【速報!AHA2012】日本における下肢虚血に対する血管内治療の成績発表:OLIVEレジストリ

提供元:ケアネット

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公開日:2012/11/08

 

 近時、下肢虚血に対する血管内治療(EVT)の進歩が著しい。その一方、網羅的な実態は必ずしも明らかではなかった。そのため、わが国では”OLIVE”レジストリが組織され、 重症下肢虚血例に対するEVTの実態把握にのりだした。その成績が、学会最終日となる7日、Clinical Science:Special Reportsセッションにて、中村正人氏(東邦大学医療センター大橋病院循環器内科教授)により報告された。
 
 OLIVEレジストリは、鼠径靭帯下へのEVT施行例を追跡したプロスペクティブな多施設登録研究である。対象はRatherfold分類4群以上の重症虚血、バイパス術施行は除外されEVT施行例のみが対象である。全国19施設から、312例が登録された。

 責任病変は17%が膝上、42%が膝下、残り41%は膝上・膝下にまたがっていた。膝下病変のみを除外しても、TASC II分類はType Dが35%、Type Cが24%を占めていた。

 背景因子を見ると、糖尿病合併の高さ(71%)と透析導入例の多さ(52%)が特徴的だった。
 
 さて、本レジストリの一次評価項目である1年間の「下肢大切断回避・生存率」は、74%だった。多変量解析で求めたところ、「BMI<18.5」、「心不全」、「創傷感染」が有意なリスク増加因子となっていた。

 なお二次評価項目の「生存率」は81%、「下肢大切断・バイパス術回避」率は88%、「VET再施行回避率」は63%だった。

 中村氏はこの結果を、VET再施行率は低くないが、「下肢大切断回避・生存率」と「下肢大切断・バイパス術回避」率は申し分ないと評した。
 
 これに対し、指定討論者のMichael Conte氏(UCSFメディカルセンター)は、以下を指摘した。同氏は血管外科医である。

 まず、本レジストリが、重症虚血肢「一般」を反映しているか問われた。同氏曰く、糖尿病合併例52%は桁外れに高い。加えて、バイパス術を施行された重症下肢虚血例は本レジストリには含まれていない。また同氏は、本当に「重症」虚血肢のみが対象となっていたかについても疑義を呈した。そして神経性潰瘍例が一定数含まれていたのではないかと述べた。

 加えて、37%を占めた「VET再施行」では、再施行の回数と時期を明らかにすべきだとの注文もついた。

 さらに同氏は、観察期間はより長期であるべきとも考えているようだ。VETをバイパス術と比較した大規模試験BASILにおいて、VETとバイパス術の優劣が明らかになったのは、施行後2年間が経過した時点だった。

取材協力:宇津貴史(医学レポーター)

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