感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

病院・施設の除菌対策、MDRO保菌や感染症入院が低下/JAMA

 地域内で協力して行った、病院の患者(接触感染予防で入院した患者に限定)と長期介護施設入居者に対するクロルヘキシジン浴(清拭・シャワーを含む)とヨードホール消毒薬の経鼻投与の除菌対策(universal decolonization)により、多剤耐性菌(MDRO)の保菌者割合、感染症の発生率、感染関連の入院率、入院関連費用および入院死亡率が低下したことが示された。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のGabrielle M. Gussin氏らが、地域内35ヵ所の施設で行った医療の質向上研究の結果を報告した。MDROによる感染症は、罹患率、死亡率、入院の長期化および費用の増大と関連している。地域介入によって、MDRO保菌および関連する感染症の軽減が図られる可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2024年4月1日号掲載の報告。

次世代コロナワクチン、第III相試験で良好な中間結果を達成/モデルナ

 米国・Moderna社は3月26日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「スパイクバックス」について、次世代の「mRNA-1283」が、第III相試験の結果、同社の既存のオミクロン株対応2価(起源株/オミクロン株BA.4-5)ワクチン「mRNA-1273.222」と比較して、SARS-CoV-2に対するより高い免疫応答の誘導を示したこと発表した。この次世代コロナワクチン「mRNA-1283」は、より長い保存期間と保存上の利点をもたらす可能性があり、インフルエンザとCOVID-19の混合ワクチン「mRNA-1083」の構成要素となる予定だ。  次世代コロナワクチン「mRNA-1283」と既存の「mRNA-1273.222」とを比較した第III相ピボタル試験「NextCOVE試験(NCT05815498)」は、米国、英国、カナダの12歳以上の約1万1,400人を対象とした無作為化観察者盲検アクティブ対照試験だ。本試験の結果、「mRNA-1283」は、SARS-CoV-2のオミクロンBA.4/BA.5および起源株の両方に対して、より高い免疫応答を引き起こすことが認められた。とくにこの免疫応答は、COVID-19による重篤な転帰リスクが最も高い65歳以上の参加者に顕著にみられたという。主な局所有害事象は注射部位の疼痛で、主な全身性の有害事象は頭痛、疲労、筋肉痛、悪寒だった。

新規2型経口生ポリオワクチン(nOPV2)の有効性と安全性(解説:寺田教彦氏)

ポリオ(急性灰白髄炎)は、ポリオウイルスが中枢神経に感染し、運動神経細胞を不可逆的に障害することで弛緩性麻痺等を生じる感染症で、主に5歳未満の小児に好発するため「小児麻痺」とも呼ばれる感染症である。ウイルスは主に糞口感染で人から人に感染するが、そのほかに汚染された水や食べ物を介して感染することもあり、治療薬は存在しないため、ワクチン接種がポリオの感染対策において重要とされる。ポリオウイルスには、3つの血清型(1、2、3型)があり、1988年に世界保健機関がワクチン接種によるポリオ根絶計画を提唱し、2015年と2019年に野生型ポリオウイルス2型と3型がそれぞれ根絶認定された。残る野生型ポリオウイルス1型が流行しているのはパキスタンとアフガニスタンのみである。

女性に対してもHIV曝露前予防(PrEP)成否の鍵は服薬率(解説:岡慎一氏)

 HIV感染リスクのある人が予防薬を飲むことにより感染を防ぐ(PrEP)取り組みが、試験的に行われていたのは2010年前後である。2012年には、米国でPrEPはHIV感染予防に有効として正式に承認され、その後世界中でその研究が進んだ。2024年4月現在PrEPが承認されていない国は、先進国では日本のみである(12年遅れで日本でもやっと薬事承認される可能性が出てきている)。  感染リスクの高い集団として、まず予防投薬の対象になったのが肛門性交を行う男性同性愛者(MSM)と、膣性交を行う性産業従事者(CSW)の女性であった。MSMは、自ら感染リスクが高いことと認知している人が多いため、多くの臨床試験においてPrEPの有効性は高かった。一方、CSWのPrEP有効率は、MSMに比べるとはるかに低く、プラセボ群と比べてもほとんど差のない試験結果まであった。その原因として考えられていた理由は2つあった。

ベイフォータス、新生児および乳幼児のRSウイルス発症抑制・予防にて製造販売承認取得/AZ

 アストラゼネカとサノフィは2024年3月27日付のプレスリリースにて、長時間作用型モノクローナル抗体であるベイフォータス(一般名:ニルセビマブ[遺伝子組換え])が「生後初回または2回目のRS(Respiratory Syncytial)ウイルス感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児、乳児および幼児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制」ならびに「生後初回のRSウイルス感染流行期の前出以外のすべての新生児および乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防」を適応として、3月26日に日本における製造販売承認を取得したことを発表した。

再発性尿路感染症、治療後も続く痛みの原因を解明か

 尿路感染症(UTI)の再発を繰り返す人は、抗菌薬による治療後も骨盤部位の痛みや頻尿が続くことが多いが、その原因は不明だった。しかし、米デューク大学のByron Hayes氏らが実施した研究で、UTIの発症を繰り返すことで膀胱内に非常に感度の高い神経細胞が過剰に増殖することが、これらの症状を引き起こしている可能性のあることが明らかになった。この研究結果の詳細は、「Science Immunology」に3月1日掲載された。  この研究でHayes氏らは、尿検査では陰性であるが痛みが残存する再発性UTI患者とUTIではない対照の膀胱生検を行い、痛みや炎症の調節に関与する神経ペプチドのサブスタンスP(SP)レベルについて比較した。その結果、再発性UTI患者では対照に比べて、粘膜固有層でのSPレベルが有意に高いことが明らかになった。尿検査でも、再発性UTI患者ではSPレベルが高いことが示された。これらのことから、再発性UTI患者では感覚神経が高度に活性化しており、それが長引く痛みや頻尿の原因である可能性の高いことがうかがわれた。

モデルナのコロナワクチン、通常承認を取得し、引き続き供給

 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンを提供するモデルナは、2024年3月29日付のプレスリリースで、特例承認を受けていた「スパイクバックス筋注」の通常承認を3月27日付で取得したと発表した。  なお厚生労働省によると、2024年4月1日以降、65歳以上の人および60~64歳で対象となる人には、新型コロナウイルス感染症の重症化予防を目的として秋冬に自治体による定期接種が行われ、費用は原則有料となる。ただし、定期接種以外の時期であっても接種を希望するすべての人が、自費による任意接種が可能である。

抗IL-23自己抗体が日和見感染と関連/NEJM

 マイコバクテリア感染、細菌感染、真菌感染を有する患者では、抗インターロイキン-23中和抗体の存在が持続性の重症日和見感染と関連しており、その中和作用の強度が感染症の重症度と相関することが、米国国立アレルギー・感染症研究所のAristine Cheng氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年3月21・28日号に掲載された。  研究グループは、日和見感染において抗インターロイキン-23が役割を担っている可能性を検証する目的で検討を行った(米国国立アレルギー・感染症研究所などの助成を受けた)。

コロナ後遺症は月経異常、QOLやメンタルヘルスに影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した人のうち、約3人に1人が悩まされるといわれる「コロナ後遺症(Long COVID)」。新たに、コロナ後遺症のある18~50歳の女性を対象とする研究が行われた。その結果、約20%の女性がさまざまな月経異常を訴え、それに伴いQOLやメンタルヘルスが悪化していることが明らかとなった。岡山大学病院 総合内科・総合診療科の櫻田泰江氏、大塚文男氏らによる研究であり、詳細は「Journal of Psychosomatic Obstetrics and Gynecology」に1月25日掲載された。  コロナ後遺症の症状は多岐にわたり、オミクロン株の流行期には、倦怠感、頭痛、不眠が増加傾向であると報告されている。また、女性の健康に焦点を当てた最近の研究では、COVID-19の流行が女性の月経にさまざまな悪影響を及ぼしていることなども示されている。そこで著者らは、日本人の女性を対象として、コロナ後遺症としての月経異常の臨床的特徴を明らかにする研究を行った。

Long COVIDの原因は高レベルのサイトカイン産生?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状(long COVID)が生じている患者では、通常はウイルスの除去に伴い産生されなくなるサイトカインの一種であるインターフェロン(IFN)-γが、長期にわたって高レベルで産生され続けていることが明らかになった。研究グループは、これがlong COVIDの根本的なメカニズムである可能性があると述べている。英ケンブリッジ大学医学部およびケンブリッジ治療免疫学・感染症研究所のBenjamin Krishna氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に2月21日掲載された。