がんは深部静脈血栓症(VTE)の強力なリスク因子である。がん患者のVTE発症頻度は非がん患者に比べ高く、その発症率は近年増加している。しかし、がん関連VTEに関する研究は十分ではなく、適切な管理については明らかになっていない。天理よろづ相談所病院 循環器内科 坂本二郎氏らは、がん関連VTEの臨床的な特徴、管理、臨床的転帰をリアルワールドで評価する多施設後ろ向きコホート研究COMMAND-VTEレジストリを行い、その結果を第83回日本循環器学会学術集会で発表した。
COMMAND-VTEレジストリは、2010年1月~2014年8月、わが国の29施設において行われた。VTE疑い患者1万9,634例のうち、分析対象となった急性症候性VTE患者は3,027例であった。
全コホートをActive cancer群(がん治療中患者、手術施行予定患者、転移患者、終末期患者)695例、がん既往歴あり群243例、がん既往歴なし群2,089例の3つに分けて比較した。
主な結果は以下のとおり。
・Active cancer群は他の2群に比べ、年齢が低く66.5歳であった。また重篤な出血(10%)、貧血の既往(76%)が他の2群に比べ高かった。
・抗凝固薬累積中止率(1年間)はActive cancer群で最も高く44%、がん既往歴あり群、がん既往歴なし群はともに27.0%であった。
・症候性VTE累積再発率(1年間)はActive cancer群で最も高く12%。がん既往歴あり群/なし群ではそれぞれ5%/3%であった。
・重篤な出血累積発生率(1年間)はActive cancer群で最も高く15%。がん既往歴あり群/なし群ではそれぞれ6%/5%であった。
・ワルファリンのコントロール指標である至適範囲内時間(TTR)はActive cancer群で最も低く61%。がん既往歴あり群/なし群ではそれぞれ67%/76%であった。
・総死亡はActive cancer群で最も高く50%。がん既往歴あり群/なし群ではそれぞれ12%/6%であった。
Active cancer(がん治療中患者、手術施行予定患者、転移患者、終末期患者)はVTEの再発、重篤な出血、総死亡に関する予後不良因子であった。また、Active cancer群では抗凝固薬の投与中止が頻繁で、ワルファリンのコントロールも不良であった。
(ケアネット 細田 雅之)