7月19・20日、第8回日本在宅薬学会学術大会が幕張メッセ国際会議場(千葉県千葉市)で開催された。2日間で1,184人が参加し、「理論から実践へ」をテーマに、8シンポジウム34演題と一般演題78題が発表された。
基調講演には厚生労働省の鈴木 康裕氏が登壇した。団塊の世代が75歳以上となる2025年問題に触れ、高齢者の割合増加に伴い生活習慣病患者の割合が増え、服薬の機会が増加していくという社会環境の変化について説明した。それにより深刻化が懸念される残薬問題に関しては効果や安全面だけでなく、医療費の有効活用の面からも課題であるという見解を示した。また、国は今後病床数を増やさない方針であるため、在宅医療や介護人材の確保が急務であり、3~4年以内に体制をつくる必要性について説明した。
医薬分業の現状については、期待されてきた薬局の「かかりつけ機能」が十分に発揮されていない状況を指摘し、薬剤師業務は物販業務から対人業務へ転換が求められているとした。そして、来年の調剤報酬改定以降、医薬品の供給に関する点数を減らし、かかりつけ機能や在宅サービスに関わる業務の評価を上げていく方向性を示した。
日本医師会と合同開催されたシンポジウム1では、医師、看護師、薬剤師がそれぞれの立場から地域包括ケアに求められる連携について意見を述べた。在宅医療に取り組む薬剤師からは、薬剤師が処方提案したことで褥瘡が改善されたケースや減薬につながった症例が報告された。また、医師や看護師からは、患者本人の能力を超える薬剤管理が必要な処方がされた症例や、複数の医療機関からの多剤併用による有害事象などのケースについて発表がされ、より積極的な薬剤師の介入を求める声が聞かれた。また、退院支援の協力事例や病院と薬局の合同勉強会による知識や情報共有の改善事例の発表がされ、病診連携や薬薬連携強化の重要性が確認された。
学会理事長の狭間 研至氏は会見にて、薬剤師の在り方が変わるということは薬剤師だけの問題ではなく、治療方針や治療結果に関わることであるため、医師をはじめ、他職種の人々と共に考えていく必要があるとの考えを示した。そして、今回日本医師会より後援を受け、合同シンポジウムを開催できたことを評価し、来年度以降も議論を続けていきたいとした。
また、今年1月に17名が認定された在宅療養支援認定薬剤師制度について触れ、認定要件の1つとして課された症例報告から薬剤師が介入することで在宅医療の結果が変わってきていることや、学会のホームページに公開されている認定薬剤師の情報から、実際に在宅医との連携が始まったことを例に挙げ、薬剤師による在宅療養支援が実践の時代に入ってきているという所感を述べた。一方で、薬剤師の在宅業務が軌道に乗っている例はまだ少数であるため、求められる知識・技能教育の提供に加え、今後は経営面での課題解決支援や、公的な形で行政や教育機関へ実態をフィードバックしていく方針を示した。
(ケアネット 後町陽子)