がんは最善の死に方なのか~中高年者の意識調査

提供元:ケアネット

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公開日:2016/03/08

 

 がんは転帰が改善しているにもかかわらず、依然として広く恐れられている。他の主な死亡原因である心疾患が早急な死と関連しているのとは対照的に、多くの場合、死亡までの期間が長いと思われているためである。それゆえ、BMJ誌の元編集長であるRichard Smith氏の“がんは最善の死に方(cancer is the best way to die)”という見解は多くの批判を集めた。今回、英国ロンドン大学のCharlotte Vrinten氏らは、中・高年者に対してこの見解に同意するかどうかを調査し、“良い死(good death)”かどうかという観点で、がんによる死と心疾患による死に対する考えを比較した。その結果、中・高年者の4割ががんを“最善の死に方”と見なし、がん死のほうが心疾患死より良いと評価した。著者らは、「2人に1人ががんと診断されることを考えると、がんによる良い死についての会話が、がんへの恐怖を少し軽減するかもしれない」と記している。European journal of cancer誌2016年3月号に掲載。

 本研究は、英国の50~70歳のサンプル(n=391)における、性別および教育レベルでの割当抽出法によるオンライン調査(2015年2月実施)の一部である。“良い死”の5つの特徴は、終末期に関する文献から選択した。集団サンプルとがん・心疾患それぞれによる死亡の可能性との関連性を確保するために、彼ら自身の死について各特徴の重要性を評価するよう、回答者に依頼した。また、Smith氏の見解に同意するかどうかも尋ねた。

 主な結果は以下のとおり。

・少なくとも回答者の95%が、選択された5つの特徴が自分の死において重要かどうかを熟考した。

・がんによる死は、心疾患による死と比べて、「起こることに対するコントロール」(p<0.001)、「痛みや他の症状に対するコントロール」(p<0.01)、「身辺整理のための時間」(p<0.001)、「愛する人に別れを言うための時間」(p<0.001)が提供される可能性が高いと評価された。一方、「死亡まで自立して生活することへの期待」においては差がなかった(p>0.05)。

・ほぼ半数(40%)の回答者が、がんは“最善の死に方”という見解に同意し、年齢(p=0.40)、性別(p=0.85)、教育レベル(p=0.27)による差はなかった。

(ケアネット 金沢 浩子)