バイエル薬品株式会社は2014年6月10日(火)、都内にて「バイエル・PHプレスセミナー」を開催した。セミナーでは久留米大学医学部内科学講座心臓・血管内科部門の福本 義弘氏、NPO法人「PAHの会」の村上 紀子氏が講演した。
久留米大学医学部の福本 義弘氏は、CTEPHの疾患と治療について紹介した。CTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)は、肺高血圧症の一種で、肺血管の血栓により徐々に肺動脈圧が上昇し、右心不全を来す疾患である。エコノミー症候群などの急性肺血栓塞栓症から数%の割合で慢性化に移行する。本邦における発症率は年間0.5~0.8人/100万人、男性に比べ女性に、年齢は50~70歳代に多い。まれな疾患ではあるものの、診断率の向上により患者数は急激に増加している。
CTEPHの予後は不良で、東北大学のデータでは、平均年齢55歳の患者が60歳となる5年経過後も生存する例は約半数だという。患者の自覚症状は労作時の息切れであるが、診断には右心カテーテルが必要であり、健康診断でのスクリーニングは困難。よって、発見が遅れることも少なくなかった。
治療は、不要な血栓を摘出する血栓内膜摘除術(PEA)が行われ良好な成績を収めているものの、手術非適応例が40%ある。一方、近年は右心カテーテルを通し塞栓部位をバルーンで拡張するカテーテル治療も良好な成績を収めている。しかしながら、末梢血管病変、血管の破綻による吐血などの問題点もあり、手術、カテーテル治療に加え、薬物療法も必要であった。
そのようななか、2014年4月、バイエル薬品からアデムパス錠(一般名:リオシグアト)が発売された。可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬である本剤は、NO(一酸化窒素)経路に介入し、血管拡張作用を発揮する。国際的な第III相無作為化二重盲検比較試験であるCHEST-1および2の中間解析では、6分間歩行距離の有意な改善をはじめ、心肺血行動態、疾患関連バイオマーカーなどの改善がみられた。
次に、NPO法人PAHの会の村上紀子氏が、患者会の立場から初めての承認薬への期待について述べた。CTEPHは診断できる疾患になったこと、さらに、今まで在宅酸素主体だった治療に、同薬剤が加わったことは患者・家族にとって非常に心強い、としたうえで「CTEPHは早期発見早期治療が重要であり、この機会に疾患について広く知ってほしい」と結んだ。
(ケアネット 細田 雅之)