本邦で抗PD-1抗体ニボルマブが進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)治療における承認を取得したのは2015年12月。市販後の日常臨床での副作用発現状況を調べた全例調査の結果について、近畿大学の中川 和彦氏が11月29日~12月1日に東京で開催された第59回日本肺癌学会学術集会で発表した。本調査では、副作用発現状況のほか、安全性・有効性に影響を与える因子が検討されている。
調査方法:事前症例登録による全例調査方式
登録期間:2015年12月17日~2016年3月31日
観察期間:投与開始後12ヵ月
登録症例数:3,808例(うち安全性解析対象は3,606例/有効性解析対象は3,381例)
重点調査項目:間質性肺疾患/副腎障害/重症筋無力症・筋炎/脳炎/大腸炎・重度の下痢/重度の皮膚障害/1型糖尿病/静脈血栓塞栓症/肝機能障害/Infusion reaction/甲状腺機能障害/心臓障害(心房細動、徐脈、心室性期外収縮等)/神経障害/腎障害
主な結果は以下のとおり。
・安全性解析対象3,606例のうち、1,688例(46.8%)に副作用が認められた(国内臨床試験では発現率79.3% [88/111例])。
・重点調査項目の発現頻度は、間質性肺疾患が9.57%と最も多くみられ、甲状腺機能障害(9.04%)、肝機能障害(7.93%)、Infusion reaction(5.57%)、大腸炎・重度の下痢(5.57%)などが続いた。
・重点調査項目の発現時期は、中央値でみるとおおむね2ヵ月以内に発現していたが、副腎障害と1型糖尿病については、中央値がそれぞれ5ヵ月、3ヵ月頃であった。
[頻度の高かった副作用の処置と転帰、リスク要因]
間質性肺疾患:発現率9.57%(345/3,606例)
・主な処置として、265例(76.8%)でステロイド治療が行われていた。
・ニボルマブ投与は、266例(77.1%)で中止(休薬)。31例で再投与、うち3例で間質性肺疾患の再発が認められた。
・263例(76.2%)が回復・軽快、41例(11.9%)が未回復、34例(9.9%)が死亡。
・多変量解析の結果、ILDの病歴あり(ハザード比[HR]:2.41)、CT異常所見あり(HR:1.35)がリスク要因として示された。
甲状腺機能障害:発現率9.04%(326/3,606例)
・主な処置として、167例(51.2%)でホルモン補充療法が行われていた。
・ニボルマブ投与は、74例(22.7%)で中止(休薬)。23例で再投与、うち5例で甲状腺機能障害の再発が認められた。
・197例(60.4%)が回復・軽快、106例(32.5%)が未回復、死亡例は確認されなかった。
・多変量解析の結果、甲状腺機能低下症、自己免疫性甲状腺炎、甲状腺腫、慢性甲状腺炎などの甲状腺の病歴(HR:3.05)がリスク要因として示された。
肝機能障害:発現率7.93%(286/3,606例)
・処置なしが223例(76.6%)と最も多く、ステロイド治療が約6%で実施されていた。
・ニボルマブは、68例(23.8%)で中止(休薬)。17例で再投与、うち3例で肝機能障害の再発が認められた。
・206例(72.0%)が回復・軽快、69例(24.1%)が未回復、4例(1.4%)が死亡。
・多変量解析の結果、B型肝炎、C型肝炎、肝炎ウイルスキャリアー、脂肪肝、肝転移などの肝臓の病歴(HR:2.33)がリスク要因として示された。
大腸炎・重度の下痢:発現率5.57%(201/3,606例)
・主な処置として、67例(33.3%)でホルモン補充療法が行われていた。
・ニボルマブ投与は、98例(48.8%)で中止(休薬)。33例で再投与、うち11例で大腸炎・重度の下痢の再発が認められた。
・184例(91.5%)が回復・軽快、12例(6.0%)が未回復、3例(1.5%)が死亡。
・多変量解析の結果、リスク要因は抽出されなかった。
・一年生存率は、有効性解析対象全体で42.4%(1,433/3,381例)。PS良好の患者で高い一年生存率が確認された(PS 0~1:49.2%、PS 2:17.0%、PS 3~4:11.2%)。
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(ケアネット 遊佐 なつみ)