成人ADHDをどう見極める

提供元:ケアネット

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公開日:2014/05/21

 

 成人の注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、双極性障害(BD)や境界性パーソナリティ障害(BPD)との鑑別が容易ではなく、しばしば同時に罹患している場合もある。そのため、誤診や効果のない治療を施すことにつながる可能性があり、場合によっては重篤かつ有害な転帰に至ることもある。ADHDおよびBD、BPDのいずれもが健康や機能性を大幅に損なうこと、またBDとBPDは自殺傾向と関連していることが知られていることから、英国・ロンドン大学のPhilip Asherson氏らは臨床医に最新の情報を提供するために検討を行った。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2014年5月7日号の掲載報告。

 レビューは、成人のADHD vs. BDまたはBPDの重複する症状と異なる症状について、またADHDとBDまたはBPDの鑑別診断、およびADHD-BDまたはADHD-BPDそれぞれの同時罹患の診断と治療について、最新の情報を提供することが目的であった。4つのデータベース、DMS最新版(DMS-5)、その他至適な文献、および臨床医の経験を探索した。

 主な結果は以下のとおり。

・成人ADHDにおける、BDまたはBPDの同時罹患者は20%未満である。
・BDは気分が正常な期間もあり、症状の発現は必然的なものではなくエピソード的である。
・ADHD-BD患者では、ADHDの症状はBDエピソード間に明確にみられる。
・BPDとADHDは、特徴的な慢性症状および機能障害を伴う。
・BPDとADHDの重複する症状には、衝動や情動の制御不全を含んでいる。
・ADHDではみられずBPDでみられる症状には、現実/想像上での見捨てられ不安や自殺行為、自傷、慢性的な虚しさ、ストレスに関連したパラノイア/重篤な解離症状を、死にもの狂いで回避しようとすることなどを含んでいる。
・専門家コンセンサスでは、ADHD-BD患者ではBDエピソードに対する治療をまず初めに行うことが推奨されている。これらの患者には、病期における治療(たとえば気分安定薬、次いで中枢神経刺激薬/アトモキセチン)が必要のようだとしている。
・なお、中枢神経刺激薬またはアトモキセチンが、ADHD-BD患者の躁状態を悪化させるかどうかのデータは乏しくかつ決定的なものがない。
・BPDは、主として精神療法が行われている。
・BPDに対する弁証法的行動療法は、薬物治療の補助療法として、成人ADHD患者における治療を成功に導く可能性がある。
・BPDの中核症状に対する十分なエビデンスのある薬物治療は存在しない。しかし、いくつかの薬物治療は個別の症状領域(たとえばADHDとBPDが共有する衝動性に関する領域)には効果がある場合がある。
・経験的には、成人ADHDの治療はパーソナリティ障害を併存する場合に検討されるべきものである。
・以上のように、治療の適切なターゲッティングと患者アウトカムの改善を確実なものとするためにも、正確にADHD、BD、BPDを診断することは重要である。しかしながら、成人ADHD、および同時にBDやBPDを有する人の治療についてはデータが不足しているのが現状である。

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(ケアネット)