今回のAHAで最も注目されている薬剤は、抗PCSK9抗体だろう。強力な新規LDLコレステロール低下薬としての可能性が、多くの臨床試験で報告されている。6日のClinical Science:Special Reportでは、抗PCSK9抗体AMG145を用いた最大規模の第二相試験"LAPLACE"の、最終結果が、ハーバード大学(米国)のRobert P. Giugliano氏により報告された。
LAPLACEの対象は、至適用量のスタチンを4週間以上服用したにもかかわらず、LDLコレステロール(LDL-C)濃度が85mg/dL未満に到達していない631例。エゼチミブ併用の有無は問わない。また、スタチン、エゼチミブ以外の脂質低下薬服用例とトリグリセライド濃度が400mg/dLを超える場合については除外されている。
ベースラインにおける、LDL-C濃度平均値は124mg/dL、そのうちLDL-C濃度が130mg/dL未満の割合は65%だった。エゼチミブ併用率は約1割である。
これら631例は以下の8群に無作為化割付けされた。まず「2週間に一度皮下注(Q2週)」群には「70mg」、「105mg」、「140mg」群と「プラセボ」群を置き、「4週間に一度皮下注(Q4週)」群には「280mg」、「350mg」、「420mg」群と「プラセボ」群を置いた。
12週間追跡後、一次評価項目である「LDL-C低下率」は、Q2週群の70mg群で41.8%、105mg群 60.2%、140mg群で66.1%と、いずれもプラセボ群に比べ有意に高くなっていた。Q4週群でも同様で、280mg群は41.8%、350mg群 50.0%、420mg群で50.3%と、プラセボ群に比べ低下率はいずれも有意に高かった。
経時的に見ると、AMG145群ではいずれも、投与2週間後には著明なLDL-C低下が認められた。
またQ2週群、Q4週群ともAMG145によるLDL-C低下作用は、性別、年齢、肥満度、試験開始時LDL-C値の高低、試験開始時血中free PCSK9濃度の高低に影響を受けていなかった。
次にQ2週群とQ4週群を比較すると、開始8週間後以降は、Q4週群でより安定したLDL-C低下が認められた。
安全性に関しGiugliano氏は、用量依存性に増加した有害事象はなかったとした。また、筋障害、肝障害は各群で1例以内にとどまり、発現率は低かった。
この成績を受けGiugliano氏は、心血管系イベントへの影響を検討する第III相試験が必要だと指摘した。
取材協力:宇津貴史(医学レポーター)
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