病院経営にも一般企業と同様な組織マネジメントが必要と言われて久しいが、そうした体制がまだ十分に普及しているとはいえないのが現状だ。そんな中、東京都健康長寿医療センターでは、職種横断的にミドルマネジャーを対象とした"ハーバード流"の「医療マネジメントスクール」を開催、着実に成果を上げている。
この企画を発案し、自ら講師も務めているのは、同病院血管外科部長の中澤達氏。中澤氏は現役の外科医でありながら、ハーバード大学大学院で学び、北里大学大学院医療系研究科(医療マネジメント)の教授も務める。
「医療職の多くは、ビジネススキルをきちんと学んだことがない。しかし、組織の課題を見つけ、考えて、解決していくというプロセスが大切なのは、病院でも企業でも同じ。一般のビジネスパーソンがどのようなフレームで物事を考えて、事業を進めているか理解することは、病院職員にとっても意義があると考えた」(中澤氏)。
「医療マネジメントスクール」の開催は今年で2年目。90分のクラス年4回が1コースとなっており、各回のテーマは、「オペレーションマネジメント」「マーケティング」「組織行動とリーダーシップ」「経営戦略」。全4回を履修した職員には、修了証も発行。出欠管理、教材の購入と事前配布は、センターの経営企画局・医療戦略室が事務局として主導している。
ハーバードの教材を予習して小グループで議論
同スクールの大きな特徴は、ハーバードビジネススクール(HBS)の講義形式をそのまま取り入れているところ。30人ほどの受講者は、HBSの教材として実際に使われている「ケース」を事前に読み込んでおかねばならず、当日の講義は、5~6人の小グループに分かれてのディスカッション中心に進行する。「すべて実際のビジネスの事例で、正解があるわけではない。みんなで意見を出し合い、考え、議論することそのものが『学び』になる」と中澤氏は言う。
9月5日に開催された2018年度第3回のクラスは、「ノバルティス:グローバル企業を導くということ」というHBSの教材と国内の病院のケースを用いた授業だった。参加者は、リーダーシップとマネジメントの違い、ピラミッド型組織・文鎮型組織それぞれの特徴、リーダーシップの役割、フォロワーのタイプなどについて、職種を超えて活発に議論していた。
このように医師、看護師、その他の医療職、事務職が混ざってディスカッションするのも有意義だと中澤氏は考えている。「病院という組織はどうしても職種で縦割りになりがち。多職種が小グループで真剣に議論することで、他職種に対する理解を深め、職場の風通しがよくなる効果も期待できる」。
「医療マネジメントスクール」は同じ形式で来年度以降も継続する予定だ。「病院側にも参加者にも効果を実感してもらえているので、今後はこの取り組みをもっと外部にも発信していきたい」と中澤氏は意欲を見せる。
(ケアネット 風間 浩)