限局性前立腺癌にホルモン単独療法は有用であるか? -第4回 日本泌尿器科学会プレスセミナー レポート-

提供元:ケアネット

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公開日:2008/06/27

 

 2008年6月25日に帝国ホテルにおいて「第4回日本泌尿器科学会プレスセミナー」が開催された。そこで話された、「泌尿器科疾患に関するトピックス」についてレポートする。

 初めに、金沢大学大学院医学系研究科集学的治療学 教授の並木幹夫氏より、「前立腺癌の治療選択~ホルモン療法の役割と副作用対策~」が紹介された。

 現在、前立腺癌は死亡率・死亡数共に増加の一途をたどっており、2020年には男性のがん罹患率第2位になるという。並木氏は、PSA(前立腺特異抗原)導入前後における治療の変遷、治療の進歩と共に、QOLに配慮した治療も発達してきた経緯を紹介した。

 その治療法としては、放射線療法、手術療法、ホルモン療法があり、病期によって選択される。一方、ホルモン依存性の前立腺癌においては全身的な治療法であるホルモン療法が選択されることが多い。今回並木氏は、特に限局性前立腺癌に対するホルモン単独療法の有用性を紹介した。

 限局性前立腺癌に対するホルモン療法の有効性に関する後ろ向き研究から、Low-risk症例やIntermediate-risk症例への効果が期待できるのではないか、と提案した。また、QOLの観点から行われた試験でも、ホルモン療法はQOLに影響しなかったという。しかし、その一方で、ホルモン療法による男性ホルモン低下が招く加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)の対策は必要であるとし、ホルモン療法の今後の課題や新たな薬剤であるSARMへの期待を述べた。

 最後に並木氏は、様々な方法を駆使して前立腺癌の治療を行っていくことが我々の使命であるとまとめた。

 続いて、国際医療福祉大学病院リプロダクションセンター 教授の岩本晃明氏より「男性不妊症の治療戦略~無精子症は増えているのか~」が紹介された。

 冒頭、岩本氏は現在のカップルの不妊症の半分は男性に原因があることを述べ、その患者数に比し、男性不妊患者が専門医を受診していない現状を紹介した。続いて、男性不妊症の原因、診療、種類、治療法を解説した。

 現在、50~60人に1人が体外受精によって誕生しており、今後はさらに増えていくであろうと岩本氏は述べた。しかし、現状では不妊治療が高コストであることから、若い夫婦などは子供をつくりにくいのではないか、という。岩本氏は泌尿器科学会として、不妊症における男性不妊専門医の利用を呼びかけ、行政に対しても、「男性不妊症の存在を認識して原因を究明し治療していくことが、少子化対策に寄与するのではないか」ということを訴えていきたいと述べた。最後に、男性不妊症にさらに光を当ててもらいたい、と強く訴えた。

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(ケアネット 片岡 磨衣子)