慢性腰痛症の治療と関連医療費について後ろ向きに検証した結果、診察費や処方薬といった直接的なコストだけでも、患者にとって相当な経済的負担があることが明らかにされた。慢性腰痛症は一般的な健康問題である。英国・ロンドン大学経済社会科学部のHong J氏らが、GPリサーチデータベース(GPRD)から、慢性腰痛症の治療に関連する12ヵ月分の医療費を分析し報告した。Spine誌オンライン版2012年10月2日号の掲載報告。
英国のプライマリ・ケア患者のデータベースであるGPRDから、分析のためのデータを入手した。研究対象期間中(2007年1月1日~2009年12月31日)、診察記録と鎮痛薬の処方記録のあった患者を慢性腰痛症患者(6万4,167例)と定義し、年齢、性、GP担当医に基づき1対1でマッチさせた対照群として非慢性腰痛症患者(5万2,986例)を定義した。また慢性腰痛症と初めて診断された日付をインデックス日付とし、インデックス日付が同一の人を対照群に割り付けた。
多変量解析にて、インデックス日付以後12ヵ月で費やされた医療費(2009年実績)を、慢性腰痛症患者と非慢性腰痛症患者で比較した。
また、広範な疼痛範囲を除外し、対照群をより厳しく定義づけた感度解析も実施した。
なお著者は報告で、「後ろ向きの請求データベースであったため、研究コホートは選択バイアスを除外できず、共存症の誤認、治療アドヒアランス未確認、間接コストや市販薬コストは非評価であった」と本解析の限界について言及している。
主な結果は以下のとおり。
・慢性腰痛症患者の総医療費は1,074ポンドであり、対照群(非慢性腰痛症患者)の516ポンドの倍額であった(p<0.05)。
・慢性腰痛症患者の医療費の内訳で最も多くを占めていたのはGPの診察58.8%であり、続いて2次的ケアへの紹介が22.3%、残りが疼痛緩和の薬物療法にかかるものであり、これらがコストの格差をもたらしていた。
・感度解析では、2群間のさらに大きなコストの格差が認められた(1,052ポンド対304ポンド、p<0.05)。
(ケアネット)