軽度~中等度のアルツハイマー病患者に対し、ドコサヘキサエン酸(DHA)サプリメントを投与しても、認知能力の低下を減速する効果はないという。脳の萎縮率の低減についても効果はなかった。米国オレゴン健康科学大学神経内科部門のJoseph F. Quinn氏らが、アルツハイマー病の患者400人超について行った、無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月3日号で発表した。これまでの疫学試験では、DHA摂取がアルツハイマー病罹患率の減少と関連することが示唆されており、動物実験では実証されていた。
18ヵ月追跡し、ADAS-cog、CDR-SBスコアの変化を比較
研究グループは、2007年11月~2009年5月にかけて、米国51ヵ所の医療機関で、Mini Mental State Examination(MMSE)スコアが14~26の、軽度~中等度のアルツハイマー病患者について試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはDHAサプリメント2g/日を、もう一方にはプラセボを投与した。追跡期間は18ヵ月だった。
主要評価項目は、アルツハイマー病評価スケールの認知機能指標(Alzheimer’s Disease Assessment Scale:ADAS-cog)の変化と、臨床的認知症尺度の下位尺度(Clinical Dementia Rating sum of boxes:CDR-SB)の合計スコアの変化だった。またサブグループ分析として、被験者102人に対しMRIを行い、脳萎縮を測定した。
ADAS-cog、CDR-SBスコア、MRIによる脳萎縮率も両群で同等
被験者のうち試験を終了したのは295人、うちDHA群は171人、プラセボ群は124人だった。
ADAS-cogスコアの変化は、DHA群で平均増加幅7.98(95%信頼区間:6.51~9.45)ポイントに対し、プラセボ群で同8.27(同:6.72~9.82)ポイントと、両群に有意差はなかった(p=0.41)。
CDR-SBスコアも、平均増加幅がDHA群で2.87(同:2.44~3.30)ポイントに対し、プラセボ群では同2.93(同:2.44~3.42)ポイントと、有意差はなかった(p=0.68)。
また、脳萎縮についても、DHA群(53人)が24.7cm3(年率1.32%)減少したのに対し、プラセボ群(49人)では同24.0cm3(年率1.29%)で、有意差は認められなかった(p=0.79)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)