「笑い(laughter)」は、うつ病および潜在的な精神疾患の発症および進展の診断ツールとして有用である可能性が、スペイン・Aragon Institute of Health ScienceのJ. Navarro氏らにより報告された。笑いは医学分野において、健康へのよい影響をもたらすことや重大疾患の予防や治療の手法としては研究されてきたが、疾患の予測指標となる可能性や診断ツールとしての可能性については検討されていなかった。Journal of Affective Disorders誌2014年5月号の掲載報告。
研究グループは、うつ病患者と健常対照の笑いを登録し評価を行った。全患者に対して、ハミルトンうつ病評価尺度(HDRS)で評価を行い、また各笑いについて、Matlab解析ソフトを用いて8つの評価変数で数値化した。患者、対照、性別ごとに分類し、笑いとHDRSの結果との関連を一般解析および判別解析にて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・対象者は、うつ病患者30例、健常対照20例であった。
・総計934回の笑い(うつ病患者517回、健常対照417回)が登録された。
・分析の結果、うつ病患者と健常対照では、笑いのタイプに有意な差がみられた(有効な評価対象88%)。
・ハミルトンうつ病評価尺度により、笑いとうつ病状態との間には強い関連性があることが示唆された(有効な評価対象、男性85.47%、女性66.17%)。
・一方で、本分析結果は以下の点で限定的であった。
(1)笑いを喚起するようユーモラスなビデオを制作したため、評価された笑いは可変的なものであった。
(2)記録された笑いの中には、楽しく笑っていないものがあったと思われた。
(3)笑いのエピソードの評価は、個人的な記録に依存していた。
(4)評価した笑いの数は相対的に少なく、うつ病に悩む代表的集団ではない可能性があった。
以上を踏まえたうえで、著者は「笑いは、うつ病および潜在的な精神疾患の発症と進展の診断ツールとなりうる可能性がある」とまとめ、「笑い声は対人関係において、深層心理に潜む感情や気分を表すものといえる」と述べている。
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