16県が医師少数、改正医療法で是正となるか?

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2019/02/21

 

 全国からの「医師不足」の声に対し、医師確保計画を通じた医師偏在の解消は喫緊の課題である。医師偏在の度合いを示す新たな指標として「医師偏在指標」の導入が決まっている。2019年4月に施行される改正医療法では、都道府県が2次医療圏単位で医師偏在指標に応じ、医師少数区域・医師多数区域を設定する。医師多数/少数区域の基準値として、医師偏在指標の上位/下位33.3%が定められる方針だ(3次医療圏においても同様の基準を使用)。また、医師少数区域以外で医師の確保をとくに図るべき区域(離島、へき地など)を、別枠の「医師少数地区」として省令で定めるという。医師確保計画の終了時点である2036年までに、最も医師偏在指標が小さい医療圏においても医療需要を満たすことが目標とされる。

医師少数3次医療圏は、岩手県、新潟県、青森県など計16県

 厚生労働省は2019年2月18日、医師偏在指標について現在の推計を初めて公表した。都道府県別(3次医療圏)で医師が多い地域は、上位から東京都(329.0)、京都府(314.9)、福岡県(300.5)、沖縄県(279.3)、岡山県(278.8)と続く。一方、医師が少ない地域は、下位から岩手県(169.3)、新潟県(169.8)、青森県(172.1)、福島県(177.4)、埼玉県(178.7)という結果で、医師少数3次医療圏として、下位33.3%に当たる16県が暫定で設定された。

 医師少数3次医療圏・医師少数区域(2次医療圏)が医師偏在を解消するための目標として、「計画開始時点の医師偏在指標における基準値(下位33.3%)に達する医師数」が設定される見込みである。計画開始時点で基準値を下回る医療圏では医師の確保が必要、基準値を満たす医療圏では目標を達成済と捉えられるが、医師の多寡状況は、現在時点と将来時点の両方を見据えなければならない。

 現在と将来それぞれの時点における医師の多寡状況への対応として、現在時点の医師数不足に対しては短期的な施策(医師派遣や定着促進など)をすぐに講じる必要がある。長期的な施策(医学部の地域/地元出身者枠増員の要請など)を組み合わせるべきかどうかは、将来時点で予測される医師数の多寡状況によって変わるという。

新しい指標を活用した医師偏在対策

 医師偏在指標は、現在・将来人口を踏まえた医療ニーズに基づき、地域ごと、診療科ごと、入院外来ごとの医師の多寡を統一的・客観的に把握できる、医師偏在の度合いを示す指標として導入された。改正医療法の施行後、医師偏在指標を活用した医師偏在対策として、以下のものが主に実施される予定である。

・医師確保計画における目標医師数の設定…都道府県は、3次医療圏・2次医療圏単位で、医師偏在指標を踏まえた目標医師数の設定が義務付けられる

・医師少数区域、医師多数区域の設定…都道府県は、2次医療圏単位で、医師偏在指標に関する基準に従い、医師少数/多数区域の設定ができる

・大学医学部における地域枠・地元枠の設定…都道府県は、医師偏在指標によって示される当該都道府県の医師の多寡を踏まえ、大学に対し、医学部における地域枠・地元枠の設定・増加の要請を行うことができる

 医師少数区域での医師確保に向けたサポートの一環として、「都道府県内での医師の派遣調整」「キャリア形成プログラムの策定」「医療機関の勤務環境の改善支援」「地域医療への知見を有する医師の大臣認定」「臨床研修病院の定員・倍率調整」が提案されている。国・都道府県・大学・医療機関が一丸となって、医師少数区域に対して、より充実したサポート体制を構築していくことが求められている。

・医師偏在指標の計算式
 医師偏在指標=標準化医師数(1)/地域の人口÷10万×地域の標準化受療率比(2)
(1):Σ性年齢階級別医師数×(性年齢階級別平均労働時間/全医師の平均労働時間)
(2):地域の期待受療率(3)÷全国の期待受療率
(3):Σ(全国の性年齢階級別受療率×地域の性年齢階級別人口)/地域の人口
・医師数は、性別ごとに20代、30代、…、60代、70歳以上に区分して、平均労働時間の違いを用いて調整する
・従来の人口10万人対医師数をベースに、地域ごとに性年齢階級による受療率の違いを調整する

(ケアネット 堀間 莉穂)