コントロール不良な高血圧に対する新しい治療法として、カテーテルによる腎動脈交感神経アブレーションの研究が行われている。しかしながら、腎動脈交感神経切除の高血圧に対する無作為化試験の結果は肯定的なものと否定的なものがあり、一定していない。この研究の目的はシャム対照群を用いた研究における、腎動脈交感神経アブレーション後の血圧の評価である。Brown大学のPartha Sardar氏ら米国の複数のグループにより、Journal of American College of Cardiology誌2019年4月号に報告された。
6つの研究のメタ解析、977例の患者
2018年6月30日までのデータベースが検索された。50例以上の患者を含む、カテーテルによる腎動脈交感神経アブレーションとシャム対照群を比較した無作為化試験が対象。筆者らはランダム効果モデルによるメタ解析手法を用いて、95%信頼区間(CI)の加重平均差(WMD)として治療効果を推定した。本解析には6つの研究から977例が含まれた。
腎交感神経アブレーション群で血圧が有意に低下
24時間血圧計における収縮期血圧の低下は、腎動脈交感神経アブレーション群で有意に大きかった (WMD:-3.65mmHg、95% CI:-5.33~-1.98、p<0.001)。シャム対照群と比較して、腎動脈交感神経アブレーション群は、
日中の血圧(WMD:-4.07mmHg、95%CI:-6.46~-1.68、p<0.001)、
職場での血圧(WMD:-5.53mmHg、95%CI:-8.18~-2.87、p<0.001)、
24時間拡張期血圧(WMD:-1.71mmHg、95%CI:-3.06~-0.35、p=0.01)、
日中の拡張期血圧(WMD:-1.57 mmHg、95%CI:-2.73~-0.42、p=0.008)、
職場での拡張期血圧(WMD:-3.37mmHg、95%CI:-4.86 to-1.88、p<0.001)
の低下と有意に関連していた。また、第1世代の試験と比較すると、第2世代の試験では日中の収縮期血圧で血圧の低下が有意に大きかった(6.12mmHg vs. 2.14mmHg、交互作用のp=0.04)。しかしながら、この相関性は24時間の収縮期血圧では有意ではなかった(4.85mmHg vs. 2.23mmHg、交互作用のp=0.13)。
腎交感神経アブレーションの効果を結論づけるにはさらなる検討が必要
腎動脈交感神経アブレーションは、シャム対照群と比べて血圧を有意に低下させた。このメタ解析の結果をふまえて、腎動脈交感神経アブレーションの高血圧患者での役割を長期間評価する、より大きな、そしてピボタル試験となるような研究が行われるべきであると筆者らは結論づけている。
3つの第2世代研究における収縮期血圧の減少は、6.1mmHgと第1世代の研究の2.1mmHgと比較すると大きかったが、インパクトとしてはそれほど大きなものでなく、どのような患者でより良い効果が上がるのかなどを含めて、今後も研究が必要であろう。
(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)
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