ノバルティスファーマは、6月29日にアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(商品名:エンレスト)について、「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」を効能・効果として製造販売承認を取得した。
エナラプリルを上回る生命予後を改善
今回承認されたサクビトリルバルサルタンは、心不全の病態を悪化させる神経体液性因子の1つであるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰な活性化を抑制するとともに、RAASと代償的に作用する内因性のナトリウム利尿ペプチド系を増強し、神経体液性因子のバランス破綻を是正することを1剤で可能にした、新しいアプローチの薬剤。
本剤は、左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者を対象にした海外第III相PARADIGM-HF試験において、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬であるエナラプリルと比較し、心血管死および心不全による入院からなる複合エンドポイントのリスクを有意に20%減少させた
1)。エナラプリルを上回る生命予後改善を統計学的な差を持って示した薬剤は、本剤が初めてであり、海外での試験結果を踏まえ、日本人HFrEF患者を対象に国内第III相PARALLEL-HF試験を実施し、主にこれら2つの試験の結果に基づき製造販売承認を取得したものである。
なお、わが国での医療従事者への本剤の情報提供活動は、ノバルティス ファーマと大塚製薬が、共同で実施していく。発売日などは未定。
エンレストの製品概要
■製品名:エンレスト錠50mg、100mg、200mg
■一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物
■効能又は効果:
慢性心不全
ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
■用法及び用量:
通常、成人にはサクビトリルバルサルタンとして1回50mgを開始用量として1日2回経口投与する。忍容性が認められる場合は、2~4週間の間隔で段階的に1回200mgまで増量する。1回投与量は50mg、100mgまたは200mgとし、いずれの投与量においても1日2回経口投与する。なお、忍容性に応じて適宜減量する。
(ケアネット 稲川 進)