既婚であることは、健康的な生活習慣と関連し、死亡率を低下させる。そして、ライフコースの因子によって認知症のリスクを低下させる可能性がある。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAndrew Sommerlad氏らは、婚姻状況と認知症の発症リスクとの関連性について、システマティックレビューとメタ解析を行った。Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry誌オンライン版2017年11月28日号の報告。
年齢および性別で調整した、婚姻状況と認知症との関連性を報告している当該研究について、医療データベースの検索と現場の専門家への連絡を行った。方法論の質を評価し、既婚と比較した、死別、離婚、終生の独身の相対リスクを集約するため、ランダム効果メタ解析を行った。メタ回帰を伴う2次層別解析では、臨床的および社会的状況や所見における研究方法論の影響を調査した。
主な結果は以下のとおり。
・15の研究より、81万2,047例を抽出した。
・既婚者と比較し、終生の独身者(相対リスク:1.42、95%CI:1.07~1.90)および死別者(1.20、95%CI:1.02~1.41)では、認知症のリスクが高かった。
・離婚者においては、関連が認められなかった。
・さらなる分析では、教育の不足は、死別者におけるリスクを部分的に交絡させ、終生の独身者における身体的な健康を悪化させるリスクを高めていた。
・認知症診断を確定するために臨床記録を使用した研究と比較して、すべての対象者を臨床的に検査した研究では未婚者の認知症リスクが高かった。
著者らは「既婚であることは、死別者や終生の独身者よりも認知症のリスク低下と関連しており、死別者や終生の独身者は通常の臨床現場において十分に診断されていない。未婚者における認知症予防は、教育と身体的健康に重点を置くべきであり、社会的な関与の影響が修正可能なリスク因子であると考えるべきである」としている。
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