首つり/絞首/窒息による自殺未遂歴のある者は、その後の自殺成功率がレファランス(服毒自殺未遂)の6倍以上にのぼり、87%が1年以内に目標を達成し、90%以上が未遂と同じ方法で死亡していることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所臨床神経科学部のBo Runeson氏らが実施したコホート研究で判明した。自殺は主要な死亡原因であり、自殺のリスクがある者の評価法および治療法のいっそうの改善は一般臨床における最優先課題である。自殺未遂歴はその後の自殺既遂の強力なリスク因子であり、精神疾患と自殺企図が共存する場合は既遂リスクがさらに増大するという。BMJ氏2010年7月24日号(オンライン版2010年7月13日号)掲載の報告。
初回自殺未遂の方法別の転帰を解析
研究グループは、未遂に終わった自殺の方法とその後の自殺既遂リスクの関連を検討するために、フォローアップ期間が21~31年に及ぶ全国的な長期コホート研究を実施した。
対象は、1973~1982年の入院患者のうち過去に自殺未遂歴のある4万8,649人で、1973~2003年までの自殺既遂状況を調査した。Cox多変量回帰モデルを用い、服毒を基準として初回自殺未遂の方法別の転帰について解析を行った。
首つり未遂した人はその後90%以上が首つりで自殺に成功していた
フォローアップ期間中に5,740人(12%)が自殺した。自殺既遂リスクは、以前に未遂に終わった自殺の方法によって大きなばらつきがみられた。
転帰が最も不良だったのは、以前に未遂に終わった自殺の方法が首つり、絞首、窒息の者であった。すなわち、この群の男性の54%(258人)および女性の57%(125人)が後に自殺に成功しており(年齢、性別、教育歴、国外からの移住状況、精神疾患の併発状況で補正後のハザード比:6.2、95%信頼区間:5.5~6.9)、87%(333人)は未遂後1年以内に目標を達成していた。
これ以外の未遂自殺の方法(ガス自殺、高所からの飛び降り、拳銃や爆薬の使用、入水)は、その後の自殺既遂リスクが首つりに比べて有意に低かったが、それでもハザード比は1.8~4.0に達していた。
刃物などで身体を切る、刺すなどの方法(補正ハザード比:1.0)、その他の方法(同:0.9)、自殺未遂の遅発効果やその他の自傷行為による損傷(同:0.7)がその後に自殺既遂に至るリスクは、レファランスカテゴリーとした服毒(未遂法の84%を占め、最も多い)とほぼ同じレベルであった。
自殺成功者のほとんどが、未遂に終わった自殺の方法と同じ方法で死亡しており、たとえば首つり未遂者はその90%以上が首つりで自殺に成功していた。
著者は、「社会人口学的な交絡因子や精神疾患の併発状況で補正を行っても、未遂に終わった自殺の方法によってその後の自殺既遂リスクを予測できることが示された」と結論し、「首つり、入水、拳銃や爆薬、高所からの飛び降り、ガス自殺が未遂に終わった者には、強力なアフターケアを行うべきである」と主張している。
(菅野守:医学ライター)