感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:7

重症敗血症へのβ-ラクタム系薬投与、持続と間欠の比較(BLING III)/JAMA

 重症敗血症患者に対するβ-ラクタム系抗菌薬による治療では、間欠投与と比較して持続投与は、90日の時点での死亡率に有意差を認めないことが、オーストラリア・Royal Brisbane and Women's HospitalのJoel M. Dulhunty氏らが実施した「BLING III試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年6月12日号で報告された。  BLING III試験は、7ヵ国の104の集中治療室(ICU)で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2018年3月~2023年1月に参加者を登録し、2023年4月に90日間の追跡を完了した(オーストラリア・国立保健医療研究評議会などの助成を受けた)。

米国アカデミー、Long COVIDの新たな定義を発表

 米国科学・工学・医学アカデミー(NASEM)※は6月11日、「Long COVIDの定義:深刻な結果をもたらす慢性の全身性疾患(A Long COVID Definition A Chronic, Systemic Disease State with Profound Consequences)」を発表した。Long COVID(コロナ罹患後症状、コロナ後遺症)の定義は、これまで世界保健機構(WHO)や米国疾病予防管理センター(CDC)などから暫定的な定義や用語が提案されていたが、共通のものは確立されていなかった。そのため、戦略準備対応局(ASPR)と保健次官補室(OASH)がNASEMに要請し、コンセンサスの取れたLong COVIDの定義が策定された。全166ページの報告書となっている。本定義は、Long COVIDの一貫した診断、記録、治療を支援するために策定された。

重症敗血症へのβ-ラクタム系薬、持続投与vs.間欠投与~メタ解析/JAMA

 敗血症または敗血症性ショックでICUに入院中の重症成人患者において、β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与は間欠点滴投与と比較し、90日死亡リスクの低下と関連していることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のMohd H. Abdul-Aziz氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果で示された。β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与が、敗血症または敗血症性ショックの重症成人患者において臨床的に重要な転帰を改善するかどうかはわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、臨床医が敗血症および敗血症性ショックの管理における標準治療として持続点滴投与を考慮すべきことを示している」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年6月12日号掲載の報告。

飛行機でのコロナ感染リスク、マスクの効果が明らかに~メタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの拡大は、航空機の利用も主な要因の1つとなったため、各国で渡航制限が行われた。航空業界は2023年末までに回復したものの、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染の多い時期は毎年発生しており注意が必要だ。米国・スタンフォード大学のDiana Zhao氏らは、ワクチン導入前のCOVID-19パンデミック時の民間航空機の飛行時間とSARS-CoV-2感染に関するシステマティックレビューとメタ解析を実施した。

抹茶うがいが歯周病に有効か

 抹茶には、歯周病を抑える効果があるとする研究結果を、日本大学松戸歯学部と国立感染症研究所の研究グループが発表した。実験室での実験で、抹茶には歯周病の主な原因菌であるPorphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)の増殖を抑制する効果のあることが明らかになり、人間を対象にした臨床試験でも、抹茶でうがいをした人では、口腔内のP. gingivalisの数が介入前と比べて減少することが確認された。国立感染症研究所細菌第一部口腔細菌感染症室の中尾龍馬氏らによるこの研究結果は、「Microbiology Spectrum」に5月21日掲載された。

モデルナ・ジャパン、RSウイルスワクチンを承認申請

 2024年5月30日、モデルナ・ジャパン株式会社は、60歳以上の成人を対象としたRSウイルス(RSV)感染症予防のためのmRNAワクチン「mRNA-1345」の製造販売承認を厚生労働省に申請したと発表した。  RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus、RSV)は、高い感染力を持つ呼吸器ウイルスで、感染者の咳やくしゃみ、またはウイルスが付着した手や物体に触れることで伝播する。感染症状は、一般的な風邪の症状から始まり、進行すると、とくに脆弱な乳児や高齢者においては、呼吸困難や入院、最悪の場合は死亡に至ることもある。

日本における市中感染と院内感染の罹患率と死亡率~全国7千万例超のデータ

 細菌および真菌感染症の罹患率や死亡率の現状と年次傾向について、市中感染と院内感染の観点から報告した研究はほとんどない。今回、千葉大学の高橋 希氏らが日本の全国保険請求データベースに登録された7千万例超の入院患者のデータを調べたところ、院内死亡率は院内感染のほうが市中感染よりも有意に高かったが、両群とも死亡率は低下傾向であることが示された。BMC Infectious Diseases誌2024年5月23日号に掲載。

致死率がより高いエムポックスウイルスの感染がコンゴで拡大

 コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)は、エムポックス(サル痘)ウイルス(MPXV)の感染者数の記録的な増加に直面している。その背景にあるのは、2022年に欧米で感染が拡大した型のMPXVよりも致死率が高いクレード(系統群)のウイルスである「クレードⅠ」の発生だ。米疾病対策センター(CDC)のChristina Hutson氏らは、「Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)」5月16日号に掲載された報告書で、「クレードⅠのコンゴでの感染拡大は、このウイルスが国外にも拡大する可能性を懸念させるものであり、ウイルスを封じ込めるためのコンゴの取り組みを全世界で協調的かつ緊急に支援することの重要性を示している」と主張している。

INSPIRE Pneumonia Trial:肺炎に対する抗菌薬選択改善を促すオーダーエントリーシステム(解説:小金丸博氏)

肺炎は入院を要する最も一般的な感染症であり、米国では毎年150万人以上の成人が肺炎で入院している。肺炎で入院した患者の約半数で不必要に広域なスペクトラムの抗菌薬を投与されていると推定されており、広域抗菌薬の過剰使用を抑制するための効果的な戦略を特定することが求められている。今回、患者ごとの多剤耐性菌感染リスク推定値を提供するコンピュータ化されたプロバイダーオーダーエントリー(CPOE)システムが、非重症肺炎で入院した患者における経験的広域抗菌薬の使用を減らすことができるかを検討したランダム化比較試験の結果がJAMA誌オンライン版2024年4月19日号に報告された。

2024年度コロナワクチン、製造株はJN.1系統に決定/厚労省

 厚生労働省は5月29日に、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会 季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会を開催し、2024年度秋冬の新型コロナワクチンの定期接種で使用するワクチンの抗原構成について、JN.1系統を使用することを決定した。  秋冬の新型コロナワクチンの抗原構成をJN.1系統とする決定は、世界保健機関(WHO)の推奨の現状や、製薬企業によるワクチン開発の状況を踏まえて行われた。  WHOのTAG-CO-VAC(Technical Advisory Group on COVID-19 Vaccine Composition)が2024年4月発表した声明において、JN.1系統およびその下位系統へのより高い中和抗体の誘導を目指すことが推奨されている。