脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:10

心筋梗塞の血栓溶解療法の時代を思い出す(解説:後藤信哉氏)

1988年のLancet誌に掲載されたSecond International Study of Infarct Survival (ISIS-2) trialは、心筋梗塞の診療に劇的インパクトをもたらした。抗血小板薬アスピリン、線溶薬ストレプトキナーゼはともに急性心筋梗塞の院内死亡率を25%程度減少させ、両者の併用により死亡率はほぼ半減した。アスピリンはそのまま世界の標準治療になった。ストレプトキナーゼは重篤な出血合併症を増加させたため、出血リスクの少ない薬剤開発が模索された。ストレプトキナーゼにはフィブリン選択性がなかった。体内のフィブリンに結合し、プラスミン産生効果を発揮するt-PAに期待が集まった。

血管性認知症に対する薬物療法〜ネットワークメタ解析

 血管性認知症は、代表的な認知症の1つであり、負担やコストが大きい。臨床医にとって、薬物療法が第1選択治療となることが多いが、利用可能な複数の治療オプションを比較した情報は、十分ではない。中国・四川大学のChun Dang氏らは、血管性認知症に対する各種薬物療法の有用性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Frontiers in Pharmacology誌2024年8月22日号の報告。  血管性認知症成人患者を対象としたランダム化比較試験(RCT)を、PubMed、Cochrane Library、EMBASE、Web of Science、OPENGREY、ClinicalTrials.gov、Wanfang Data、CNKIよりシステマティックに検索し、ネットワークメタ解析を実施した。主要アウトカムには、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア、ADLスコア、副作用発生率の変化を含めた。介入戦略の有効性および安全性は、すべてRソフトウェアで生成されたフォレストプロット、累積順位曲線下面積(SUCRA)、ファンネルプロットを使用して包括的に分析した。

脳刺激療法で頭部外傷後の手や腕の機能が回復か

 脳卒中や外傷性脳損傷(TBI)で手や腕の機能を失った患者に対し、脳深部刺激療法(DBS)を施行することで一部の機能が回復する可能性のあることが、米ピッツバーグ大学物理療法学助教のElvira Pirondini氏らの研究で示された。この研究結果は、「Nature Communications」に10月1日掲載された。  DBSは、手術で脳に電極を植え込み、特定の活動を制御している脳領域に電気信号を送って刺激を与える治療法で、パーキンソン病による運動障害の治療目的で施行されることが多い。Pirondini氏は、「腕や手の麻痺は、世界の何百万人もの人々の生活の質(QOL)に大きな影響を与えている。現在、脳卒中やTBIを経験した患者に対する効果的な解決策はないが、脳を刺激して上肢の運動機能を改善するニューロテクノロジーへの関心が高まりつつある」と説明する。

貧血を伴う急性脳損傷患者への輸血、非制限戦略vs.制限戦略/JAMA

 急性脳損傷患者に対する非制限輸血戦略または制限輸血戦略は、神経学的アウトカムにどのような影響をもたらすのか。ベルギー・ブリュッセル自由大学のFabio Silvio Taccone氏らTRAIN Study Groupが多施設共同無作為化試験にて検討し、貧血を伴う急性脳損傷患者では、非制限輸血戦略のほうが制限輸血戦略よりも神経学的アウトカムが不良となる可能性が低かったことを示した。JAMA誌オンライン版2024年10月9日号掲載の報告。  研究グループは、急性脳損傷患者における赤血球輸血の指針として、2つの異なるヘモグロビン閾値が神経学的アウトカムに与える影響を評価するため、22ヵ国72ヵ所のICUにて、研究者主導のプラグマティックな第III相多施設共同並行群間非盲検無作為化比較試験を行った。

血栓除去術は単純CT上の大梗塞に有効か?(解説:内山真一郎氏)

発症後24時間以内の、単純CTで認めた大梗塞に血管内血栓除去術(IVT)が有効かどうかは証明されていない。TESLA試験は、前方循環の大血管閉塞があり、単純CT上大梗塞(Alberta Stroke Program Early CT Score、ASPECT2~5)を認めた、発症後24時間以内の300症例を対象とした米国での多施設共同無作為化比較試験であったが、90日後の機能予後はIVT群と通常の内科的治療のみの対照群との間で有意差がなかったという結果であった。単純CT上の大梗塞を対象とした試験としては、先にTENSION試験が行われていたが、TENSION試験では発症後11時間以内の症例に限定していたのに対してTESLA試験では半数が発症後12時間以上の症例であり、これらの症例では大梗塞による浮腫の影響がIVTの治療効果を弱めた可能性がある。

世界で年間約700万人が脳卒中により死亡、その数は増加傾向に

 気候変動と食生活の悪化によって、世界の脳卒中の発症率と死亡率が劇的に上昇していることが、オークランド工科大学(ニュージーランド)のValery Feigin氏らのグループによる研究で示された。2021年には世界で約1200万人が脳卒中を発症し、1990年から約70%増加していたことが明らかになったという。詳細は、「The Lancet Neurology」10月号に掲載された。  本研究によると、2021年には、脳卒中の既往歴がある人の数は9380万人、脳卒中の新規発症者数は1190万人、脳卒中による死者数は730万人であり、世界の死因としては、心筋梗塞、新型コロナウイルス感染症に次いで第3位であったという。

脳卒中の発熱予防は機能回復に有用か?/JAMA

 急性脳血管障害の患者では、発熱の標準治療と比較して、自動体表温度管理装置(Arctic Sun体温管理システム)を用いた予防的正常体温療法による発熱予防は、発熱負荷を効果的に減少させるが、機能回復には改善を認めないことが、米国・Boston University Chobanian and Avedisian School of MedicineのDavid M. Greer氏らが実施した「INTREPID試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年9月25日号に掲載された。

8年ぶりの新薬登場、非専門医も押さえておきたいてんかん診療の今/ユーシービー

 部分発作を適応とする抗てんかん薬として、国内8年ぶりの新薬ブリーバラセタム(商品名:ブリィビアクト錠25mg、同50mg)が2024年8月30日に発売された。ユーシービージャパンは10月2日、「てんかん治療の新たな一歩~8年ぶりの新薬登場~」と題したメディアセミナーを開催。川合 謙介氏(自治医科大学附属病院脳神経外科)、岩崎 真樹氏(国立精神・神経医療研究センター病院脳神経外科)らが登壇し、てんかん診療の現状と課題、ブリーバラセタムの臨床試験結果などを解説した。

脳卒中後には睡眠パターンが変わる?

 一晩の正常な睡眠時間は6〜8時間と考えられているが、脳卒中生存者の中でこの健康的な睡眠時間を維持できている人は半数以下に過ぎないことが、新たな研究で明らかにされた。この研究では、脳卒中の既往がある人の多くで、一晩の睡眠時間が長過ぎるか短過ぎるかのいずれかであることが示されたという。米デューク大学医学部のSara Hassani氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に9月11日掲載された。  論文の筆頭著者であるHassani氏は、「適切な睡眠時間は、理想的な脳と心臓の健康に不可欠だと考えられている。長過ぎたり短過ぎたりする睡眠は脳卒中後の回復に影響し、生活の質(QOL)を低下させる可能性がある。この研究結果を受けて、脳卒中の既往がある人が睡眠問題を抱えていないかを検査し、問題がある人の睡眠習慣を改善する方法を検討すべきだ」と主張している。

非造影CT評価の広範囲脳梗塞、血栓除去術併用は優越性示せず/JAMA

 発症後24時間以内で非造影CTにより広範囲脳梗塞が認められた患者では、内科的治療のみと比較し血栓除去術の併用は90日時の機能的アウトカム改善に関して優越性は示されなかった。米国・Texas Stroke InstituteのAlbert J. Yoo氏らTESLA Investigatorsが、米国47施設で実施された非盲検評価者盲検、ベイジアン・アダプティブ・デザインの第III相無作為化試験「Thrombectomy for Emergent Salvage of Large Anterior Circulation Ischemic Stroke:TESLA試験」の結果を報告した。最近の広範囲脳梗塞の血栓除去術に関する臨床試験は、患者の選択に関して画像診断法や時間枠が不均一であった。非造影CTは最も一般的な脳卒中画像診断法であるが、発症後24時間以内に非造影CTのみで確認された広範囲脳梗塞に対する血栓除去術の有効性は不明であった。JAMA誌オンライン版2024年9月23日号掲載の報告。