治療薬の開発が進むアミロイドーシスの最新知見

提供元:ケアネット

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公開日:2015/08/28

 

 第3回日本アミロイドーシス研究会学術集会(大会長:安東 由喜雄氏[熊本大学大学院 生命科学研究部 神経内科学分野 教授])が、8月21日、東京都内にて開催された。今回は約60題に上る演題発表のほか、シンポジウム、特別講演が行われた。

多様な症候を示すアミロイドーシス
 モーニングセミナーでは、山下 太郎 氏(熊本大学医学部附属病院 神経内科 アミロイドーシス診療体制構築事業 特任教授)が、「アミロイドーシスの早期診断と早期治療の重要性」と題し、レクチャーを行った。
 セミナーでは、「本症は約60年前に発見されて以来、今日まで診断法と治療法の研究がされてきた」と疾患の歴史からひも解くとともに、主に家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)にフォーカスをあて解説が行われた。
 アミロイドーシスは、特異なタンパクであるアミロイドがさまざまな臓器の細胞外に沈着することで、機能障害を引き起こす疾患群である。現在31種類のアミロイド前駆タンパク質が確認され、沈着する種々のタンパク質に応じて分類がされている(その1つにFAPに関連するトランスサイレチン〔TTR〕がある)。これら原因タンパクにより病型が異なり、病型により治療法も変わるために、確実な診断が重要となる。しかし、一般に全身性アミロイドーシスでは、多臓器に障害がみられ、多彩な症候を示すために、確定診断まで難渋される。
 初発症状としては、全身倦怠感などの非特異的症状のほか、末梢神経障害による手足のしびれ、自律神経障害による起立性低血圧、消化管アミロイドーシスによる吐気、下痢、巨舌、心アミロイドーシスによる心肥大や不整脈、腎障害によるタンパク尿、浮腫、皮下出血などがみられる。
 検査では、抗TTR抗体を用いた免疫染色などの組織診断、血清診断、遺伝子診断などが鑑別診断のため行われる。確定診断には、病理学的な検査が不可欠であり、組織の生検部位として障害臓器はもとより、消化管粘膜や腹壁脂肪での生検診断も可能である。また、近年では、レーザーマイクロダイセクションと液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析など検査機器の進歩により、沈着タンパクの同定が可能となってきた。現在、熊本大学や信州大学などの施設で病型診断が行われている。その他の所見として、心胸郭比の拡大、心エコーによる心筋肥厚や輝度上昇、BNP、NT-proBNPの上昇も参考となる。
 本症では、早期診断による、迅速な治療が患者の生命予後を左右するので、専門医や専門医療機関への紹介をお願いしたい。

開発が待たれる内科的治療
 現在、アミロイドーシスの治療ではFAPで肝移植や内科的治療、ALアミロイドーシスに対する自家末梢血幹細胞移植、AAアミロイドーシスに対する生物学的製剤などが行われている。
 とくにFAPでは、TTRが肝臓で産生されることから早期の患者には肝移植が行われている。確かに肝移植後の生命予後は改善され、病期の進行も抑制される一方で、移植後でも症候が残ること、一部の患者では症候の悪化があること、移植ドナーの不足の問題など多くの課題が残されている。こうしたこともあり、内科的治療が模索され、2013年からは、アミロイド形成に関わるTTR四量体を安定化させるタファミジス(商品名:ビンダケル)が保険適用となり、FAPの肝移植が困難な患者や移植抵抗性の患者に対し、使用されている。そして、病期の進行を抑制する有効な治療薬となっている。
 その他にも、siRNAやASOによる肝臓でのTTR発現抑制を目的とした核酸医薬医療は、世界規模の臨床試験がスタートしており、治療への効果が期待されているほか、免疫療法として、沈着したアミロイドに対する治療の研究も現在進められている。

 次回第4回学術集会は、2016年8月19日に山田 正仁 会長(金沢大学大学院 教授)のもと都内において開催される予定である。

参考サイト
日本アミロイドーシス研究会 
熊本大学 アミロイドーシス診療体制構築事業ホームページ
 
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(ケアネット 稲川 進)