経年的な認知症発症の傾向をよりよく理解するためには年齢とコホート効果を分ける必要があるが、この手法を用いた先行研究はほとんどない。今回、米国・アルベルト・アインシュタイン医学校のCarol A. Derby氏らが、アインシュタイン・エイジング研究に登録された70歳以上の参加者において認知症発症率および心血管系合併症の有病率の傾向を調べた結果、認知症発症率の低下が確認された。しかしながら、著者らは「人口の高齢化を考慮すると、発症率の低下が認知症負担の軽減につながるかどうかは不明」と述べている。JAMA neurology誌オンライン版2017年9月5日号に掲載。
本研究では、1993年10月20日~2015年11月17日にアインシュタイン・エイジング研究に登録された人の認知症発症率を出生コホートで分析した。ニューヨーク州ブロンクス郡で体系的に1,348人を募集した。参加者は、登録時に70歳以上の非認知症者で、1年以上追跡した。ポアソン回帰を用いて認知症発症率を年齢、性別、教育レベル、人種、出生コホートの関数としてモデル化し、また、プロファイル尤度を用いて発症率の有意な増加または減少のタイミングを特定した。主要アウトカムは認知症発症率で、毎年実施される標準化された神経心理学的および神経学的検査の結果に基づき、DSM-IVの基準を用いてコンセンサス症例カンファランスで決定した。
主な結果は以下のとおり。
・1,348人(ベースライン時の平均年齢[SD]:78.5[5.4]歳、女性830人[61.6%]、非ヒスパニック系白人915人[67.9%])のうち、5,932人年(平均追跡期間[SD]:4.4[3.4]年)の間に150人が認知症を発症した。
・認知症発症率は連続した出生コホートにおいて減少し、100人年当たりの認知症発症数は、1920年より前の出生コホートで5.09、1920~1924年の出生コホートで3.11、1925~1929年の出生コホートで1.73、1929年より後の出生コホートで0.23であった。
・1929年7月(95%CI:1929年6月~1930年1月)より後に生まれた人では認知症発症率が有意に低下し、1929年7月より前と後の出生コホートを比較した相対的比率は0.13(95%CI:0.04~0.41)であった。
・脳卒中および心筋梗塞の有病率は連続した出生コホートにわたって減少したが、糖尿病の有病率は増加した。これらの心血管系合併症について調整しても、近年の出生コホートの認知症発症率の低下を説明できなかった。
(ケアネット 金沢 浩子)