インスリン使用患者の実態が明らかに~早期の人ほど悪い血糖コントロール~

提供元:ケアネット

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公開日:2014/02/27

 

 2014年2月25日(火)都内にて、インスリン自己注射を行う2型糖尿病患者407名の意識調査をテーマにセミナーが開かれた(ノボ ノルディスク ファーマ株式会社主催)。演者である東京医科大学の小田原 雅人氏(内科学第三講座 主任教授)は、「血糖コントロールが悪い人ほど、罹病期間が短い」という調査結果を受け、早期からの積極的コントロールの必要性をあらためて強調した。

 以下、セミナーの内容を記載する。

【目標値は知っていても、達成できているのはたった3割】
 調査結果をみると、自身の治療目標値を知っている人は約7割と予想よりも多かった。しかし、その目標値を達成できているのは約3割にすぎなかった。残り7割が目標値未達という治療の現状が浮かび上がった。
血糖管理状況を詳しくみると、コントロール不良群でとくに空腹時血糖値が高い傾向にあり、基礎インスリンの投与量が不十分だった可能性がある。

【合併症がない人ほど、血糖管理が不十分】
 合併症の有無別のコントロール状況はどうだろうか。調査前はHbA1c値が高いほど合併症が多いと予想されたが、結果をみると、HbA1c値が高い群で合併症は少なかった。つまり、合併症がある患者さんは、自身で危機感を感じるためか結果として血糖値がコントロールされる傾向にあるということだ。また、コントロール不良群で罹病期間が短いこともわかった。罹病期間の短い患者さんは、コントロール不十分なまま放置されていることが想定される。罹病期間の短い、いわゆる早期の人ほど血糖コントロールが不十分という事実が明らかになったことで、より早期の厳格介入が必要と示唆される。

【血糖管理が良好なほど、低血糖が気になる】
 一方で、血糖コントロールが良好な群でもある課題がみえた。低血糖発現を気にする割合が不良群と比べ、高かったのだ。また、「高血糖と低血糖、どちらが気になるか?」という質問の回答をみると、高血糖、低血糖それぞれを選ぶ割合は全体で6:4であり、思いのほか低血糖の割合が高かった。血糖値が安定せずにバラつきがでる原因を患者さんに尋ねたところ、インスリンの種類、単位数、タイミングなどの製剤が原因と考える患者さんが約4割おり、その半数以上が低血糖発現を気にしていた。

【基礎インスリンで、厳格な血糖管理と低血糖の不安を軽減】
 今回の調査結果から、インスリン治療患者全般において、「基礎インスリン量不足の可能性」「管理不十分な人は、実は、合併症がなく罹病期間も短い傾向」「インスリン使用者の約4割が低血糖を気にしている」といったことが明らかになった。
この結果を基に治療を考えると、罹病期間の短い人ほど、十分な基礎インスリンでコントロールを行い、コントロール後は低血糖の懸念を少なくするよう努めることが必要なようだ。
 現状のインスリン療法では、「基礎インスリン」が低血糖を起こしにくい点で優れており、BOTの普及により初期導入におけるスタンダードインスリンとなっている。なかでも約1年前に発売されたインスリンデグルデク(商品名:トレシーバ)は、1日1回投与で夜間低血糖の発現頻度を高めずにHbA1cの低下が期待できるという特徴をもつ。小田原氏は「3月に長期処方解禁を迎えることで、よりデグルデクの使用機会が広がるのではないか」と期待を述べた。

【編集後記】
 講演では、DCCTの結果から重篤な夜間低血糖は睡眠中に多く起こっていることも紹介された。夜間低血糖が起こっても、目を覚まさない患者さんは存在するという。低血糖は自覚していれば対処が可能だが、対処できない場合もあるということだ。夜間に低血糖を起こしにくい基礎インスリン製剤は、これからもスタンダードインスリンとして評価され続けるのではないだろうか。

(ケアネット 佐藤 寿美)