ロコモを判定する「臨床判断値」を発表

提供元:ケアネット

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公開日:2015/05/22

 

 日本整形外科学会は、5月15日、都内にて「現在のロコモ度を判別する『臨床判断値』」の発表会見を行った。

ロコモティブシンドローム予防への1歩

 はじめに今回の「臨床判断値作成の背景」について、同学会の岩本 幸英 理事長(九州大学大学院 医学研究院 臨床医学部門 外科学講座 整形外科学分野 教授)が、説明を行った。

 高齢化社会の中、わが国の高齢者の健康寿命と平均寿命では、約10年近く差がある。この10年をいかに健康に過ごすのかが、喫緊の課題となっている。厚生労働省の「国民生活基礎調査」では、要支援・要介護の原因のトップが「運動器の疾患」であるが、国民意識の中でも「運動器」への認識は、循環器や泌尿器などの領域とも比較して、低いのが現状である。そこで学会では、2007年に「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群;以下「ロコモ」)を提唱し、現在も啓発活動を行っている。

 今回、予防医学的見地よりロコモの判別が重要と判断し、2013年に発表した「ロコモ度テスト」より判定を行う際の基準となる「臨床判断値」を作成した。

ロコモ度2で専門医の受診を推奨

 続いて「ロコモ度判定法」について、ロコモ チャレンジ!推進協議会 委員長の大江 隆史氏(NTT東日本関東病院 整形外科 主任医長)がレクチャーを行った。
 「臨床判断値」とは、「疾患や病態の予防、治療、予後などについて判定を行う際の基準となる値であり、ロコモ予防や対処の目安となるもの」である。具体的には、ロコモ度テストの「立ち上がりテスト」(下肢筋力の測定)、「2ステップテスト」(歩幅の測定)、「ロコモ25」(身体状態・生活状況の調査)の評価で、ロコモ度を判定するもので、判定されるロコモ度は1と2があり、詳細は次のとおりとなる。

ロコモ度1
 移動機能の低下が始まっている状態であり、運動の習慣付け、食事の摂取に注意が必要となる。
 (判定:下記のいずれか1つでも当てはまる場合)
 「立ち上がりテスト」→片脚のどちらか一方で40cmの高さから立ち上がれない
 「2ステップテスト」→テスト値が1.3未満(膝を曲げ体を沈めながらの大股歩行が困難)
 「ロコモ25」→採点結果が7点以上

ロコモ度2
 移動機能の低下が進行している状態であり、将来的に生活に支障が出る可能性があるもの。とくに痛みのある場合は、運動器疾患の可能性があり、速やかな整形外科専門医への受診が勧められる。
 (判定:下記のいずれか1つでも当てはまる場合)
 「立ち上がりテスト」→両脚で20cmの高さから立ち上がれない
 「2ステップテスト」→テスト値が1.1未満(足を蹴り出しながらの大股歩行が困難)
 「ロコモ25」→採点結果が16点以上

 以上のロコモ度テストで判定を行うことで、今後の運動器障害の予測やその対応が可能となり、予防的な早期介入ができるとされる。

 最後に岩本氏は、「ロコモは、高齢者の疾患と思われがちであるが、若中年時よりその傾向を予想することで、今後の予防に役立つものと期待される」とレクチャーを終えた。

■詳しくは、ロコモ チャレンジ!推進協議会まで。

(ケアネット 稲川 進)