日本イーライリリー株式会社は、「世界糖尿病デー」の2017年11月14日、都内において「2型糖尿病患者の残薬に関する調査からみた患者中心の治療の重要性 ~残薬のある患者さんのタイプ別服薬課題を発表~」をテーマにプレスセミナーを開催した。
約42%の糖尿病患者がHbA1c7.0%未満に未達
セミナーでは、寺内 康夫氏(横浜市立大学 分子内分泌・糖尿病内科学教室 教授)が先述のテーマについて語るとともに、寺内氏と同社が行った患者アンケート調査の概要およびアドヒアランスの治療への影響について解説が行われた。
厚生労働省の「平成28年 国民健康・栄養調査」によれば、現在、糖尿病の予備群はやや減少しているものの、患者数は増加し1千万人の大台にある。糖尿病の最終治療目標は、健康な人と変わらないQOLの維持、寿命の確保であり、そのため合併症予防にHbA1c7.0%未満という目標が示され、日々の診療に生かされている。
しかし、JDDM研究(2016年度集計)によると、経口血糖降下薬で治療中の患者のうちHbA1c7.0%以上の患者は42.3%に上り、2~4剤併用の患者でもHbA1c平均値は7.0%超だという。
糖尿病の国民医療費(平成27年度)が約1兆2,400億円という中で、医療資源が有効に活用されているか、残薬の問題も指摘されている。
残薬が多い患者タイプは「楽観的志向」と「治療あきらめ志向」
そこで、経口糖尿病治療薬服薬中の2型糖尿病患者について、残薬の有無に影響する因子を明らかにするため「残薬に関する調査」を実施し、その結果を分析した
1)。本調査は20歳以上、2型糖尿病と診断され現在通院している薬物療法中の患者2,942例を対象に、インターネット、郵送、訪問留置により行われた。
治療薬の残薬状況で、「残薬あり」と回答した患者は33.1%と、3人に1人は「残薬がある」という結果だった。その理由としては、(複数回答で)「ついうっかり忘れる」(56%)が一番多く、次に「外出の際の携帯忘れ」(39%)、「食事のタイミングが合わず服用できなかった」(24%)の順で多かった。また、残薬ありと回答した患者の特徴では、服薬に問題がある(薬の種類や一度に飲む量が多いなど)、服薬回数の問題(1日3回以上服用)、残薬の未申告(医師などに伝えていない)が見受けられた。
さらに「病識・治療態度」「生活スタイル・性格」による因子で患者を分類すると、「症状管理志向」「生活改善取り組み志向」「楽観的志向」「治療あきらめ志向」「慎重几帳面志向」「治療回避志向」の6つのタイプが存在することが明らかになった。この中で問題なのは、「楽観的志向」と「治療あきらめ志向」の患者タイプであるという。
「楽観的志向」は、自分は軽症で服薬管理は難しくないと考えており、服薬順守の重要性を軽視しがちであるため残薬になる。また、「治療あきらめ志向」は、フルタイム就業で生活が忙しく、服薬管理は難しいと感じていて、自分の病態の現状を諦めているため残薬になると分析する。
今後こうした患者の服薬アドヒアランスを高めるため、「治療薬の[一包化]や服薬回数の調整、医療者や家族とのコミュニケーションを通じた[服薬順守の重要性の気付き]などが必要となる」と寺内氏は説明する。
アドヒアランス向上へのアプローチ
服薬アドヒアランスは血糖値だけでなく、入院・救急処置室の受診や死亡率など、さまざまなものに影響を及ぼし、その向上で血糖値の良好なコントロールができれば、心筋梗塞などの合併症リスクの低下につながることは広く知られている。
そこで、服薬アドヒアランス向上にむけて、
1)医師と患者のコミュニケーションを改善する
2)患者の不安への対処
3)治療方法の決定に患者意思を反映させる
4)自己管理の方法を指導し、継続的にサポートする
など、4つの多角的なアプローチが効果的だと提案する。
最後に寺内氏は「患者のアドヒアランスを良くするため、医師が患者の希望を聞くことが大事で、患者へのポジティブフィードバックができ、これが良い治療循環につながればと思う」と期待を語り、レクチャーを終えた。
■参考文献
1)寺内康夫 ほか. 薬理と治療. 2017.
■参考
本アンケートのプレスリリース(PDF)
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