抗コリン薬は、抗精神病薬により誘発される錐体外路症状(EPS)の治療や予防に対し、何十年も使用されている。しかし、抗コリン薬は、遅発性ジスキネジアの悪化や認知機能障害を含む多くの副作用を引き起こすことが知られている。これまでの研究では、抗精神病薬で治療中の統合失調症患者における抗コリン薬の中止は、錐体外路症状の再発率に大幅な影響を及ぼすこと、その一方で、認知機能の改善が認められることが報告されている。カナダ・マギル大学医療センターのJulie Eve Desmarais氏らは、抗コリン薬中止による、運動障害、認知機能、精神症状に対する影響を評価した。Therapeutic advances in psychopharmacology誌2014年12月号の報告。
抗コリン薬中止は錐体外路症状に有意な影響を示さなかった
対象は、抗精神病薬により治療中の統合失調症または統合失調感情障害の外来患者20例。抗コリン薬の4週間漸減後の運動障害、認知機能、一般精神病理に及ぼす影響を評価した。
抗コリン薬の中止が錐体外路症状の再発率に影響を及ぼすかを評価した主な結果は以下のとおり。
・20例中18例は抗コリン薬中止を達成した。中止できなかった2例はアカシジアが原因であった。
・抗コリン薬の中止は、錐体外路評価尺度の総スコアやパーキンソニズム、アカシジア、ジストニア、遅発性ジスキネジアのサブスケールにおいて有意な影響を示さなかった(反復測定分散分析)。
・抗コリン薬中止後の認知機能は、ベースラインと比較し6、8、12週目の統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)のzスコアにおいて有意な改善が認められた。また、運動、シンボルコーディングタスクにおいて有意な改善がみられた。
・PANSS(陽性・陰性症状評価尺度)、CGI(臨床全般印象度)による疾患の重症度(CGI-S)および改善度(CGI-I)に対する有意な影響は認められなかった。
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(ケアネット 鷹野 敦夫)