心房細動の早期検知は、血栓塞栓症を未然に防ぐという観点からも非常に重要である。残念ながら、脳梗塞を契機に心房細動が発見されるということが多い。HolterやZio patchなどのモニターよりも低コストで簡易な携帯心臓モニターは、患者にとっては便利なものである。今回はApple Watchを用いた心臓モニターに関する論文を紹介したい。
KardiaBandは、アップルのスマートウオッチ(Apple Watch)を用いて心臓リズムを記録することができる新しい技術である。専用バンドとアプリを組み合わせることで、自動で心房細動(AF)を検知することが可能である。米国クリーブランド・クリニックのJoseph M.Bumgarner氏ら研究グループは、医師による12誘導心電図とKardiaBandの記録の解釈と比較し、KardiaBandが洞調律とAFとを正確に判別できるかを検討した。Journal of American College of Cardiology誌2018年3月号に掲載。
除細動で受診したAF患者100例で比較
本研究では、AFに対する除細動のために受診した、連続した患者100例が研究に組み込まれた(68歳±11歳)。患者は除細動前に心電図とKardiaBandの記録を受けた。除細動が行われた場合、除細動後の心電図とKardiaBandの記録が取得された。KardiaBandの解釈は、医師の診断による心電図と比較された。KardiaBandの記録は、患者情報を知らない不整脈専門医によって再度診断を受け、心電図の解釈と比較された。感度、特異度とK係数が求められた。
169例のKardiaBandの記録のうち57例は解釈不能
100例中8例は除細動を受けなかった。169例について、心電図とKardiaBandの同時記録が得られた。KardiaBandの記録のうち、57例については解釈不能であった。心電図と比較して、KardiaBandが解釈した記録は、感度が93%、特異度が84%、K係数は0.77であった。一方、医師が解釈したKardiaBandの記録は感度99%、特異度は83%、K係数は0.83であった。解釈不能だった57例のKardiaBandの記録について不整脈専門医が診断したところ、感度100%、特異度80%、K係数は0.74であった。KardiaBandと医師ともに診断可能であった113例においては、双方の診断はかなり一致しており、K係数は0.88であった。
医師のサポートによりKardiaBandによるAF検知アルゴリズムは有用
医師によって確認されたKardiaBandのAF検知アルゴリズムは、AFと洞調律の正確な区別が可能であった。この技術は、選択的除細動に先立って患者をスクリーニングする際に役立ち、不必要な手技を回避する一助となりうる。
(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)