日本人の死因の約6割を占めるNCD関連疾患、改善のカギは…

提供元:ケアネット

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公開日:2016/06/08

 

 不健康な食事や運動不足、喫煙、過度の飲酒…。これらは、さまざまな疾患の入り口になりうる悪しき生活習慣だが、その改善により予防可能な疾患の総称であるNCD(non-communicable diseases、WHOの定義では「非感染性疾患」)への関心が世界的に高まっている。5月31日、NCD関連疾患の啓発や情報提供を行っている塩野義製薬株式会社が、国内のNCD関連疾患患者を対象にした実態調査の結果をまとめた。同日のセミナーに登壇した寺本 民生氏(帝京大学臨床研究センター)は、患者自身の疾患や治療に関するリテラシーの低さを指摘し、「前向きな治療意識と生活満足度が疾患コントロール意識と密接につながっている。医療従事者や家族、地域コミュニティの関わりなども含めたトータルケアが重要」と述べた。

 NCDとは、高血圧や脂質異常症、糖尿病など、いわゆる生活習慣病を中心とした継続的な治療が必要な慢性疾患の総称である。厚生労働省の調査によれば、近年このNCDに関連した疾患は、日本人の死因の約6割、国民医療費の約3割を占めている。

 塩野義製薬は今年3月、国内の20~60代のNCD関連疾患患者を対象にインターネット調査「T-CARE NCD Survey」を実施(n=3,031)。そこから、NCD関連疾患特有の患者像が浮かび上がってきた。現在抱えている病気の治療について尋ねた項目では、「治療を継続しなければならない」(77.2%)「前向きに治療に取り組んでいる」(58.1%)など、半数以上が高い意識で治療に臨んでいることをうかがわせたが、「自分なりの治療目標がきちんとある」と答えた人は27.8%にとどまっていた。さらに、「定期的に通院する」(87.1%)、「定期的に薬を服用する」(71.6%)など、治療への取り組みはきわめて真面目な人が多い一方、「自分の治療方法については、医師の判断に任せる」(66.1%)、「自分の治療方法は、自分で決めたい」(38.6%)など、受け身の姿勢で臨んでいる人が多いこともわかった。

 では、こうしたNCD関連疾患患者に対して必要な施策とは一体何か。寺本氏は3つの意識を高めることが重要であると述べる。すなわち、「前向きな治療意識」「疾患コントロール意識」「生活満足度」、である。これらは、「前向きな治療意識」と「生活満足度」の高さが、相乗効果的に「疾患コントロール意識」を高めるという関係性にある。
「前向きな治療意識」に影響を与えるのは、(1)薬への信頼・期待、(2)病状理解、(3)治療効果の理解、(4)医療従事者の患者視点に立った診療、(5)内科・専門内科の個人病院やクリニックにおける患者視点の診療および親しみやすさ、(6)内科・専門内科の総合病院や大学病院などの大規模病院における患者視点の診療および治療解説、の6項目である。一方、「生活満足度」には(1)治療の見通し、(2)心配事の解消、(3)家族との関係、自己開示および尊重、(4)職場や学校でのコミュニケーション、の4項目が影響するという。こうした意識をバランスよく、高く維持するには、患者の頑張りだけ、あるいは医師の一方的な働きかけだけでは不十分である。
 寺本氏は、「NCDの治療は、他の疾患以上に患者自身が主体的に病気と向き合わなければならない。診療の場面で医師は、患者との“共同作業”において治療方針を考え、時には患者自身による決定を促すことが重要だ」と述べた。

(ケアネット 田上 優子)