プライマリPCIが適応の急性心筋梗塞患者において、P2Y12阻害剤であるプラスグレルとチカグレロルの有効性および安全性を比較したPRAGUE-18 trialの早期の結果では、2剤に有意差は認められなかった。チェコ共和国のZuzana Motovska氏ら研究グループによる1年フォローアップでは、さらに2剤の有効性と安全性を比較し、退院後により安価なクロピドグレルに変更することが虚血イベントの発生に影響を与えるかどうか検証した。Journal of American College of Cardiology誌11月9日号に掲載。
PCI施行した1,230例をプラスグレルとチカグレロルに割り付け
本研究は、多施設共同の前向きランダム化比較試験。急性心筋梗塞でPCIを施行した1,230例をプラスグレル群もしくはチカグレロル群に割り付け、12ヵ月にわたって治療効果を評価した。複合エンドポイントは1年後における心血管に関連した死亡、心筋梗塞、脳梗塞。患者が退院後に内服薬の費用を負担しなければいけないため、患者の一部は安価なクロピドグレルに変更した。
複合エンドポイントで有意差は認められず
複合エンドポイント(心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中)はプラスグレル群で6.6%、チカグレロル群で5.7%認められた(ハザード比[HR]:1.167、95%信頼区間[CI]:0.742~1.835、p=0.503)。心血管死亡(3.3% vs. 3.0%、p=0.76)、心筋梗塞(3.0% vs. 2.5%、p=0.611)、脳卒中(1.1% vs. 0.7%、p=0.423)、全死亡(4.7% vs. 4.2%、p=0.654)、確定診断されたステント血栓症(1.1% vs. 1.5%、p=0.535)、全出血(10.9% vs. 11.1%、p=0.999)、そしてTIMI出血基準による大出血(0.9% vs. 0.7%、p=0.754)において、いずれも有意差は認められなかった。
薬の費用を理由としてクロピドグレルに変更した患者はプラスグレル群で34.1%(n=216)、チカグレロル群で44.4%(n=265)であった(p=0.003)。
クロピドグレルへの変更は虚血イベント増加と関連せず
本研究では、プラスグレルとチカグレロルは、心筋梗塞後1年において同等に有効であった。
また、クロピドグレルへの変更することは虚血イベントの増加と関連していなかった。ただし、薬の費用を理由としてクロピドグレルに変更した患者は、割り当てられた薬剤を継続した患者に比べて主要血管イベントのリスクは低かったが、虚血のリスクも低かった。この結果は、虚血と出血のリスクを患者ごとに評価し、治療を個別化することを支持しているとも考えられる。
(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)