内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:1

中高年の慢性不眠症、太極拳は有効か/BMJ

 中国・香港大学のParco M. Siu氏らは、中高年者の慢性不眠症の管理において、太極拳は第1選択治療とされる「不眠症に対する認知行動療法(cognitive behavioural therapy for insomnia:CBT-I)」と比較して、3ヵ月の時点(介入終了時)では不眠症の改善効果が劣ったが、15ヵ月後には非劣性を達成することを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年11月26日号に掲載された。香港の単施設の無作為化非劣性試験 本研究は、香港の単施設で実施した評価者盲検無作為化非劣性試験であり、2020年5月~2022年7月の期間に参加者を募集した(香港大学General Research Fund of Research Grants Councilの助成を受けた)。 『精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)』に基づき慢性不眠症と診断された年齢50歳以上の中国人を対象とした。

SGLT2阻害薬の投与により自己免疫性リウマチ性疾患の発症が抑制される?(解説:住谷哲氏)

糖尿病合併症に慢性炎症が深く関与していることはよく知られている。そこで、慢性炎症を抑制する作用のある血糖降下薬があれば、それを選択するのが合併症予防のためには有用と考えられる。SGLT2阻害薬が糖尿病合併症である腎症や心不全の予後を改善することは現在ではほぼ確立しているが、その想定されているメカニズムの1つにSGLT2阻害薬の抗炎症作用がある1)。慢性炎症の持続が自己免疫性リウマチ性疾患の発症につながるのかは不明であるが、著者らはSGLT2阻害薬の抗炎症作用に着目して、SGLT2阻害薬の投与が自己免疫性リウマチ性疾患の発症抑制と関連するか否かをSU薬を対照として検討した。

「まずは金属除去」ではない? 金属アレルギー診療と管理の手引きを公開/日本アレルギー学会

 本邦では初となる金属アレルギーに特化した手引き『金属アレルギー診療と管理の手引き 2025』1)が、2025年9月26日に公開された。そこで、手引きの検討委員会の代表を務める矢上 晶子氏(藤田医科大学ばんたね病院 総合アレルギー科 教授)が、第74回日本アレルギー学会学術大会(10月24~26日)において、手引きの作成の背景と概要を紹介した。なお、手引きはアレルギーポータルの医療従事者向けページで公開されている。  本邦では「アレルギー疾患対策基本法」が定められており、喘息やアトピー性皮膚炎などの6疾患が重点的な対象疾患となっている。しかし、現状では金属アレルギーは対象疾患に含まれていない。この理由について、矢上氏は「若年で発症し、後年に金属製材料を使用するときに苦慮する方がいる」「患者は複数の診療科を受診するが連携した診療体制が不十分」「患者数が未知」といった背景があったと述べる。そこで「厚生労働科学研究事業で、それらを補う情報をまとめたほうが良いのではないかということで研究が始まり、疫学調査結果や検査法などをまとめて、手引きを作成する方向となった」とのことだ。これらの研究成果を集約した『金属アレルギー診療と管理の手引き2025』には、診療の流れや検査・管理の要点、多診療科・多職種が連携した診療体制の構築の重要性などが記載されている。

猛暑は高齢糖尿病患者にとって致命的となり得る

 極端に暑い日は、心臓病や糖尿病を持つ高齢者の死亡リスクが高くなることを示唆するデータが報告された。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイビッド・ゲフィン医学部のEvan Shannon氏らが、同州の退役軍人の医療記録などを解析した研究の結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に11月25日掲載された。  この研究の結果、猛暑による死亡リスクへの影響は、居住環境により大きく異なることも明らかになった。例えば、低所得地域に暮らす高齢の退役軍人は、猛暑日に死亡するリスクが涼しい日に比べて44%高くなることが示された。一方、高所得地域に居住する退役軍人の場合、涼しい日との死亡リスクの差は12%の上昇にとどまっていた。論文の筆頭著者であるShannon氏は、「本研究では退役軍人のみのデータを解析に用いたが、得られた結果は退役軍人以外にも当てはまるのではないか」と話している。

認知症リスク低下と関連しているワクチン接種は?

 高齢者で多くみられる認知症は、公衆衛生上の優先事項である。しかし、認知症に対するワクチン接種の有用性については、十分に解明されていない。イタリア・National Research CouncilのStefania Maggi氏らは、一般的な成人向けのワクチン接種が認知症リスク低減と関連しているかを評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Age and Ageing誌2025年10月30日号の報告。2025年1月1日までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Scienceよりシステマティックに検索した。対象研究は、50歳以上の成人において、ワクチン接種を受けた人と受けていない人の間で認知症および軽度認知障害(MCI)の発症率を比較した観察研究とした。4人の独立したレビュアーがデータを抽出し、ニューカッスル・オタワ尺度を用いて研究の質を評価した。

Long COVIDの経過は8つのタイプに分かれる

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状、いわゆるlong COVIDは、一般に、新型コロナウイルスへの感染後に、疲労感やブレインフォグ、めまい、動悸などのさまざまな症状が3カ月以上持続する慢性疾患とされている。このほど新たな研究で、long COVIDの経過は、症状の重症度、持続期間、経過(改善傾向か悪化傾向か)により8つのタイプに分類されることが示唆された。米ハーバード大学医学大学院のTanayott Thaweethai氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Communications」に11月17日掲載された。  Thaweethai氏らはこの研究で、RECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)イニシアチブへの参加成人3,659人(女性69%、99.6%は2021年12月以降のオミクロン株流行期に感染)を対象に、感染の3〜15カ月後に評価したlong COVIDの症状スコアに基づき、患者の縦断的経過パターンを解析した。対象者のうち、3,280人は最初の新型コロナウイルス感染から30日以内に試験に登録した急性期患者、残る379人は登録時には未感染であったがその後に感染したクロスオーバー群であった。

スタチン使用は本当にうつ病リスクを低下させるのか?

 これまで、スタチンのうつ病に対する潜在的な影響については調査が行われているものの、そのエビデンスは依然として一貫していない。台北医学大学のPei-Yun Tsai氏らは、スタチン使用とうつ病の関連性を明らかにするため、最新のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。General Hospital Psychiatry誌2025年11〜12月号の報告。  2025年9月11日までに公表された研究をPubMed、the Cochrane Library、EMBASEより、言語制限なしでシステマティックに検索した。また、対象論文のリファレンスリストの検討を行った。プールされたオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)の算出には、ランダム効果モデルを用いた。

危険なOTCが国内流通か、海外での規制や死亡例は

 現在、政府が『骨太の方針2025』で言及した「OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しの在り方」についての議論が活発化している。この議論は今に始まったことではなく、OTC医薬品の自己判断による服用が医療アクセス機会の喪失を招き、受診抑制による重症化・救急搬送の増加といった長期的な医療問題に発展する可能性をはらんでいるため、30年以上前からくすぶり続けている問題である。さらに、日本社会薬学会第43年会で報告された国内の疫学研究「頭痛専門外来患者における市販薬の鎮痛薬服用状況:問診票を用いた記述疫学研究」からは、OTC類似薬の利用率増加が依存性成分の摂取促進に繋がりかねないことが明らかにされた(参照:解熱鎮痛薬による頭痛誘発、その原因成分とは)。

経口orforglipron、2型糖尿病の肥満にも有効/Lancet

 2型糖尿病の過体重/肥満成人において、生活習慣改善の補助的介入としての経口低分子GLP-1受容体作動薬orforglipronの1日1回投与は、プラセボと比較して体重減少効果は統計学的に優れ、安全性プロファイルは他のGLP-1受容体作動薬と同等であったことが示された。米国・University of Texas McGovern Medical SchoolのDeborah B. Horn氏らATTAIN-2 Trial Investigatorsが、第III相の多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「ATTAIN-2試験」の結果を報告した。肥満は2型糖尿病およびその合併症と深く関わる。非糖尿病の肥満成人を対象としたATTAIN-1試験では、orforglipron 36mgの1日1回投与による治療で72週後の体重が最大12.4%減少し、心代謝リスク因子が改善したことが示されていた。Lancet誌オンライン版2025年11月20日号掲載の報告。

パラチフスAに対するワクチンの安全性、有効性と免疫原性(解説:寺田教彦氏)

パラチフスA菌は、世界で年間200万例以上の症例が推定され、腸チフス(Salmonella Typhi)と共に、衛生水準の整っていない地域で依然として重要な公衆衛生上の課題となっている(John J, et al. Burden of Typhoid and Paratyphoid Fever in India. N Engl J Med. 2023;388:1491-1500.)。日本における腸チフスおよびパラチフスの報告数は年間20~30例と少なく、7~9割が輸入症例だが、渡航医療の観点では一定の診療機会が存在する。日本の渡航前外来では、腸チフスワクチンとしてVi多糖体ワクチンが承認されて以降、南・東南アジアを中心とする流行地域への渡航者を対象に接種が行われている。