HER2陽性の乳がん患者を対象とした、術前療法としてのトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と、トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセル併用(HPD)療法との比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJonas C. S. Bergh氏より発表された。これはオープンラベルの第II相無作為化比較試験である。
試験デザイン
・対象:HER2陽性、リンパ節転移陽性および/または腫瘍径20mm以上を有する乳がん患者
・試験群:トラスツズマブ エムタンシン3.6mg/kg(T-DM1群)
・対照群:トラスツズマブ(皮下注製剤)600mg/body+ペルツズマブ840mg/body+ドセタキセル75mg/m2 or 100mg/m2(HPD群)
両群ともに、3週間隔で6コース投与
ペルツズマブは、2コース目以降は420mg/body
両群ともに、腫瘍縮小効果がない場合や、許容できない副作用発現の場合は治療途中でのクロスオーバー投与を許容
手術後はトラスツズマブ(皮下注)+エピルビシン+シクロホスファミドの術後療法を実施(ホルモン受容体(HR)陽性の場合はホルモン療法も)
・評価項目:[主要評価項目]病理学的完全奏効率(pCR率)
[副次評価項目]無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)、安全性、QOL、乳房温存率など
主な結果は以下のとおり。
・2014年12月から2018年10月の間に、本試験に202例が登録され、197例が解析対象とされた。
・pCR率はT-DM1群45%、HPD群47%で、両群間には統計学的な有意差は検出されなかった(p=0.359)。
・また、HER2陽性/HR陽性のグループにおいては、pCR率はT-DM1群36%、HPD群36%であった(p=0.929)。
・さらにHER2陽性/HR陰性のグループにおいては、pCR率はT-DM1群59%、HPD群67%であった(p=0.502)。
・Grade3/4の有害事象について、肝毒性はT-DM1群で6%、HPD群で1%、発熱性好中球減少はT-DM1群3%、HPD群26%、下痢がT-DM1群0%、HPD群14%、発疹がT-DM1群0%、HPD群3%で発生し、忍容性はT-DM1群のほうが良好であった。
(ケアネット)