被災地でなくとも半分以上の医療現場で「心因的病状悪化」みられる PTSD症例発生も4割の医師が予想

提供元:ケアネット

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公開日:2011/03/31

 



株式会社QLifeは28日、茨城県を除く関東地方1都5県の医師252人の協力のもと行った『大震災の医療現場への影響(茨城県を除く関東地方1都5県)実態調査』の結果を発表した。

調査結果によると、関東では直接大きな被害を受けていない地域でも半分以上の医療現場で、患者に「震災で心因的な病状悪化」が見られることがわかった。病状の悪化は「子供」だけでなく、むしろ「大人」に認められ、とくに「女性」や「高齢者」に多いと回答する医師が多数を占めた。

患者が訴える主な症状は「不眠」「めまい・浮遊感」「血圧上昇」の順で多く、「余震」「TV映像」がきっかけの症例も多い。なかには「自殺傾向を示す(東京・病院)」「定期受診者の全員が血圧上昇(群馬・病院)」「心不全が増悪して入院(千葉・病院)」との報告もあった。

さらに、42%の医師が「今後、自分の患者さんのなかでPTSDを生じる人がいる」と予想している。過去にPTSD症例経験ない医師も多いと思われるため、医療者間での診療ノウハウの早期共有が望まれる。

この結果について、精神科医の冨高辰一郎氏は、「災害被害を直接受けていなくても、報道や余震を介して身体症状や精神症状を悪化させる患者が多いということは大変興味深い。このような調査はあまり行われていなかったので大変貴重と思う」とコメントしている。さらには、「医療者として大切なのは、震災に対する患者の不安や心配を理解しながらも、そういった症状全てを病的なものとして扱わず、かつ冷淡になり過ぎず、重症度に応じた対応をすることではないか。また、避難生活を送っている患者の場合、不安や不眠に対して睡眠薬や精神安定薬を処方する場合、十分注意する必要がある。精神科薬によって静脈血栓症(エコノミー症候群)のリスクが上昇すると報告されている」と述べた。

また、今後発症が懸念されているPTSDについては、「一般医がPTSDと診断し、患者に説明するのはなるべく控えた方が良いかもしれない。PTSDは生命の危機を感じるような出来事を直接体験した後の心的不調であり、震災で不安になった方をあまり安易にPTSDと診断すると弊害もあるからだ。もちろん、精神的不調が深刻なケースは専門医に紹介した方が良いとは思う。患者や家族は、お互いの不安や不調を配慮しながらも、今、自分たちができることに意識を向けていくことが大切ではないだろうか」と述べている。

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