日本人集団における糖尿病とがんリスクについて、多目的コホート研究(JPHC研究)での前向きメンデルランダム化解析により、これらの関連を裏付ける強いエビデンスは見いだされなかったことを、国立がん研究センターの後藤 温氏らが報告した。従来の回帰モデルを用いたコホート研究では、2型糖尿病患者のがんリスク増加が一貫して示されていた。しかし、因果の逆転や糖尿病とがんに共通する危険因子による残余交絡が存在する可能性があり、糖尿病そのものががん発症に寄与しているかどうかは不明であった。International Journal of Cancer誌オンライン版2019年3月30日号に掲載。
JPHC研究における40~69歳の適格な3万2,949人から、サブコホート1万536人および新規にがんと診断された3,541人を用いて症例コホート研究を実施した。すでに知られている29個の2型糖尿病感受性遺伝子多型を用いて、糖尿病とがん全体および部位ごとのがんリスクとの関連について、逆分散加重法を用いてハザード比を推定した。
主な結果は以下のとおり。
・糖尿病の確率が2倍になることによるがんのハザード比(HR)は、がん全体で1.03(95%信頼区間[CI]:0.92~1.15)、膵臓がんで1.08(同:0.73~1.59)、肝臓がんで0.80(0.57~1.14)、結腸がんで0.90(同:0.74~1.10)であった。
・追加解析として、日本人における大腸がんの大規模ゲノムワイド関連解析の公開データを用いて分析したところ、HRは1.00(95%CI:0.93~1.07)であり、より精確な結果が得られた。
(ケアネット 金沢 浩子)