閉経後5年間で飲酒量が増加した女性は、変化のない女性と比べて、乳がんリスクが増加し冠動脈疾患リスクは減少する、という結果が前向きコホート研究で示された。BMJ誌2016年5月11日号に掲載。
南デンマーク大学のMarie K Dam氏らは、デンマークの2つの連続した試験(1993~98年、1999~2003年)におけるDiet, Cancer, and Health Studyに参加した閉経後女性2万1,523人を対象に、1993~2012年に前向きコホート試験を実施した。アルコール摂取量は参加者が記入したアンケートで調べた。主な評価項目は、11年の追跡期間における乳がんおよび冠動脈疾患の発症率、ならびに全死因死亡率。デンマークにおけるがん登録、退院登録、死亡原因登録、国民共通番号登録より情報を得た。また、Cox比例ハザードモデルを使用して、5年間のアルコール摂取量の変化に応じたハザード比を推定した。
主な結果は以下のとおり。
・研究期間中、乳がんが1,054例、冠動脈疾患が1,750例に発症し、2,080例が死亡した。
・3次スプラインを用いた5年間のアルコール摂取量変化の分析モデルにより、5年間にアルコール摂取量が増えた女性は摂取量が一定であった女性より、乳がんリスクは高く、冠動脈疾患リスクは低いことが示された。
・エタノール12gを1杯とすると、たとえば、アルコール摂取量が週に7杯または14杯(1日当たり1杯または2杯に相当)増加した女性の場合、一定の摂取量だった女性に比べた乳がんのハザード比は、年齢・教育・BMI・喫煙・地中海式ダイエットのスコア・出産歴の有無・出生児数・ホルモン補充療法の調整後、それぞれ1.13(95%信頼区間:1.03~1.23)と1.29(同:1.07~1.55)であった。冠動脈疾患における上記のハザード比は、年齢・教育・BMI・地中海式ダイエットのスコア・喫煙・身体活動・高血圧・高コレステロール・糖尿病の調整後、それぞれ0.89(同:0.81~0.97)と0.78(同:0.64〜0.95)であった。
・5年間でアルコール摂取量が減少した女性においては、乳がんや冠動脈疾患リスクとの有意な関連はみられなかった。
・アルコール摂取量が「高摂取量」(週14杯以上)から増加した女性は、「高摂取量」で一定していた女性より死亡リスクが高かったことが、全死因死亡率の分析で示された。
(ケアネット 金沢 浩子)