った。その結果、COVID-19患者において低カリウム血症の有病率が高いこと、さらにその原因として、新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)がアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合することにより、ACE2(レニン-アンジオテンシン系を抑制)が分解され、レニン-アンジオテンシン系が活性化して持続的に腎からカリウムが排泄されることが示唆された。JAMA Network open誌2020年6月1日号掲載の報告。