遅延臍帯クランプは、早期臍帯クランプに比べ生後4ヵ月における鉄欠乏の発生を改善し、新生児貧血を抑制することが、スウェーデン・ホランド病院(ハルムスタード市)のOla Andersson氏らの検討で示された。出生時の臍帯クランプを2~3分遅らせて行うことで、胎盤から新生児への血流が増加する。鉄欠乏性貧血の発生頻度が高い国では、遅延臍帯クランプによって新生児の生後数ヵ月間の鉄の状態が改善することが示されているが、新生児黄疸や新生児心肺障害リスクの増大が示唆され、貧血には至らなくとも鉄の欠乏は幼児の発育不全を引き起こすことが知られている。BMJ誌2011年12月17日号(オンライン版2011年11月15日号)掲載の報告。
遅延臍帯クランプの鉄の状態への効果を検討する無作為化試験
研究グループは、ヨーロッパにおける生後4ヵ月児の鉄の状態に及ぼす遅延臍帯クランプの効果を、早期臍帯クランプと比較する無作為化対照比較試験を行った。
対象は、2008年4月~2009年9月までにホランド病院において低リスク妊娠で満期出生した新生児であった。これらの幼児が、出生から180秒以上経過後に行う遅延臍帯クランプ群あるいは10秒以内に行う早期臍帯クランプ群に1対1の割合で無作為に割り付けられ、4ヵ月のフォローアップが行われた。
主要評価項目は生後4ヵ月におけるヘモグロビンおよび鉄の状態(血清フェリチン値に基づく)、副次的評価項目は新生児貧血、早期呼吸器症状、赤血球増加症、光線療法の適応などであった。
鉄欠乏:0.6% vs. 5.7%、新生児貧血:1.2% vs. 6.3%
400人の新生児が登録され、両群に200人ずつが割り付けられた。生後4ヵ月の時点で、両群間にヘモグロビン濃度の有意な差はなかったが、遅延臍帯クランプ群で平均フェリチン濃度が45%(95%信頼区間:23~71%)高く(117μg/L vs. 81μg/L、p<0.001)、鉄欠乏の発生率は有意に低かった[0.6%(1人)vs. 5.7%(10人)、p<0.01、相対リスク低下:0.90]。
生後2日における新生児貧血の発生率は遅延臍帯クランプ群で有意に低かった[1.2%(2人)vs. 6.3%(10人)]、p=0.02、相対リスク低下:0.80)。早期呼吸器症状、赤血球増加症、光線療法を要する高ビリルビン血症の発生率は両群間に有意な差はなかった。
著者は、「遅延臍帯クランプは、早期臍帯クランプに比べ生後4ヵ月における鉄の状態および鉄欠乏の発生を改善し、有害事象を増加させることなく新生児貧血の発生を抑制した」と結論し、「貧血には至らなくとも、新生児の鉄欠乏は発育不全を引き起こすため、遅延臍帯クランプはヨーロッパのような鉄欠乏性貧血の発生率が相対的に低い地域でも、満期出生幼児にベネフィットをもたらすと考えられる」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)