東京大学医学部眼科学教室特任講師の朝岡 亮氏らは、複数の黄斑部OCT画像のディープラーニング(DL)モデルを利用することで、緑内障の早期診断精度が実質的に向上する可能性があることを明らかにした。American Journal of Ophthalmology誌オンライン版2018年10月11日号掲載の報告。
研究グループは、スペクトラルドメインOCT(SD-OCT)画像から早期緑内障を診断するためのDLモデルの開発および評価、検討を目的とした、多施設共同研究を行った。
複数医療機関の協力を得て、プレトレーニングデータ、トレーニングデータ、検証データを用意。プレトレーニングデータは、病期ステージを問わずに集めた開放角緑内障(OAG)の1,565眼と健康な193眼による4,316枚のOCT画像で構成されていた。また、トレーニングデータには、早期OAG(平均偏差[MD]:>-5.0dB)患者94眼(94画像)と健康な被験者84眼(84画像)を含み、検証データには、早期OAG(MD:>-5.0dB)患者114眼(114画像)と健康な被験者82眼(82画像)が含まれていた。プレトレーニングデータの画像撮影にはRS-3000(Nidek)、トレーニングデータおよび検証データにはOCT-1000/2000(Topcon)を用いた。
DL(畳み込みニューラルネットワーク)分類器の学習は、プレトレーニングデータセットを使い、2回目の学習に独立したトレーニングデータセットを使用した。SD-OCT画像から8×8グリッドの黄斑部網膜神経線維層厚と網膜神経節細胞層複合体厚を抽出し、特徴(feature)として用いた。検証データセットを用いて診断精度を調査し、ランダムフォレスト(Random Forests:RF)およびサポートベクターマシーン(SVM)を用いて比較評価を行った。
主要評価項目は、ROC曲線下面積(AROC)であった。
主な結果は以下のとおり。
・DLモデルによるAROCは、93.7%であった。
・プレトレーニングデータによる学習を行わなかった場合、AROCは76.6~78.8%と有意に低下した。
・RFによるAROCは82.0%、SVMによるAROCは67.4%と、いずれも有意に小さかった。
(ケアネット)